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47話 サプライズ演出【湊視点】

広瀬さんが、ガラスケースと睨めっこしてかなり時間が経過した様に思える。

色々なアクセサリーがある中で、彼女は指輪しか見ていない事から欲しいのは指輪で間違いないだろう。

でも、どうやら決めあぐねている様で先程から店内を動き回っている。


このお店じゃ気に入ったデザインの物がないのかと思ったが、彼女を注視していると時折視線が一箇所に注がれているのが分かった。


その指輪を見つけた時…『おっ!?』って顔をした後…顔が曇っていたのを覚えている。

彼女は別のガラスケースとの睨めっこが忙しい様で僕には全く目を向けていない。

それをいい事に、彼女が見ていた指輪の入ったガラスケースに歩み寄る。

値段を確認すると、3万後半の金額。気に入ったなら、予算内なのだから遠慮する事はないだろうに…とも思ったけど、もしかしたらデザインがどこか気に入らなかったのかもしれない。

だから他の指輪を見ているのだろうとも思えるが、その割に時折この指輪の方を伺う彼女の態度がどうしても気になる。


とりあえず彼女の方に向かうと、欲しいのが決まったと報告を受けた。

先程気になっていた指輪と同じ様な宝石があしらわれた指輪。

違うのは真ん中の宝石の形と土台の金属の色も若干違う様な気もする。

値段を確認すると、先程の指輪の半値ぐらいだった。


これで本当にいいか確認を取ると…素直に頷く。

指輪のサイズを店員さんと確認して、あとは支払いを残すのみとなったところで2人に先に店から出ていて欲しいと告げる。

値段がバレているけど、支払いの時は出来ればカッコつけさせて欲しいとか適当な理由をつけて…。


2人は素直に応じて外に出てくれた。

彼女が去り際にあの指輪のガラスケースをチラリと見て出たのを僕は見逃さなかった。


「すいません、せっかくサイズまで確認していただいたのですが指輪を変えていただきたいのですが…」


「えっ!?」


店員さんが僕の申し出に驚いている。

そりゃそうだよね…貰う人がこれでって言ってるのに、それを変えるとかどう考えてもおかしいよね。

そう言って、僕は彼女がしきり見ていた指輪の入ったガラスケースの方に移動する。


「すいませんが、こちらの指輪でお願いします」


「あ…。彼氏さん気づいてたんですね。彼女さん、しきりにこの指輪気にしてましたよね。きっと彼氏さんの負担にならない様に頭悩ませて色々見てたんだと思います」


「そうだったんでしょうね」


「彼女さんきっと喜んでくれると思いますよ」


店員さんも彼女がどの指輪を欲しがっていたのか知っていたらしい。

お墨付きを貰えた事で、ほっと胸をなでおろす。


店の外に出ると、2人が仲良く談笑していた。

待たせた事に謝罪を入れつつ、購入したプレゼントを広瀬さんに渡す。


「誕生日には少し早いけど、プレゼントがもうバレているので今日渡す事にするけど、当日もささやかながらお祝いさせてもらうつもりだから…」


彼女は申し訳なさそうに…でも顔がにやけるのを抑えられないといった風で僕からプレゼントを受け取る。

さっそく付けてもいいかと聞かれたので、僕は黙って頷く。

中身が選んだ物と違うのが出たら、どんな顔をするだろうか?

僕はイタズラを仕掛けた時の様なワクワクした気持ちになっている。


彼女が恐る恐る袋から箱を取り出しラッピングを解く。

彼女の真剣な表情が面白くて微笑ましい気持ちになる。


「あっ…」


彼女が指輪を見て固まる、時間にして数秒…。

その後、視線を僕と指輪の間でしきりに行ったり来たりさせている広瀬さんの姿が見ていて微笑ましい。

そんな事を考えている僕の隣で音羽が遠慮する事なく笑っているのは、見なかった事にしよう。


「杏にはその指輪の方が似合うと思ってさ。せっかく選んでもらってたんだけど…結局僕の好みのにしちゃったよ」


「ふーん、そうなんだ…。絶対にアレが良かった訳じゃないから、湊が選んでくれたこの指輪で別にいーよ」


にやけながらそんな事を言われてもな…。

僕は彼女のその態度につい吹き出してしまいそうになる。


「そう言ってもらえて良かったよ」


「せっかく買ってくれたんだから着けないとね…。ん…。」


そう言って彼女は左手に持った指輪の箱と右手を差し出してくる。

えっと…これは僕にはめろって言っているのだろうか?

確か右手の薬指のサイズを測っていたはずだ。

箱に収まっている指輪を取り出し、彼女の右手に触れる。

微かに震えている事には気づかないフリをして薬指に指輪をはめる。

それと同時に彼女の顔が夕焼けの空に負けないぐらい真っ赤に染まる。


音羽がそれを指摘するものだから、彼女は僕らに先に歩けと言い出す始末。

その通り従って歩き出すと、直ぐに上着が引っ張られる感覚に襲われる。

暫くして後ろを振り返ると、左手で僕の上着を掴み、右手の指輪を見ながら頬を緩めている広瀬さんが視界に飛び込んできた。

その姿を見て、僕の鼓動が速くなったのは気のせいではないだろう…。

いつも読んで下さってありがとうございます。

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