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43話 噂の落ち着く先【湊視点】

事実は小説より奇なり…という言葉があるけど、僕は今それを痛感している。

僕らは親公認でお互い納得して付き合っていると言った。

なのに、下駄箱を開けた僕の目の前には…昨日と変わらない…いやそれ以上に手紙が入っていた。

今回はうまく広まらなかったのだろうか?

隣からオーラを感じているせいで、首がうまく回らない。

どうやってこの場を取り繕えばいいか?

そんなのは愚問である、取り繕う事はもはや不可能…だ…。


「湊…ちょっといいかな?」


「…………はぃ…」


返事もつい語尾が小さくなってしまう。




「ねえ?どういう事…?」


「違うんだ。まずは僕のはな…「とりあえず…その手紙をこっちに渡して…」は、はい…」


僕は彼女の意向に従い手紙を差し出す。

くれた子に悪い事をしてしまったと思いながら、僕が俯いていると…


「え…?なんなのよこれ!?」


そう言って…彼女が何故か驚いている。

あれ?なんか予想してたのと違うぞ?


「これ…酷い。差出人は…書いてないか…」


そう言って次々手紙に目を通していく彼女。

どんどん彼女の顔が怒りに満ちてくるのが分かる。

全ての手紙に目を通した後…彼女は小さく溜息を吐いた。


「これは対策を考えないといけないわね…」


「あの…手紙。僕も見てもいい?」


尋ねた僕に何故か悲しそうな顔を向ける。そんな顔をされたら、ますます中身が気になるじゃないか…。


「気分のいいものじゃないから…気落ちしないでね」


そう言って差し出してきた手紙を受け取り確認する。

今日は過去最高の8通。ただ、昨日までと違い可愛らしい封筒なんかに入っていない。


見るに耐えない罵詈雑言。僕が流したデマ(親公認の仲)が、男子生徒からのヘイトを集めてしまった様だ。

僕としては女の子より手紙をもらうより数倍マシなんだけど、広瀬さんはそうは感じていないらしい。


「こんな風に匿名でしか罵る事が出来ないなんて許せない」


そりゃ僕も全く怒ってないわけではないけど…目の前で憤慨してくれている彼女を見れば、それだけで溜飲が下がった。

そんな彼女の頭を無意識に撫でてしまった。


「なっ………!?」


彼女の顔が少しずつ穏やかさを取り戻してくる。


「僕の分まで怒ってくれてありがとう。この件については、広瀬さんと付き合っている有名税という事で納得することにしたから気にしないで」


「で、でも…」


「もし、もっと被害が大きくなったら対策を考えよう。こんなのはそのうちなくなるよ」


納得の言ってない表情だけど、事を荒立てるのは得策ではない。

無理矢理ではあるけど話を打ち切り教室に戻った。


教室に戻った僕達に、予想も出来ない様な事が待っていた。

クラスの女の子が僕達に詰め寄る。


「ねえ?親公認って本当なの!?それって婚約者って事!?」


「どっちが告白したの!?」


「いつから付き合ってたの?もしかして広瀬さんが鷹野君に話しかけてたのって…」


こんな感じでいきなりの質問責めに遭う。

うわ…こんな単刀直入に聞くかな普通…。


「こ、婚約者…?」


あ、しまった…。彼女が疑問符を抱いている。

僕はどうしていいか分からずにいると、彼女が僕を見て越後屋スマイル…要は悪そうな顔をした。


「えっと…親公認なのは本当だよ。家族ぐるみでお付き合いさせてもらってるの。婚約者って明確にしているわけではないけど…それとほぼ変わらないと思う」


「ちょっと!?」


僕はすかさずツッコミを入れるのだけれど、彼女は止まらない。


「告白したのがどちらかは…(チラ…)それは内緒で」


一瞬こちらを見る所があざとい。そんな態度を取れば僕からしたって周りは思うだろう。


「付き合っていたのは、質問の通りその時期からよ」


そんな前からはお付き合いしてませんけど!?

飄々とした顔で嘘がつける広瀬さんを恐ろしいと思う。


「ね!?」


笑いながらそう言って、腕を絡めてくる広瀬さん。

周りから歓声と舌打ちが聞こえてくる。

この瞬間クラスの…いや校内の男子生徒を敵に回したな。


溜息を吐く僕を尻目に広瀬さんは楽しそうに友達と談笑していた。

僕はいたたまれなくなり、自分の席に戻る。


「いきなりの展開だな。あれのどこがいいのか俺には分からないが…まぁ頑張れ…」


すぐに大澤君が声をかけてきた。今はそっとしていて欲しいのだけど、労わってくれている彼を無碍にする事は出来ない。


「うん、頑張るよ」


「でもまあ…お前がイケメンだったのはびっくりしたよ」


「いや、その話はちょっと…」


「でもなんで今まで通りなんだ?」


空気を読んでいる様に見える時もあるが、基本マイペースな彼らしく答えにくい質問をしてくる。


「とりあえずその話は明日でもいいかな?お店に入っている時に話すよ」


「ん?ああ…そっか。悪い悪い」


やっと察してくれたらしい。明日は明日で頭が痛いが、広瀬さんの機嫌もこれで落ち着くだろう。

結果として良かったと思う事にしよう。


「それと明日俺からも話があるから。ここではちょっと話せない内容だから。あんまり気分のいい話じゃないが…」


大澤君から話?彼が珍しく神妙な面持ちをしていた。


「分かった。とりあえず明日だね」


その後は、放課後まで特に何も起きずに平和に過ごせた。

その事にほっとしてしまい、油断していたのだろう。

オチは必ずついてくるという事を失念していたのだ。


帰り道…広瀬さんの距離がなぜかいつもより近い。

そのせいか手がたまに当たるのだけど、僕はそれに気づかないフリをしたのだけどそれがいけなかった。


夕食を一緒に食べている時の彼女の機嫌が昨日以上に悪かった。

終始無言…本当にわかりやすい性格だよな…。


恒例の家まで送っていく時間になった。

彼女は一人で帰ると言うが近いとはいえさすがに一人で帰すわけにはいかない。


その帰り道…僕がどうしたかはご想像にお任せする事にして、僕の名誉の為に触れないでおこうと思う。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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