42話 世の中には知らなくていい事もある【湊視点】
昨日に引き続き今日も広瀬さんが起こしに来た。朝食も2人で食べて一緒に学校へ向かう。
この流れ…暫くは続きそうだな。
『一度あることは二度ある』
それが良い事であれば大歓迎なのだが、世の中どちらかというと悪い方に多くそれが起きる気がする。
実際は同じぐらいの割合で、悪い事の方が印象に残りやすい…ってだけかもしれないけど。
前置きが長くなったけど、今日も今日とて封筒が入っているのは…なぜだろう?
隣を見れば、非の打ち所がない笑顔の広瀬さん。
オ、オカシイ…。ドウシテコウナッタ?
「昨日あれだけ言ったのに…。私の言った事を理解できなったのね」
「いや、こ、これ「場所を変えましょうか」」
僕は黙って従うしかなかった…。
「それで…?」
「いや、それでと言われましても…」
「ちゃんと相手に言ったの?私と付き合ってるって」
「はっきり言ったよ(広瀬さんが怖いから)」
「ならどうしてこうなってるのかな?」
「どうしてだろう?」
「質問に質問で返さない」
「す、すいません」
これ僕が悪いのだろうか?なんか色々腑に落ちないが、ここは反論してはいけない。
反論すると今以上に面倒な事になるのは目に見えてる…。
「………………」
「………………」
「………………」
無言が気まずい…。彼女の気持ちを逆なでしない様に細心の注意を払いながら、思った事を口にしてみる。
「昨日僕がはっきり伝えたのは間違いないから…。とりあえずお断りする時に、僕達が付き合ってるって話を聞いてないか探りを入れてみるよ」
「そうね。もしかしたら知らなかったのかもしれないわね」
僕の意見に少しは納得してくれた様だ。どうやら少し怒りを抑えてくれたらしい。
「そういう事で私は先に帰って待っているから、後できちんと報告してよね」
昨日と違い、今日は報告しないといけないらしい。
どうやら僕はもう信用されていない様です。
「とりあえず、教室に戻ろうか」
僕達はそこで話を打ち切って教室に戻った。
昼休みになり、大澤君がやって来た。昨日はゆっくり話そうにも時間がなかった。
とは言っても今日もそこまで時間はないのだけど…。
「おい!!」
「なんだい?」
「なんだい?…じゃねえよ!!どういう事か説明しろよな?」
「ちょっと今…君に構ってる暇なくて…」
「なんだと?はっ…モテる男は言う事が違うな」
皮肉を言ったつもりなんだろうけど、僕は彼の後ろを指差す。
僕の指した方角を見た彼は…
「ひっ…」
と小さな悲鳴をあげる。
「そんなわけで…僕にはやるべき事があるので…」
「そ、そうだな。やるべき事は先に終わらせないとな。とりあえず落ち着いたら色々聞かせてくれ…」
そう言って去っていく大澤君。
危機感知能力は、人並みに持ち合わせているのだろう…賢い選択をしたな彼は。
手紙をくれた子達を訪ねる為、教室を出る。
今日、手紙をくれたのは3人だったから、うまくいけば昼休みの間に終わるかもしれない。
一人目の子を呼びだす。隣のクラスの話した事もない生徒だった。
「あ、あの!!私…鷹野君の事が…「ごめん、気持ちは嬉しけど…」」
最後まで言わせないように言葉を被せた。
「僕こんな感じだし…もっといい人いると思うけど…」
「今はそうかもしれないけど、本当は違うのを知ってしまったから。だいたいなんでそんな変装するの?」
「あまり目立ちたくないから…だね」
「そっか…目立ちたくないから…ね。でもこないだの文化祭でかなり目立ってたよ。それと広瀬さんと付き合い始めたんだよね?」
「知ってたの!?」
「学校中に知れ渡ってると思うよ?」
「やっぱり…そうだったか…。でもそれならなんで…?」
「それは…二人を見てると、鷹野君が無理矢理付き合わせられてる様に見えたから。それに…別に付き合い始めたからって遠慮する必要ないでしょ?恋愛ってそもそも自由だし。自分に正直に生きたいと思っても別におかしくないでしょ?」
周りからはそう見えてたのか…。これ広瀬さんが聞いたら怒りそうだな。
無理に付き合ってるわけではないと言っても説得力ないだろうし…。
とりあえず揺さぶりをかけてみますか。
「そうだね、別に恋愛って自由だと思うよ。でも僕が君と付き合う事になっても僕は冴えないままだよ?」
「それは別に構わないよ」
「それはありがたいね、でもそうすると君が喜ぶ様な事はないと思うけど…」
「そんなのは別に気にしなくていいの」
「いやいや、そこは気にするでしょ。こんな僕と付き合ったところで君に大してメリットないでしょ?学校では良くても、全く知らない人からすると、好奇の目に晒されると思うけど…。」
「そこは鷹野君に気にしてもらわなくても大丈夫」
揺さぶりをかけてみたけど…全く動じない。
うーん、困った…。こうなったら仕方がない…。
後で怒られるかもだけど、このままの状況でもどうせ怒られるし、こういうのが続くのも面倒だしな。
「あんまり大きい声で言えないんだけど…出来たらあまり広めないで欲しいのだけど…」
絶対とは言わずやんわりとお願いする。
こう言われると大概の人は周りに話すだろう。
「僕達、お互いの家族公認の仲なんだよ。だから皆が思っている無理矢理って感じじゃないんだ」
「そ、そうなの!?」
「うん…まぁ…」
かなり食い気味でこられたので、少し弱気になってしまった。
「そういうわけだから…せっかく手紙くれたのにごめんね。受け取ると彼女に悪いから…返すね。本当にごめん」
この流れをあと二回繰り返した。
二人も僕らの話は知っていた。学校内のネットワークって凄いなとつくづく思った。
こりゃ、今日の話も明日には広まっているのだろう…。
この感じからして、僕の目論見通りになる気がした。
家に帰宅すると広瀬さんが食事の準備をしていた。
今日の出来事を聞かれたので、とりあえず今回こそは大丈夫だと伝え報告を早々に打ち切った。
今日聞いた話を…そのまま言う勇気は僕にはない。
ビビっているのではなく、これは優しさと言っても過言ではないだろう。
思いの外、広瀬さんは追求してこなかった。
さて、今日は逃げ切れたけど…明日学校行ったらどうせバレるだろう。
また明日も今日とは別の意味で怒られるのか…。
明日を憂鬱に思いながら、食事を進める。
普段は美味しいと感じる夕食も、今日ばかりは味がよく分からなかった…。
いつも読んでくださってありがとうございます。




