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41話 もちろん分かってます!!【湊視点】

新章始まります。

文化祭の翌日の朝…僕の安眠を妨げる不愉快な音で目が覚める。

大げさに言ってるけどインターホンが鳴っただけなんだが…。


時間を見ると、まだ7時を過ぎたばかり。

無視して再び眠りにつこうとすると、ガチャリ…と玄関の方から音がした。


あれ?今…なんか扉の開く音がしたような?

まだ覚醒してない頭でぼんやりとそんな事を考えていると…


「なんだ、まだ寝ているのね…」


寝ている僕に、突然声がかけられる。



……………っ!?


びっくりして急いで起き上がり声の主を確認すると、そこにはなぜか広瀬さんが立っていた。


「ど、ど、どうして広瀬さんがここに!?」


「どうしてって…音ちゃんから『彼女』なんだから、湊の世話よろしくってお願いされたからだけど?」


さも当たり前の様に言う広瀬さんの言葉を理解するのに、少しばかり時間がかかった。


「……て、ちょっと待て!いや、それおかしいだろ!?彼女っていてもフリだけで本当に付き合ってる訳じゃないんだぞ」



「音ちゃんが言うには、『形から入るのが大事』なんだって。文句は私にじゃなく音ちゃんに言ってよね。とりあえず朝食べるよね?今すぐ作っちゃうから」


もう話す事はないとばかりに、キッチンに向かう彼女…と思ったらなぜか戻ってきた。


「あと、広瀬さんじゃなく杏って呼んでよね。ちゃんと慣らしていかないといけないんだからね」


「分かったよ…杏」


「う、うん…。おはよう………湊…」


「ああ…おはよう」


自分だって恥ずかしがってるくせに…。

まったく朝からなんてやり取りしてるんだか。

これは他人には見せられないな。

音羽がいなくて本当に良かったと思う。

満足したのか、今度こそ彼女はキッチンに向かった様だ。




このまま寝ておくのも気まずいので、急いで着替えてリビングに向かう。


「早かったわね。もう少しで出来るから待っててね」


これ…付き合ってるというより新婚って感じだと思うのだが…。

音羽が広瀬さんを煽ったんだろうな。後で文句は言ってやろう。


作ってくれた朝食はトーストとサラダと目玉焼き。

しかも目玉焼きには僕の好きなソースがかかっている。彼女の方は、醤油だ。

自分の好みに合わせて…というわけではない様だ。

きっと音羽にでも聞いたのだろうな…。

自分の好みを知ってくれている…というのが、こんなに嬉しいものだとは思わなかった。


「ごめんね、あんまり時間ないから簡単なもので済ませちゃった」


「いやいや、朝ご飯作ってくれたんだから、そこは感謝しかないよ。用意してくれてありがとう。いただきます」


「なら良かった…」


最近、夕飯は一緒に食べていたけど、朝を一緒に食べる事はなかったのでなんだか緊張する。

いつもの夕飯の通りにすればいいと分かっていても、会話がうまく出来ず2人とも最初に言葉を交わしたきり、黙々と食事を進めていく。


そして…そのまま食べ終わってしまった…。結局最初以外何も喋らずじまい。


「片付けは僕がするから、広瀬さ「杏」……杏は先に学校に行ってて」


またも言い直しさせられた。


「待ってるからいいわよ。私に気を使わずさっさと片付けしちゃいなよ」


別々に行くのに、わざわざ待つ必要があるのだろうか?

おかしいと思いながらも、とりあえず片付けに集中する。


「よし、終わった」


「お疲れ様。もう支度は出来てるの?」


「ああ、昨日のうちにやってるからすぐに出れるぞ」


「それじゃ、学校に行こうか」


「そうだな、それじゃ先に広「杏」」


「それじゃ先に杏が出てくれ。俺は後で出るからさ」


「なんで?一緒に出ればいいじゃない」


「いや…それだと人目がさ…」


「別に気にする必要ないでしょ?」


「いや、そこは…気にするだろ…」


何を言っても聞く耳持たないといった風な彼女と押し問答していると遅刻してしまう。

諦めた僕は彼女の言う通り、一緒に家を出る。


歩きながら視線を感じる。

同じ学校の生徒はもちろんの事だが他にも大人や他の学校の生徒などなど…。


そりゃ釣り合わないわな…。そんなのは自分が一番分かっている。朝から拷問だな…これ。


そんな事はおかまいなしに彼女が話しかけてくるもんだから僕は逃げるに逃げられない。

電車に乗り、学校の最寄りの駅で降りる。

ここまで来ると、学校の生徒の割合が多くなる。


僕らの事を話しているであろう雰囲気を感じる。

こちらをチラチラ見ているからきっと勘違いとかではないだろう…。


広瀬さんは家を出てからここまで…相変わらずご機嫌な様子で話しかけてくる。

この人の周りを気にしない強気な態度は…正直羨ましいと思う。



学校に着いて、下駄箱に向かう。

僕らの学校の下駄箱はロッカータイプの扉付きなのだが、扉を開けるとそこには見慣れない封筒が入っていた。

数にして…6通。

この展開は、昔散々経験した…。

また繰り返されるのかと思った矢先、隣に人の気配を感じた。

急いで横を向くと…そこには笑顔の広瀬さん。


「あら…どうやらおモテになる様ですね…」


「いや、これは…」


「場所を変えましょうか」


丁寧な言葉遣いなのがとても怖い。とりあえず人気のいない校舎裏に移動する。





「分かってるわよね?」


「い、イエス マム!!」


「ふざけるんじゃない…」


「は、はいっ!!」


「間違っても中身・・を見ようとか思わない事ね。そのまま返して、私達が付き合ってる事をしっかり相手に伝えなさいよ?今回は湊に任せるけど、暫く続く様なら私が手紙をくれた子に直接返すからね。そうならない様にどうしたらいいか…分かってるわね?」


「はい、分かっております!!」


「放課後、私は先に帰るから…今日中にちゃんとしてね」


そう言って教室に戻って行く彼女。僕は頭が痛い問題が出てきたせいで、早退したくなったがそれをしてしまえばきっと不幸になる人がでてくるだろう。

それほどまでに広瀬さんは怒っていらっしゃる。

仕方がない…とりあえずこの分は放課後までになんとかしますかね…。



翌日…僕と広瀬さんが付き合い始めたという事が学校中に知れ渡った。

苦もなく学校中に伝わったのは、僕にとって都合の良い展開ではあるのだが、学生のネットワークって恐ろしいな…とつくづく感じた。

いつも読んで下さってありがとうございます。なかなか更新できずすいませんでした。まだ暫く不定期更新になりますが、少しずつ書き足していこうと思ってますので今後も宜しくお願い致します。

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