39話 祭りの後は説教がデフォ!?【音羽視点】
私の目の前で2人が正座している…。
そんな彼らを見下ろしながら…私は溜息を吐く。
「それで…どうしてこうなったのかしら…?」
正座している杏が事情を説明してくる。話を聞いて…理解できない事もないけど、約束を破られた事に変わりはない。
「湊…。私との約束は覚えているわよね?」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「聞こえてなかったのかしら?」
返事がないので再度質問する。
いけない…少しだけ声が威圧的になってしまったかもしれない。でも、私が悪いわけではないから仕方ないわよね。
「ひっ…」
湊ではなく、隣に座る杏から声があがる。
杏をチラリと見やり、溜息を吐いた湊が観念したのかやっと口を開く。
「約束はもちろん覚えてる。こうなってしまったら、ここにいる意味がなくなってしまったし…」
「そうね…。そうしたら…約束通り家から通える学校に転校してもらうわ」
「ちょ、ちょっと音ちゃん!?」
杏が慌てて横槍を入れてくる。
「何かしら?」
「約束って何の話!?転校って何!?」
「湊は家族それぞれと約束をしていたのよ。一人暮らしをする条件としてね。それが破られたら、実家に戻ってそこから通える学校に転校するって約束を元々していたのよ」
「そんな…」
「そういう事なので…杏は少し黙っててちょうだい」
「鷹野君は…それでいいの!?」
黙っててと言ったのに。まったく…人の話を聞かないんだから…。
「約束は約束だしな。あとこの後に起きるであろう事も予想できるからな…」
そう言って、杏に少し困った様な顔で微笑みかける湊。
「私は断固反対です。せっかく仲良くなってきたのに…。そもそも何が問題なの?」
「杏は知らないだろうけど…湊って結構モテたのよ。学校内外問わずね…。湊の容姿だけで近づいてくる輩が多くてね。そんな悪い虫を私が排除してきたのよ」
私が過去にどれだけ苦労したか…。
「排除…」
杏…どうしてそんな苦虫を噛み潰したような顔をしているの?
私なにか変なことを言ったかしら…?
「湊がわざわざ遠方の学校を選んだのはそういった煩わしさを切り離した生活を送りたかったからよ。今日の一件で、これから前と同じ様な事態が必ず起きる。そうなってしまったらここにいる意味ないわ」
「でも、鷹野君だって…この学校に馴染んできたし、転校するのは嫌なんじゃ…」
「一人暮らしも悪くなかったけど…まぁ…仕方ないわな」
そう言って力なく笑う湊を見て、杏の顔が硬直する。
直後…ワナワナと震えだし…目がつり上がってきた。
あ…怒ったわね。
「そこは嫌って言うところでしょ!?今みたいに会えなくなるのよ!?私の事なんて好きでもなんでもないだろうけど、なんでそんな事を言うのよ…。舞台であんな事したくせに…」
怒ったと思ったら今度は泣きだした。まぁ…気持ちは分からないでもない。湊ってそういう無神経な所があるから…。
仕方がないわね…助け舟を出してあげましょうか。
「湊…杏はこう言ってるけど、あなたはそれでいいのね?」
「お、俺は…」
杏が固唾を飲んでその後に続く言葉を待っている。
「俺は…?」
「俺は、この学校に通い続けたい」
「前みたいな状況になるのに?」
「そこを踏まえた上での答えだ」
「このまま学校に通いたい理由は?」
「そ、それは…」
チラリと横に座る杏を見やる。湊の答えを心待ちにしているのが一目瞭然である。
ほんと、素直に感情を露わにするな…。
そういうところは羨ましいし好ましく思う。
「最近友達も出来たんだ。そいつ…俺以外に友達居ないし、そいつを見捨てるみたいで後味悪い…」
あ…。杏が分かりやすいぐらいに落胆した。残りたい理由が自分じゃなかったからショックだったのだろう。
湊も、ああ言ったものの杏が理由で間違いない。
だって語尾がだんだん小さくなっていたもの…。
追い討ちをかけて聞いてもいいけど、それでギクシャクされても困るわね、さて…。
「でも虫除けはいないのよ?どうするの?」
「俺も子供じゃない。自分の事は自分で何とか出来る」
「へぇ…嘘とか苦手で流されやすい性格してるくせに?」
「…………………」
「すぐに答えられないなんて、そんな感じで本当に大丈夫かしら…」
「た、たぶん…」
「はぁ…。杏…いつまでもそんな落ち込んでいないの!!」
「えっ!?えっ!?」
突然呼ばれて困惑している。まったく、どっちも本当に手がかかる…。
「杏も湊がこのまま学校に通い続けるのは賛成なのよね?」
「そ、それは…そうだけど…」
「分かったわ」
「湊、前にした約束は破られたから、新しい約束をしてちょうだい。これが出来ないなら実家に戻ってくるって事でいいかしら?」
杏の答えを確認し、私は続けて湊に問いかける。
「分かった」
「最初に言っておくけど、この約束は湊1人だけでは出来ない。杏…あなたの協力が必要よ」
「えっ!?わ、私の!?」
慌てる杏を無視して続ける。
「あなた達…付き合ってる事にしなさい。私の代わりに杏、あなたが虫除けをしなさい。出来るわよね…?」
私が提案した瞬間…2人の顔が固まってしまった。
私がやってあげられる事はここまでよ。あとは2人で何とかしなさい…。
頼りにならない2人の背中を押すのも大変だ、うまくいったら絶対に恩返ししてもらわないと…。
もちろん2人の答えは…予想通りだった…。
いつも読んで下さってありがとうございます。
最近忙しくて更新速度が落ちてます。出来るだけ頑張ります。




