37話 波乱の文化祭 中編【湊視点】
だいぶ更新が遅くなりました。更新の遅れ申し訳ございませんm(_ _)m
勢いで賛同してしまった事に気づいたのか、クラスから心配の声が少しずつ上がってくる。
そもそも…挙動不審の僕に任せようとか皆どうかしてると思う。
冷静な判断が出来なかったとはいえ、それだけ中止は避けたかったってことなんだろうけど…。
「君がそんな簡単に人を売ったりするとは思わなかった」
僕は小声で大澤君にそう言うも、皮肉った言葉を笑いながら受けとめている辺り、彼に反省する気は全くないようだ。
「ちょっと質問なんだけどさ?コイツ…台詞覚えてるかもしれないけど、まともに言えるわけ?」
あー、当然の質問がやっと出てきた。決定が覆るかな…?
これで…お役御免になりそうだ…。
「あ〜、鷹野は演技だとスイッチ入るみたいで…普段からは信じられないぐらい流暢に喋るから大丈夫だ」
ならなかった…。
追撃の手を緩めない大澤君と張り合う元気は今の僕にはないので、諦める事にする。
でも、この恨みはいつか必ず…。
「あー、でもな?王子様への変身シーンは、ちと鷹野だと荷が重いのでそこだけなんとかうまくやり変えてくれたら助かる」
「そ、そうね。そこは少しシナリオを変えるわね」
大澤君と学級委員兼演劇部のクラスメイトがそんなやり取りをしているのを、僕は他人事の様に聞いていた。
隣ではなぜかご機嫌な様子の広瀬さん。
まったく…。何が嬉しいのだか…。
本番まで、まだ時間があるのでリハーサルを行う事にする。
どもり癖のある人間が普通に演技してたらそりゃ違和感あるよね…。
皆の視線が…絶賛突き刺さってます。
この言い訳…結構無理あると思うけど、そこのとこどうなんだろうか…?
とりあえず皆の合格点が出た様なので、僕の王子が現実のものとなりました。
周りからおめでとうと言われるが、何もおめでたくない…。
リハーサルが終わって余韻に浸る時間もなく本番を迎えた。
町娘を演じている広瀬さんは、格好は地味なワンピース姿なのだけど…演技・容姿で観客を惹きつける。
ぼくはおかげでマイペースで演じることが出来て、今の所は大きなミスもない。
舞台も終盤…商人を黙らせるシーンに差し掛かった。
ここは…少しシナリオ変更がなされる部分だ。
告白後に変装を解き王子である事を明かすのではなく王様(大澤君)が、この革職人(僕)が王子である事を皆に知らしめる…といった流れに、事前の打ち合わせをしてある。
あとは変更の流れにそって演技をすれば、舞台は終了。
僕もこれで晴れてお役目御免となる。最後の見せ場に気合いを入れ直す。
〜〜〜〜〜〜〜
「苦労ばかりさせてしまうが、君が泣くような事はしない。僕と結婚して欲しい…」
散々練習した台詞を噛み締めながら言っていく。もう少しだ…
「君の悩んでいる理由ついては僕と王様でなんとかする。だから僕を信じて欲しい…」
「私もあなたを愛しています。生涯側において下さい…」
なんだろ?ここの部分の広瀬さんの演技が今日イチで気合い入ってる気がするのは考えすぎだろうか…。
あとは王様(大澤君)が締めて、商人役のクラスメイトがその場を去っていけば、幕引き…。
安心しかけたところで、客席から思わぬ言葉が投げかけられる。
『おい、知ってるか?この後商人が文句を言いだして、革工房の青年が変装解いて王子になるらしいぜ!!』
なぜ…変更前のシナリオを知ってるんだ!?
暗くて見えにくいが、私服であるところを見るとこの学校の生徒ではない。
「な、なんであいつが!?」
僕の横でそう呟く大澤君…。
一体何を驚いているのだろう。
観客の一人が演劇の先を言ってしまったので…
『ネタバレとかまじ最悪…』
『あのお兄ちゃんが王子様になるの?』
といった声が客席からあがる。
思わぬ事態にどう対処していいか分からず、劇が中断してしまう。
『王子様はやく〜。素敵な姿を見せてくださいよ!!』
先程の変更前のシナリオを言った男が再び煽ってくる。
その影響を受けてか、周囲の観客も早くしろ…といった具合に、あちこちから声があがってくる。
このままではまずい。後少しで終わるところだったのに…。
隣を見れば大澤君は客席の方を睨みつけている。
そして広瀬さんは…。
今にも泣き出しそうな顔をしている。せっかく練習を頑張って、ここまでやって来たのに。本当に最後の最後でそれが全て無駄に終わろうとしている。
『王子!!王子!!王子!!』
『王子!!王子!!王子!!』
『王子!!王子!!王子!!』
『王子!!王子!!王子!!』
王子コールの大合唱が客席から始まりだした。
もう舞台は台無しだ…。
この王子は変装が解けない…。
だからこその煽りだったのだろう。
舞台裏のクラスメイトが悔しそうにしているのが分かる。
「ごめんね…。私が鷹野君ならって賛同したばかりに…。恥かかせてごめんね…」
力ない声が僕の耳に届く。
その声は…震えていた…。
その目から…涙が溢れていた…。
「ごめんね…ごめんね…」
そう繰り返す彼女を見て…僕の中に怒りが湧いてくる。
無自覚に人を傷つける煽りをしてくる観客に…。
そして、そんな事を許してしまった自分の不甲斐なさに…。
「大丈夫だから…僕に任せて」
そう彼女に告げて…僕は『僕を隠してくれた大切なもの』に手をかける…。
いつも読んでくださってありがとうございます。




