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33話 湊を見つめる謎の視線…【???視点】

男からラブレターを貰って嬉しいと思う経験をした奴なんてほとんどいないだろう。

俺は別に男が好きっていう特殊な趣味でもなんでもない。

だが…少しだけ話を聞いてくれ。


人には少なからず生き甲斐ってものがあるだろう。

もちろん俺にもあった…。

過去形なのは、もうそれを持つ事を許されなくなったからだ。


俺は…高校の野球部に所属していた。

エースで4番とまではいかなったが、それでもエースではあった。

小さい頃から野球に明け暮れ、甲子園に出場し将来はプロ野球選手になる事が夢だった。

その為に色々犠牲にしてやってきたと思う。

だが、そうやって積み上げたものが一瞬で消えちまった…。


部活帰りに事故にあった…加害者の居眠り運転が原因だった。


日常生活には支障がないぐらいには回復したが、野球はもう出来なくなってしまった…。

それからの毎日は…今思い出しても酷いものだったと思う。


周りの誰もが…友人だと思っていた奴らですら、誰も何も言ってこなかった。

いや…あの当時の俺にはおそらく言えなかったのだろう。


そんな日々を暫く送っていたある日…靴箱に一枚の紙が入っていた。

封筒にも入っておらず…ノートを破ったであろう事が分かる紙だ。

あまりに飾り気がないので、ラブレターという事はない。

どうせ、俺に文句のある奴からの呼び出しとかだろう。

無視しても良かったが、とりあえず開いてみた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜


生き甲斐を失って生きる事に意味はあるのだろうか?

俺はお前じゃないから、その答えがどんなものか見当がつかない。

だが、お前が流した汗は…努力はお前を絶対に裏切らない。

今は腐りたいだけ腐ればいい、お前の人生だ…好きに生きればいいさ。


だが…お前のその姿を見て悲しむ人が周りにいる事だけは忘れるな。

それさえしっかり覚えていればお前はきっと大丈夫だ。


Take it easy.


あ…すまない。お前頭悪いから意味分からないよな。


『気楽にいこう…』


って意味だ。良かったな、一つ賢くなれて…。

俺はお前に興味ないから『頑張れ』って言ってやるつもりはない。


そんなわけで、せいぜい腐った日々を楽しんでくれよ…。


ただ最後に一言だけ。俺はお前が投げている姿がけっこう好きだったぜ…。

フォームとかそういうのよく分からないが、あの一生懸命な姿が今でも目に焼き付いてる。

余計な事を言ったな。気を悪くしないでくれ…じゃあな…。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜


俺は人目もはばからず、涙した。

これ…ある意味ラブレターみたいなもんだろうが…。

俺が今こうして昔のようにまともな生活を送っているのは…あいつのおかげだ。


差出人を探していたが当然見つかるはずがない。

まともに学校に行ってない時期の遅れを取り戻す為、俺はノートを借りる必要があった。

目をつけたのが、クラスで嫌われ者の鷹野だ。

俺も嫌われていたし、嫌われてる者同士なら、俺が話しかけても迷惑はかからないだろう。


気楽に頼みに行ったら、予想外にも拒否された。

少し粘った末に、なんとか借りる事が出来た。

最初からおとなしく貸せって話だよな、手間かけさせやがって…。

借りる立場の割にあの時の俺は横柄だった。思い返して苦笑が漏れる。


家でノートを書き写してる時、そのノートの一冊に破った跡があった。

まさかと思い、こないだの紙を出す。間違いない…このノートの紙だ。

切り口を合わせる。こちらも合致した。

まさか…鷹野だったのか。

どう考えても他人に興味なさそうなこいつが書いたとは信じがたいが、おそらく間違いないだろう。


俺はこいつをもっと知りたくなった。

そんな事を考えて過ごしているとチャンスが巡ってきた。

鷹野が怪我をした。見ているとノートが取れなくて困っているようだ。

こないだの借りを返すって感じで話しかけよう。

放課後に話しかけよう…。そう考えていたのが俺だけではなかった事をすぐに知る事となる。


放課後、鷹野は広瀬に呼び出されていた。

ちっ…タイミングが悪いな…。

とりあえず教室に残っていると、少しして広瀬だけが慌てて戻ってきた。

帰り支度をして急いで教室を出て行く。

後を追いかけてみたら校門にあいつが立っていた。

二人は合流して、近くのコンビニにコピーを取りに行った。


まさか俺以外の誰かが動くなんて予想外だった…。

俺はせっかくのチャンスをふいにしてしまったのだ。


夏休みに入った…俺は未だにアイツと接点が持てずにいた…。

たまたま通りかかったスーパーで見てしまった…。アイツと広瀬が一緒に買い物してるところを。


アイツが広瀬に頼まれて何かを取りに行ってるタイミングで広瀬に声をかける。


「なぁ…お前ら何やってんだ…?」


声をかけられた広瀬の顔が真っ青になる。

いやいや…人の色恋の事なんかいちいち人に言わねえよ。変わった趣味だとは思うけどな。


簡単に事情を説明して、アイツの家を聞きだす。

あ?よく教えてもらえただ?そんなの今見た事を言われたくなかったら…って脅したに決まってるだろう?

言うつもりはないが、脅しに使うぐらいは勘弁してくれ。


こうして俺はアイツにやっと近づくことが出来た。

俺の家は、母親が洋食店をやっている。

バイトの大学生が、急に実家に帰らなくてはいけなくなり、短期でその穴埋めを探していた。

アイツなら真面目に働いてくれるだろう…紹介料として母親から小遣い貰わないとな。


そんな感じで取った行動が…俺の人生を全く予想すらしていなかった道に進ませる事になる…。

いつも読んでくださってありがとうございます。


明日は忙しいので上げれないかもしれません。

誰視点かは言うまでもなく…って感じなのですが…謎っぽくて面白いかな?と思い、今回はその部分を伏せておきます。

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