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30話 そうだ保養所に行こう 後編【杏視点】

彼の家…やっぱり凄かったんだな。

前に遊びに行った時にある程度分かっていたけど、会社の社長さんの息子か…。


私とは、住む世界が違うのかもしれない…。

でもまだ諦めたくない。


彼に今から何がしたいか聞かれたので、とりあえず泳ぎたいと言った。

すんなり了承され、着替えて玄関に集合って事で話がまとまった。


待たせてはいけないと急いで着替えたけど、彼の方がやっぱり早かったみたい。


一緒にプールまで移動して、まずは準備運動。

彼は準備運動が終わると直ぐにプールに飛び込んだ。


はしゃいでるのは私だけではない様で安心したのだけど、ここで1つ問題が発生…。

やっぱり…恥ずかしい…。


「広瀬さん、泳がないの?」


私がいつまでも入らないので、彼が聞いてきた。


「あ、えっと…その…」


「そ、その…あのね!!あんまり見ないでね……」


「大丈夫、そういうの興味ないから」


慌てて返したら、とっても失礼な事を言われた。

興味がない…?へー、私の水着姿なんて興味がないと…。

そりゃ、胸も大きくないし…魅力ないのは分かってるけど、改まってそんな事を言われて悔しくないわけない。

恥ずかしかった気持ちは霧散してしまい、気持ちは荒れ狂うばかり…。

思わず彼を睨む様になってしまったけど…私は悪くなんてないもん。


私は怒りに身を任せて服を脱いだ。

彼は…なぜか呆然とこちらを見ていて、身動き一つ取っていない。

髪の毛が目にかかっているので確認出来ないが、おそらく瞬きすらしていないのではないだろうか?


「もう…。見ないって言ってたくせに…」


少しは興味を示してくれたんだと思う。

それが嬉しくて、照れ隠しで自然とそんな言葉が漏れてしまった…。


プールで一通り遊んだ…泳いだり、イルカの浮き輪に乗ったり、ボールで遊んだり。

これだけ広いプールで周りを気にせず好きな人と遊べるなんて…。

私は今日という日を一生忘れない。

音ちゃん本当にありがとう…ここには居ない親友に私は心の中でお礼を言った。


簡単にシャワーを浴びて、夕食の準備に取り掛かる。

今日は彼も手伝ってくれるらしく、キッチンに並んで立つ。

今日のメニューは、ハンバーグ。彼がハンバーグが好きだって音ちゃんから事前に教えてもらっていた。


玉ねぎのみじん切りを彼がしてくれたのだけど、そのあまりの速さに驚いた。

料理出来るんだ…。一人暮らししてるから出来てもおかしくないか…。

私ってまだ彼の事なんも知らないんだな。

考え事をしていてつい手が止まってしまった私に彼が心配そうに聞いてくる。


「広瀬さん、遊び疲れで体調悪くなったりしてない?」


「か、考え事してただけ…。大丈夫!!」


「そっか、ならいいけど。体調悪くなったりしたら遠慮なく言いなよ」


心配かけてしまった様だ。今は食事の準備に集中しよう。

二人で作業したので、料理はあっという間に完成した。

動いた事でカロリーも消費したので、早めに夕食を食べる事に。

彼とたわいない話をしながらのんびりと夕食の時間を楽しんだ。


夜もまだ早い時間なのだが、彼が先に部屋に戻っていったので、私も部屋に戻って早速音ちゃんにお礼の電話をかけた。


「もしもし?」


「あ、音ちゃん。今電話いい?」


「別にいいけど…二人で楽しんでるのでは?」


「あ、今解散して部屋に一人でいるの!!だから、私の方は平気だよ」


「はい……?まだ夜って言っても早いでしょ!?なんでもう各々が部屋で寛いでるのよ!!」


「だ、だって…」


「杏…。あなた何しにそこに行ったのよ。まさか本当に泳ぎたかっただけって訳じゃないでしょ!?仲良くなりたいんでしょ?やる事しっかりやってきなさいよね。そうじゃないともう口利いてあげないから」


き、切られた…。

言いたい事は分かるけど…そんなの無理だよ…。

泣き言を言っていても仕方ないのは分かるのだけど…言わせて欲しい。

散々葛藤して、彼の部屋の前までなんとか来れた。

あとはノックをするだけ…頑張れ私!!


「………………」


「………………」


「………………」


「………………」


「………………」


「………………」


「無理だよやっぱり…」


膝から崩れ落ちる。

すると奇跡が起きた。目の前の扉が開き始めたの…。

ああ、神様…


「ひ、広瀬さん!?何してるの!?」


彼にみっともない姿を晒してしまいました。

神様の…いじわる…。


彼にもう少し話がしたいと告げ部屋に通してもらった。飲み物を入れてくると言って下に降りた彼を待つ。


「お待たせ。紅茶にしたけど良かったかな?」


「ありがとう。紅茶は好きだから嬉しいよ」


「なら良かった。それで話って何…?」


私は先延ばしにして聞けずにいた『あの事』を口にする。


「ねえ…?なんで学校で挙動不審のフリなんてしてるの?」


「それは広瀬さんには関係ないよね?言う必要あるの?」


返ってきた答えは…拒絶の意味を持った質問だった。

自分に関係ないと言われた事がとても悲しかった。


「あ、あるよ…」


「僕にはあると思わないのだけど?」


ダメだ…負けるな私。ここで引き下がったら…多分彼は離れていってしまう。

自分に喝を入れて、想いの丈をぶつける。


「あるに決まってるでしょっ!!好きな人の事知りたいって思って何がいけないのよ!?御託はいいから早く話しなさいよ!!」


「へっ………!?」


「あっ………!!」


思わずやってしまった…。その後二人とも気まずくなり、この話はうやむやになったまま私は部屋に戻った。

翌日の帰り道…昨日の空気を引きずったまま大した話も出来ず家路に着いたのは言うまでもなく、その事を音ちゃんに話して爆笑された私は、本気で死のう……とか不穏な事を思ってしまった…。

いつも読んでくださってありがとうございます。


一応ここで3章を完結して次回から新章に入りたいと思います。

中途半端です終わらせてますが、今後きちんと回収する予定でおりますので、その点だけご報告させていただきます。


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