29話 そうだ保養所に行こう 中編【湊視点】
音羽が急に来れなくなったので中止を提案したのだが、広瀬さんに却下された。
そんなに泳ぎたかったのか…。
深く追求して怒らせてもなので、そういう事なんだろうと…思うことにした。
食べ物とかは自分で用意しないといけないので、必要な物を駅の近くのスーパーで買った。
荷物が多くなり過ぎたのと、保養所は少し離れた所にあるのでタクシーに乗る。
車を走らせること20分…保養所についた。
保養所は山の麓に位置し、辺りは民家も少ない。
これ…広瀬さんに警戒されてないだろうか…?
彼女の方を見ると特段気にしている感じはしない。
タクシーの料金を払い、門扉を開ける。
保養所は、簡単に言うとプール付きの別荘だ。
なんでも、じーちゃんがパーティーとかする際にここを利用したとの事で、敷地の大きさもさる事ながら、建物も無駄に部屋数がある。
僕が生まれて暫くして、じーちゃんが亡くなり、それ以降は会社の保養所として使われているらしい。
「鷹野君の家を見た時も驚いたけど…いったい何なの!?」
「ああ…親父が会社の社長なんだよ。じーちゃんが創始者なんだけど…。トンビーって会社知ってるかな?」
「確か、不動産の会社よね…?」
「うん。そこの会社の保養所がここなんだ」
「トンビーってもしかして…鳥のトンビが由来とか?」
「そう。『鳶が鷹を産む』って諺にちなんでつけたらしい」
「『鷹』野だけにか…なるほどね。けど…なんか面白いね。普通は鷹の方が強そうだからそっちを会社の名前にしそうだと思うけど」
「なんか…鷹の方が凄いかもしれないが、産んだ親に敬意を払うべきだ!!って…」
「なにそれ!?ふふふ……。あ、笑うなんて失礼よね…ごめんなさい」
「いや、気にしなくていいよ。僕も聞いた時呆れたからさ。ここで立ち話もなんだから、そろそろ中に入ろうか」
「うん!!」
広瀬さんと別荘に向かって歩いていく。
門扉から建物まで少しあるが、庭が綺麗に手入れされているので、見てて飽きないだろう。
隣を見れば…やっぱり…。
広瀬さんの視線があっちにいったりこっちにいったり…と忙しなく動いていた。
その姿を無意識に注視してしまっていた事に気づいて、僕は慌てて視線を逸らした。
買ってきた食材を冷蔵庫にしまい、部屋に案内する。
客室は2階に横並びになっている。あまり離れても近くても良くないだろうと思い、階段に近い所から1番目と3番目の部屋、要するに間に1つ部屋を挟む形で使う事にした。
広瀬さんが、さっそく泳ぎたいと言ったので、まずはプールで遊ぶ事にした。
買い物の時に簡単にお昼も食べたので腹ごなしとしては、いいかもしれない。
着替えて玄関に集合という事になり、僕は大した準備もないので直ぐに下に降りた。
暫く待っていると彼女が降りてきた。
白のショートパンツに水色のパーカー。
爽やかな印象で彼女にとても似合っている。
プールに着いて、まずは軽く準備運動。
それが終わると…Tシャツを脱いで、直ぐに飛び込む。
彼女も続くかと思いきや、なぜか服を脱がずにプールサイドで佇んでいる。
なぜだ?泳ぎたかったのではなかったのでは?
「広瀬さん、泳がないの?」
「あ、えっと…その…」
何だかおかしな反応が返ってきた。
「そ、その…あのね!!あんまり見ないでね……」
なにを言いだすかと思えば…。
水着見られて恥ずかしいとか今更過ぎる。
言われなくても見るつもりなんてないから、そんなの気にしなければいいのに。
「大丈夫、そういうの興味ないから」
そう言った途端、照れた表情を浮かべていた彼女は僕を睨みながら?パーカーとショートパンツに手をかけていた。
どうやら言葉を間違えたらしい…。
彼女が脱いでいるところを見るのは失礼だろうと思い、目をそらす。
脱ぎ終わったであろう頃に彼女に目を向けた瞬間、僕は金縛りにあってしまった。
えっ…!?
彼女の水着はビキニだった…しかも黒の…。
彼女の胸は少し残念な事になっていると前に言ったことがあると思う。
彼女はどちらかというと綺麗より可愛いという方が適している女の子だ。
そんな彼女が、大人っぽい水着を着ていると、そのアンバランスさ故になんとも言えない魅力があるのだ…。
僕はその姿に見惚れてしまって、暫く彼女から目が離せないでいた。
「もう…。見ないって言ってたくせに…」
そんな風に恥ずかしそうに笑う彼女を見て、僕の胸は更に高鳴ってしまうのだった…。
いつも読んでくださってありがとうございます。
鷹野家がお金持ち設定、気に入らなかったらすいません。
今後の流れ的に上手いのが思いつかなくて、楽な道に逃げてしまいました…。




