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23話 音ちゃんの策略!?お昼ぐらいは気持ちよく食べさせてください【杏視点】

「ところで、お昼どこで食べる?」


「そうだな…俺はマスターのとこでもいいけど…」


「そうね、あそこ今の時間でも人少ないから」


「おい、それマスターの前で絶対に言うなよ?」


「わかってるわ、だいたいそんな事言うわけないでしょ…湊じゃないんだから」


2人が腕を組みながら、お昼をどこにするか話している。

私はその光景を少し後ろで眺めている。

傍から見たら、釣り合いの取れてないカップルとしか映らない。

音ちゃん、そんな見せつける様にしなくてもいいじゃない…。


「広瀬さんがなんか食べたいのあるなら、それ系のお店にするけど?」


彼が突然私に聞いてくるが、つい素っ気なく返してしまう。


「そこでいいよ…」


私はその後も黙ったまま彼らに付いて行った…。


お店に着くと、カウンターもテーブル席もどちらも空いていた。

ゆっくりしたいから今日はテーブルの方でと、音ちゃんがお店のマスターさんに告げた。

こじんまりとした喫茶店。雰囲気も悪くない。

ホールで注文を取っている女性も…可愛い。

料理があまり美味しくないのだろうか?

いや、でもお店にいるの女性ばかりだ。

美味しくない店にこんなに女性が集まるとは思えない…。


「杏、この店ね…?」


テーブルに移動している最中、小声で音ちゃんが教えてくれた。

この店に女性客が多いのは、マスターさんが男性客が来るとすごい不機嫌になるから…らしい。

注文を取っている女性が奥さんらしく、ちょっかいかけないか、料理そっちのけで睨みを利かせてるとの事。

そして、このお店の最大の欠点は…『サービス精神旺盛』な所らしい。

それのどこが問題なんだろうか…?言っている意味がよく分からない。


通されたテーブル席は店の1番奥だった。

ゆっくりしていってね…と奥さんから言われ席に座ろうとする。

だが、ここで問題が起こった。

テーブルは4人掛け、入り口側に彼が。奥側の席に彼女が座る。

2人は斜めの配置になっていて、私の選択肢は…彼の前に座るか?それとも彼の横に座るか?二つに一つだった…。


抗議の意味を込めて彼女を一瞥いちべつすると、すました顔してる様だが、よく見ると若干口の両側がつり上がっている。


…………っ!?

あ、あとで覚えておきなさいよ、音ちゃん…。


私は『彼の横』に座る事にした。

距離が近いのは緊張するけど、正面に座ると目が合う機会が多いだろうし、見られたらご飯を食べられる自信がない。

この考え方が失敗だったと…すぐに気づく。


音ちゃんが、私に話しかけてくるのだが、その内容が私に対する質問ばかり…。

好きな音楽とか…そんな感じから始まってあれやこれやと。

私達は毎日電話していて、当然そんな話は最初の頃に済ませてる。

彼に私の好きな事を説明しているとしか思えない。

そう意図なんだろうけど、問題は…


彼が私の方をずっと見てるからね!?

顔近い…近いっ!!


そんな質疑応答のやり取りが続くと、視線は自ずと答える側の方に集中するのは普通だろう…。


彼女が笑いを堪えているのを見て、この仕返しをどうしてやろうか…。

熱くなった顔でそんな事ばかり考えていた。


そして、この店の欠点である『サービス精神旺盛』の意味を私は知る事となる。


マ、マスターさん…。これ部活帰りの柔道部の方々がお腹いっぱいになるぐらいの量ですよっ!?

気にしてなかったが店内をよく見ると、女性の1人客がいない。

この量じゃ、流石に1人じゃ来れないよね…。

カウンター席に人がほとんどいないのは、お一人客が居ないから…って訳ね。

私は、なんとなく理解した。


2人の頼んだものを見ると…パスタを一人前とケーキが一個。ご丁寧に取り皿まで受け取ってる。


「大丈夫だよ。こういう店って広瀬さんに教えたかっただけのイタズラだからさ」


彼は続ける。


「無理しないでいいからね。残りそうなら僕が責任持って引き受けるから」


そう優しく私に言ってくれた彼が………苦悶の表情を浮かべるのは、それからほんの少し先の話である。

いつも読んでくださってありがとうございます。

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