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15話 赤に染まる日【杏視点】

「鷹野くん、ちょっといいかしら?」


私が声をかけた瞬間、彼の顔が引き攣るのが分かる。


まったく…。なんて失礼な奴だ。取り繕うって言葉は彼の辞書にはないのかしら!?


そんな自分主体の考え方が、彼にそんな顔をさせている事に杏は気づかない。


「今日、ちょっと寄りたいところがあるから着いてきてくれないかしら?」


「え、えっと…。ぼ、僕…今日は急いで帰らないと。お、音羽、ま、待たせるのは…」


あ〜、あの妹ちゃんにビビってるのね。

仕方ないわね、私がどうにかしてあげましょう。


「スマホ貸して」


「へ、へ!?」


「いーからスマホ貸して」


「な、なんで!?」


どうせ私の言う通りになるんだから、いちいち逆らう事ないのに…。優しくし過ぎたかな?

本当に学習しないな…そろそろ立場というものを分からせないといけないわね。


「私が代わりに連絡してあげるから。うまくやるから早くして」


「で、でも…」


「次は…ないわよ。か・し・て」


渋々彼はスマホを差し出してきた。

まったく、ほんと余計な手間掛けさせるんだから。


彼のスマホを受け取り、メールアプリを開く。

『音羽』という名前を探す。すぐ見つかるかと思ったが予想外の事が起きた。


ちょっ!?ちょっと!?

何気に友達いるんですけど!?

しかも女の子の名前がちらほらある。

どういう事!?

誰かと仲良くしてるところなんて見た事ないから、おそらく地元の友達って所かしら?

これは後でじっくり聞くとして…


とりあえず妹ちゃんにメールを送る。


『お兄さんと買い物して帰るから、少し遅くなるから by杏』


手早く入力して送る。

程なくして返事がきた。


『そんな事、私が許すわけないって分からないほど、残念なのかしら?』


カチンときた。なので無視する事にした。


あ、そういえば彼と連絡先の交換してなかったのよね。

どうせだし今やっとくかな。

自分のスマホを取り出して、QRコードを読み込む。

よし、交換完了っ!!


「とりあえず遅くなるって連絡したから彼女から連絡きても無視していいわよ」


彼のスマホから着信音が鳴り響く。


「それじゃ行きましょう。うるさいからマナーモードにしててね」



彼の家から少し行った所に小さいけどショッピングモールがある。

今日はデザートも作りたかったので、近所のスーパーではなく色々揃ってるこっちにした。

型やら必要なものを買って、お会計を済ませる。

袋に詰め、帰ろうとした私の目にいるはずのない人の姿が映った。


何で彼女が…。さては連絡したわね。隣をすぐさま睨みつけると、彼が気まずそうに頬を掻いていた。

溜息を吐き、彼女がこちらに近づいてくるのを待つ。


「あら…偶然ね。湊もここに買い物来ていたのですね」


白々しい…。しかも私の事は無視ですか。

まだ私の怖さを理解してないのよね、この妹ちゃんは。

兄同様にこちらの教育もしていかないと…。


彼女に今後どんな事をしてあげようか考えながら帰路についた。





「も、も、燃えてる!?」


彼がそう呟きながら立ち尽くす。

今、私達の目には真っ赤に燃える彼のアパート。

火事と言えば冬のイメージが強いけど、この季節でも起きないというわけではない。

現に今、私達の目の前で絶賛アパート炎上中。


「そ、そんな…。鞄部屋に置いてきちゃったのに。取りに…取りに行かないと…」


彼女がそんな事を呟きながらアパートに走り出す。

それを彼が急いで止める。


「離して!!離してってば!!ダメなの。鞄、部屋に置いてるの。中にアレが入ってるの。お願いだから離して!!」


彼女の叫び声が私の耳を打つ。

あの子がこんな風に取り乱すなんて思いもしなかった。

よほど大切なものなんだろうな…。

それが何なのか分からないけど、何とかしてあげたいって思った。


彼女の手にある彼の部屋の鍵をひったくり、アパートに向かって私は走りだした…。

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