14話 平穏には程遠い、僕の不穏な日々。【湊視点】
人生、山あれば谷ありという言葉がある。
要するに色々あるって意味なんだろうけど、今の僕の人生を表すにふさわしい言葉だと思う。
あの事件から約1ヶ月が経ちテストも無事に終わった。
結局あれからしばらくの間、広瀬さんがノートのコピーをくれた。
クラスメイトの好奇の視線に晒されているにも関わらず、彼女は全く気にする事なく僕に声をかけ続けてきた。
最初は色々騒いでたクラスメイトも、『怪我した嫌われ者の僕を気遣う優しい広瀬さん』って位置づけで彼女の行動を勝手に納得したらしく、騒ぐ者は徐々に減っていった。
僕としても助かるからその位置付けに文句を言うつもりはなかった。
たとえ事実と違っていてもだ。
自分でノートも取れる様になった頃、そんな生活からもやっと解放されると安易な考えを抱いた僕を笑いたければ笑え。
彼女は今日に至るまで、いまだに学校で僕に話しかけて来るのだ。
これが最近の1番大きな悩みである。
それだけならまだしも、あの日の何がそうさせたのか知らないけど、広瀬さんは音羽の来る日は決まってウチに来る様になった。
そして、毎度喧嘩しながら2人で一緒にご飯を作って、ちゃっかり食べて帰っている。
『一緒にご飯を作る程度に仲の悪さが多少でもマシになって良かったじゃん?』だって!?
冗談じゃない。そんな事は2人が並んで料理してる所を見てから発言してほしいものだ。
というか、問題はそこじゃない。彼女が何故当たり前の様に僕の家に来ているのか!?って事が問題なわけ。
だいたい、喧嘩するぐらいなら来なければいいのに…。
広瀬さんが何を考えてるのかさっぱりわからない。
こんな光景がもう既に3回繰り返されている。
今まで、音羽とあんな風に文句を言い合う人って居なかったはずだ。
音羽も文句ばっかり言ってるが、最初の日こそ言わなかったものの、その後は広瀬さんが帰るってなると僕に送って行けってせっつくからな。
広瀬さんの事を気に入ってるんだかいないんだか…。
気にはなるけど多分聞いても、彼女は正直に答えてくれないだろうから考えるのはやめよう。
そして今日は音羽がウチに来る日だ。
おそらく4回目が行われる可能性が高い。
しかもあの後から、音羽は毎週ウチに泊まるようになっていた。
それまでは、その日のうちに実家の方に帰っていたのにだ。
これも頭痛の原因の一つである。
この様に僕は三重苦の状況に立たされている。
なぜ、神様はこうも僕に試練を与えるのが好きなのだろうか…。
僕はただ平穏に暮らしたいだけなんだ。
どこで道を間違えてしまったのだろうか…。
そんな事を考えて過ごしていたら、本日最後の授業の終了を告げるチャイムが鳴った。
僕の予想が正しければ、ここで彼女が釘をさしてくるはずだ。
「鷹野くん、ちょっといいかしら?」
ほら、予想通り悪魔の囁きが聞こえてきた。
予想が当たったからって、嬉しいとかそんな気持ちには到底ならないけど…。
2章の導入部の意味合いなので、少し短くなっています。いつも短いとか思わないでいただければ幸いです。




