12話 人のモノに手を出そうとする事は恥と知りなさい 【音羽視点】
今日は親に内緒で学校を早退した。
普段は品行方正な振る舞いを心がけているのだから、たまにこんな事をするぐらい許されるだろう。
なにもサボりたかった訳じゃない、私には早退すべき理由が存在していたのだから…。
先週、湊は怪我をした。自分の不注意とか言ってたけど、隣に居た女の子が原因だと私は確信している。
あの時彼女は私に何かを言いかけていた。
湊が急いで止めた事から考えても、原因は彼女で間違いないだろう。
彼女の見た目からしておそらく湊の後輩だろう。そうなると私と同学年か…。
私の湊に危害を加えるとか本来は許せないのだが、彼にも立場というものがあるだろうと思い、あの場は我慢した。
少し前の私なら、二度と湊に近づけない様に、脅しをかけていただろう。
だいぶ丸くなったものだな…とつい苦笑が漏れる。
そんなことを考えていると湊のアパートに着いた。
やっぱ遠いわね。湊が住んでいる街は…。
私の家(実家)から新幹線で30分かかるんだもの。
まったく湊ったら…。こんな遠くの学校に入学してしまうのだから。
もう帰っているのだろうか?足早に階段を上がる。
一応ドアノブを回すが扉は開かない。
鞄から鍵を取り出し扉を開ける。湊はまだ帰ってきてなかった。
制服に皺がつくことも気にせず私はベッドに倒れ込む。
ベッドから湊の匂いがする。私の安心する匂い…。
ベッドに転がりながら、先日の事を再び思い返す。
こないだは少しサービスし過ぎたかしら?
元々お母さんに言うつもりなんてなかったのよね。
湊に色々強請るチャンスだと思い、あんな態度に出たのだけど、もう少し色々引き出せたのではないだろうか…。
久しぶりの湊とのデートに釣られてしまった自分の不甲斐なさに歯噛みする。
また何か強請る機会があればいいのに…。
そんなロクでもない事を考えていたら、玄関の鍵を回す音に続き、玄関扉が鳴く。
湊が帰ってきたみたい。
「あれ?湊、帰ってきたの?お帰りなさい」
私はベッドに転がりながら湊に声をかける。
「い、痛いっ」
湊の悲鳴が聞こえた。私は急いで起き上がり、玄関に向かった。
そこには湊と…その横にこないだの女の子が居た。
へぇ…。一人暮らしをいい事に女の子を連れ込んでるのね…。
自分の顔から表情が消えていくのが分かる。
「音羽!?どうしてここに居るの?」
人前なのに、演技することも忘れて質問してくる湊…。
その子の前では演技してないのかしら?でも、こないだは演技していた様に見えたけど…。
もしかしてびっくりして油断したのかしら?
私との約束もあるのだから、あとでしっかりお仕置きしておかないと。
「湊を心配して来ただけよ」
私は端的に事実を述べる。
隣の女の子の顔が歪む。やはりこの子が原因で間違いないわね。
「2人ともそんなところに立ってないで、早く入ったらどう?」
我ながらよくもまぁこんなに威圧的な声が出るなとも思ったけど、そんな事はどうでもいいわね。
2人を中に入れ、テーブルに座らせる。畳の部屋にある、ちゃぶ台だ。
湊を真ん中にして右に私。左に彼女。ちょうど私と彼女が向き合う形となり湊の前は空席。
さぁ、裁判を始めましょう…。私は心の中で開始の言葉を告げた。
「早速だけど色々質問するわね。先に言っとくけど、湊は一言も喋らないでね。言葉を発した瞬間、叩き出すわよ」
私の言葉に目の前の女の子が一瞬肩を震わせた。
別に怖がってもらっても構わないわ。
「まずは自己紹介するわ。私の名前は鷹野音羽。そこにいる湊の妹よ。高校1年生よ。あなたは?」
私から自己紹介をして、相手に同じ様に求める。
「わ、私は広瀬杏です。鷹野君と同じクラスで高校2年生です」
あら?私より年上だったのね。湊と同じクラスですって?
羨ま…ってそうじゃないわ。脱線してる場合ではないと気持ちを引き締める。
「単刀直入に言うわね。あなた、湊の何なの?その前に私の湊が怪我してるのだけど何かご存知かしら?」
捲し立てるように彼女に質問する。
「わ、私は鷹野君のクラスメイトです、今の所はそれだけです。」
今の所って何なの?私のこめかみに青筋が浮かぶ。
「それと鷹野君の怪我は、私のせいです。あの日、私にぶつかりそうになった男の子がいて、それを助けてくれたのが鷹野君なんです。鷹野君に抱き寄せられてびっくりして突き飛ばしてしまったんです。尻餅をつかせる事になってしまって、運悪く手をついた場所にガラス瓶の破片が落ちてて…その…」
大体の経緯は理解した。抱き寄せられたですって!?なんて羨ま…じゃなくて、これは見過ごせないわね。
しかも抱き寄せられて突き飛ばしたですって!?
確かに可愛い顔してるけど、何をこの子は調子に乗ってるのかしら?
怒りが込み上げてくる。
それと湊、私が彼女を脅すと思って事実を言わないようにしたのね。
これは後でキツくお仕置きしないといけないわ。
「そう…大体理解したわ」
彼女が小さく息を吐く。
本当の事を言って少しスッキリした顔をしているが、何か勘違いをしているのではないかしら?
まさか、許されたとか思ってないわよね…。
物分かりの悪い子には、はっきり伝えてあげないと可哀想ね。
私は彼女に最初にして最後通告をする。
「もういいわよ、あなた。金輪際湊に近づかないことを条件に不問にしてあげるわ。話は終わったからもう帰っていいわよ。二度と会う事はないと思うけど、お元気で」
表情を消して冷たく言い放つ。
今までこの言い方で湊に近づく女の子を次々に駆逐してきた。
彼女もこれに懲りて二度と近づいてこないだろう。
さて、話も済んだので次は湊を問い詰めないと。
今度は私から色々お願いしようかしら?
絶対にノーは言わせないわ。
そんな事を考えていたら彼女が私に話しかけてきた。
「彼には恩があるので、怪我が治るまでサポートするつもりでいます。金輪際近づかないとかそんな約束は出来ません」
へぇ〜、ここまで言われて食い下がるんだ…。
よく見たら顔が引き攣ってるし、少し震えてるじゃない。
可愛い顔してる割に、意外に根性あるのかしら?
なら徹底的にやってあげる。
私は自然と、暗い笑みを浮かべた。
その顔を見た湊がドン引きしている事に気づきもせずに…。
音羽様は、湊の怪我<自分の欲求の様です。
いかに湊を追い詰めて自分が嬉しい展開に持っていけるかって事を日々考えてる女の子です。
心配してないわけではないないのですが…自分に正直な所が彼女の魅力です。
次の話ぐらいで、この怪我の件を終わらせて、新しい内容の書けたらいいなと思ってます。なかなか進まなくて…ご迷惑おかけしております。




