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Blue Ridge Saga —クリスタニアの過去  作者: おーがすてぃーぬ


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8/25

鳴らない長音ー振り返ればヤツがいる

クリスタニアは、静かに航路に乗りました。

ですが、すべてが順調というわけではありません。


海の上には、避けられない出会いもあります。


約二か月後、すべての準備が整い、ブルーリッジ・サガは「クリスタニア」としてニューヨークを出港することになった。


売却の話はすでに広まり、出港の日、埠頭には多くの人が詰めかけていた。新たな持ち主のもとへ旅立つ船を見届けようとする者たちで、岸壁は賑わいを見せている。


船内には、ハリスから贈られた白薔薇が静かに飾られていた。船旗と社旗、そして日本国旗が掲げられ、ゆるやかな風に揺れている。


やがてクリスタニアは、静かに岸壁を離れた。


こうして、数週間に及ぶ航海が始まる。



航海はおおむね順調だった。


各種データの取得、機器の調整、システムの確認。細かな作業は続いたが、大きな異常は見られない。クリスタニアは、リヒトの操作に対して驚くほど素直に応答していた。


その変化を、誰もが感じていた。



だが、ある日。


水平線の向こうに、大型船の姿が現れる。


DMCの船、プリズナー。


その船影を認めた瞬間、クリスタニアの挙動がわずかに変わった。


コンソールの反応が、ほんのわずかに重くなる。数値には現れないほどの差だが、確かに応答が鈍い。


リヒトはそれを感じ取り、思わず小さく笑った。


「お前もか」


低く呟く。


「ああ、俺も嫌いだ」



通常であれば、互いの安全な航海を祈り、汽笛で挨拶を交わす。


だが、その日は違った。


どちらの船も、何も鳴らさない。


無言のまま、ただすれ違う。




その沈黙を破ったのは、無線だった。


英語の通信が入る。


“BMM, unidentified vessel. This is the Imperial Rose, Prisoner. May your future be… tolerable.”


(BMM、名もなき船へ。こちらは帝国の薔薇プリズナーだ。貴船の未来が、せいぜい耐えられる程度のものであることを祈ろう。)


艦橋の空気が、わずかに張り詰める。



日向は視線を外さず、短く指示を出した。


「返せ」


その声に感情はない。


「楽しみにしていろ、と。薔薇の棘は、奥深くまで届くと伝えろ」




通信士が英語で応答する。


“We’ll be looking forward to it. The thorns of a rose… tend to reach deeper than expected.”


(楽しみにしていろ。薔薇の棘は、その奥深くまで届くものだ。)



返答はなかった。


プリズナーは速度を落とすこともなく、そのまま通り過ぎていく。




日向はしばらく動かなかった。


その横顔には、はっきりと敵意が浮かんでいた。



クリスタニアは、再び静かに応答を取り戻していた。


まるで何事もなかったかのように。



DMCと日向キャプテンの間にあるものは、まだはっきりとは見えていません。

ただ、無関係ではないことだけは確かです。


BMMとDMCの因縁も、少しずつ輪郭を持ち始めます。

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