重なりはじめる朝ーそれぞれの場所で
まだレジェンディアが現役だった頃、知らない間にそれぞれが近づいていました。
翌朝。
目を覚ました日向は、グラスに水を注ぎ、そのまま窓の外へ視線を向けた。朝の光に洗われたニューヨークの街は、昨夜とは別の顔を見せている。
ふと、ホテルの正面にあるカフェテラスに目が止まった。
リヒトがいる。
テーブルに腰掛け、コーヒーを手にしている姿は、それだけで人目を引くものだった。店員が笑顔で声をかけているのも無理はない。
日向は無言のままそれを見下ろし、わずかに眉を寄せる。
腕はいい。だが、と思う。
女が絡めば、ただの男に過ぎん。
心の中でそう切り捨て、グラスを口に運んだ。
そのとき、背中にやわらかな温もりを感じる。
振り向かずとも分かる。回された腕に、日向はそっと手を重ねた。
「起きたのか。もう少し休んでいてもよかった」
落ち着いた声だった。
「いつも……待たせてごめんなさい」
かすかに掠れた声が返る。
日向は目を閉じる。
「気にするな。君には責任がある。それを優先すればいい」
それ以上は何も言わなかった。
⸻
同じ頃、ニューヨーク支社ではクリスタニアの受け入れに向けた手続きが進んでいた。
「今日のレジェンディアの入港、変更はなさそうか」
「ないな。多少VIPが乗っているくらいだ」
「了解。じゃあ、この後はブランチにするか」
軽い調子のやり取りが続く。だが、その裏で動いている準備は着実だった。
⸻
ニューヨークへ向かう一隻の船。
レジェンディアは、静かな海を進んでいた。
海のようなネイビーの船体が朝の光を受けて輝いている。
そのデッキで、ひとりの女がコーヒーを手にしていた。潮風を受けながら、ゆったりとした時間を過ごしている。
やがて、部屋のドアが開き、男が姿を現した。
「ニューヨークに着いたら、どうされますか」
女は少し考えてから答える。
「ゆっくりしたいわ。少し疲れたみたい」
男は穏やかに頷く。
「まだ時間があります。もう少しお休みになっては」
「そうするわ」
女はそのまま男の肩に身体を預けた。
男は何も言わず、そのまま支える。
⸻
それぞれの場所で、別々の時間が流れている。
まだ交わることはない。
だが確実に、同じ方向へと進んでいた。
すべてが一つになるのは、もう少し先のことだった。
少し大人な恋の回でした。
レジェンディアの物語は
「レジェンディアより愛をこめて」でお読みいただけます。




