困ってしまってワンワンワワンー拗らせ夫婦の夜
葛城本部長が清香に内緒でしていたこととは
時は、日向キャプテンと社長の挙式前夜に巻き戻る。
妻清香に「帰ってくんな!」と言われた葛城本部長は、それでも妻会いたさに自宅へ帰った。
恐る恐る家の扉を開けると、妻の靴はあるが出てくる気配はない。
深々とため息をつき、どこかへメッセージを送り始める。
(時期を早めないといけませんねぇ。)
ふと、顔を上げると、清香が仁王立ちしていた。
ふわふわのバスローブに、濡れた髪を括っただけの誠に色っぽい姿ではあるが、その顔は不満一色だ。
「帰ってくんなって言ったでしょ。それに、なんなの?帰ってすぐ彼女にメッセージとか、すんごくムカつくんだけど。クソ亭主。さっさと愛人たちのとこ帰れば?!」
清香は葛城本部長のスーツの襟を引っ掴み、扉の外へ押し出そうとした。
どこにそんな力があるのか、妻の腕力はなかなかである。
「き、き、清香!聞いてください!これには事情があるんですっ!」
「どんな事情だってのよ!言葉じゃなくて行動で見せるから、僕と一緒に生きてくれって言ったのに!こんな行動見せられるくらいなら、他の男にすりゃよかったわ!!」
清香の腕を掴むと、葛城本部長は携帯の画像を見せた。
そこには、白を基調としたヴィラ風の一軒家がある。
清香はますます不機嫌になった。
「あたしが欲しいってずっと言ってた家じゃないの!!どういうつもり?!」
そこに、タイミング悪く一本の電話が入った。
画面には、『club Julia 百合子ママ』と表示されている。
清香は、脳内で何かが切れる音が聞こえた気がした。
そのまま、勢いよく葛城本部長の頬に強烈な平手打ちを喰らわせる。
「大っ嫌い!!」
勢いで壁にぶつかりそうになったまま、葛城本部長は電話を取った。
「…葛城です…」
『本部長はん、夜分にえろぅすんまへんなぁ。頼まれてた物件整いましたさかい、奥様とご覧になれへんかと思ぅたんやけど…もしもし…本部長はん?どないしはったの?』
葛城本部長は、崩れ落ちた。
部屋に閉じこもった清香は、大きな犬を抱っこしながら、言った。
「ゼフォン、お前のパパンはどーしようもないねー。こんなにママンは大好きなのに、パパンたら、女の人と遊んでばっかり。お前もフランスでママンと気ままに暮らそっか。」
犬は、大きな前足を清香の腕に乗せながら、ドアの方をチラチラと見ていた。
大きなグレートデン、ゼフォンは壁にかけられた写真を眺めながら、少し考えていた。
そして、思い立ったように飛び起きて階下に駆け出して行った。
「ゼフォン!!」
大きな体でドシドシと階段を駆け降りると、玄関で座り込んだ葛城本部長を見つけた。
そしてその巨体は、葛城本部長を吹き飛ばした。
ゼフォンは、おかえり!が言いたかっただけなのだが…
妻に張り手をかまされ、愛犬に吹き飛ばされた葛城本部長は泣きそうな顔でゼフォンに言った。
「ゼフォン!お前まで清香の味方なんですか!連れてってあげませんよ!新しいお家に!!」
ゼフォンは首を傾げながら、葛城本部長の顔をベロンと舐めてみた。
「新しいお家ってどういうことよ!!ゼフォンは私とパリにいくの!あんたと一緒に行かせないわよ!」
何だか雲行きが怪しくなってきた、と感じたゼフォンは、清香と葛城本部長の間をウロウロと歩いては鼻を鳴らす。
「僕は!!君にプレゼントしたくて、内緒で家を発注してたんです!こっちでは君の好きな家を建てられないから…。内装も全部、君の好きなものにしてあげたくて…。百合子ママのご主人はその手の会社経営されてましたし…。あちらに君の好きなブランドを扱う輸入会社もありましたし…。それで…」
いよいよ泣き出しそうな顔で、本部長は俯きながら言った。
ゼフォンは清香の足を、前脚でちょんちょんとつついた。
許してやりなよ、と言いたげに清香を見上げる。
「このクソ亭主。」
そう言って清香は再び部屋に閉じこもった。
困り果てたゼフォンは、思わず前脚で顔を覆った。
夫婦喧嘩は犬も食わない、と言うが、どうやら本当のようである。
どっちもどっちです。
ゼフォンのビジュアルは、ブログでどうぞー。




