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Blue Ridge Saga —クリスタニアの過去  作者: おーがすてぃーぬ


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4/27

最初の一致—その手に応えるもの

今回は、サガが初めて応えた回です。


壊れていたわけではなく、

ただ合っていなかっただけ。


そのことが、少しずつ見えてきます。


翌日。


ニューヨークには、綺麗な青空が広がっていた。昨日の荒天が嘘のように、空気は澄んでいる。


埠頭には、ハリス・ブライトマンとブルーリッジ・クルーズのクルー、エンジニア、航海士たちが集まっていた。


「富士崎社長、よく晴れましたね。サガの機嫌が良くなるといいのですが。」


ハリスが穏やかに言う。


「ええ。本当ですわね。」


富士崎は空を見上げ、静かに頷いた。


一行はそのまま船内へ案内される。ブリッジ班と機関班に分かれ、それぞれ説明が始まった。


やがて機関が始動し、低い振動が船体を伝って静かに広がっていく。


「いきます」


ブルーリッジ側の航海士が操船に入る。


次の瞬間、警告音が鳴り、表示が乱れた。


「またか……」


小さな声が漏れる。


リヒトが前に出た。

「代わってください」


一瞬の間のあと、誰もそれを止めなかった。


リヒトはコンソールに触れる。それだけだった。


警告音が止まる。表示が整う。


ブルーリッジクルーは、眉を顰めた。

「……何をしたんだ。」


「何も」


リヒトは前を見たまま答え、そのまま操船を続けた。船は、驚くほど滑らかに応答した。


「なるほど」


小さく呟く。


後ろでブルーリッジのクルーが吐き捨てる。

「ふざけた船だ。人を選ぶなんて」


日向が口を開いた。

「スタビライザーを操作してみろ。」


リヒトは頷き、操作に入る。


わずかに揺れた船体は、すぐに静まり返る。


「どうだ」


「繊細です」


リヒトは淡々と答える。


「加減を間違えれば、すぐに無駄になります。すべてが」


その場に沈黙が落ちた。


ハリスが静かに息を吐く。

「これは恐れ入った」


ブルーリッジのクルーが思わず呟く。

「……美しいな」


埠頭では、小さな男の子が動き出した船を指さしていた。

「ママ、見て!あの船、動いてるよ!」


母親は目を細める。

「ほんとね。嬉しそうに見えるわね」


男の子は嬉しそうに頷く。

「うん!」


母親は遠くの船を見つめたまま、静かに言った。

「きっと、やっと分かってくれる人に会えたのね」


船内では、富士崎と日向が並んでデッキに立っていた。


「日向キャプテン」


富士崎は外を見たまま言う。

「この船、日本までお願いね。その後シンガポールで改修を行うことにするわ。」


「承知しました。それから、報告がございます」


「聞くわ」


「昨日、この船に合う人間を見つけました。見ただけで癖も特徴も言い当てる元船乗りです」


富士崎は何も言わず、ただ聞いていた。


短い沈黙のあと、口を開く。


「あなたに任せます」


それだけだった。


「この船が就航するまで、指揮はあなたが取るのよ。」


日向はわずかに目を見開く。


「あちらに負けない艦隊を作りたいの…」


その声は、ほんの少しだけ震えていた。


日向は窓の外を見たまま言う。

「桜、大丈夫だ。」


わずかに声が柔らぐ。

「俺が君の夢を叶える。」


2人は一瞬互いの指を絡ませ、すぐに解いた。

ロビーに向かって歩き出す。


「それから、建造中の2隻についてですが、一隻は既に決めてあります。」


「船名ですか?」


「…ソブリンよ。」


「光栄です。全ては御心のままに。」


白い船は知っている。

女主人が船長に何を委ねているのかを。



この船は、誰にでも動かせるわけではありません。


けれど、一度合ってしまえば、

驚くほど素直になる。


船と航海士も、重なり合えば通じることがあるのです。

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