朝陽と白薔薇ー社長夫婦の朝
やっとこさっとこ当日に。
晴海の空が白み始めた頃。
クリスタニアは低速で晴海に向かっていた。
あくびをしながら、三井はぼやいた。
「なんか、早く帰りたいっすね。
父ちゃんのお菓子食べたいっす。」
それを聞いたルイは思い出したように言った。
「クリスタニアの運航が決まるまではお休みだろ?それならパーティーしよう!ヨータのお父さんに敵わないけどさ。どうだい?」
ブリッジのあちこちから、あれが食べたい!これがいい!と声が上がる。
「決まり!着岸して色々報告終わったら、本社のクルーラウンジ集合ね!」
クリスタニアがのんびりと航行していた頃、日向本邸は慌ただしかった。
衣紋かけにかけられた打ち掛けを見ながら、富士崎社長は髪をセットしていた。
ヘアメイクは、総務から言われた通り、美しく透明感のあるメイクと、ふんわりしたアップスタイルを作っていく。
髪飾りは大きな白薔薇と真珠がついたもの。
どれもこれも、見事な品だった。
「社長、この髪飾りはキャプテンにつけてもらってはどうですか?角隠しをつけるわけではありませんし、どうせならと思って。」
ヘアメイクの提案に、富士崎社長は恥ずかしそうに言った。
「何だか恥ずかしいわ。今更かもしれないけど…」
超大規模海運グループの社長とは思えないほど、可憐な微笑みだった。
ヘアメイクはそんな社長の様子を見て、思わず笑った。
「お支度の仕上げは大切な方から、って言いますし、キャプテンには社長からお扇子をお渡しすればお互いを仕上げることになりますよ。」
着付け師たちも頷いた。
「素敵なアイデアだと思いますよ!髪飾り、お渡ししてまいりますね!」
少しずつ空が明るくなる。
朝日が差し込む頃、ようやく支度は整った。
着付け師に案内され、広間の戸を開けた日向キャプテンは、思わず足を止めた。
(やはり綺麗だな…)
富士崎社長は、そんな日向キャプテンを見て微笑みながら声をかける。
「あなた、髪飾り挿してくださる?」
思い出したように、日向キャプテンは着付け師から白薔薇の髪飾りを受け取り、髪に挿した。
富士崎社長も、着付け師から扇子を受け取り、両手で日向キャプテンに手渡す。
「桜…綺麗だ。」
着付け師たちは満足そうに頷いた。
「お二人とも、大変にお似合いでございますよ。佳き日にお手伝いさせていただき、光栄でございます。」
ふと、ヘアメイクは時計を見た。
「そろそろお車が到着します。
お着替えは本社で出来るようにしておきますから、ご安心ください。」
その頃、寝惚け眼の神職は、総務部にせっつかされ、大急ぎで装束に着替えていた。
「毎回BMMさんは早いですなぁ。」
神社本殿には、社員たちが密かに用意したクリスタニアの大きなパネルがあった。
2人にとって娘みたいなもんだから、というのが理由である。
そして、本殿の扉と御簾が、ゆっくりと開かれた。
朝日がクリスタニアのパネルを静かに照らしていった。
サプライズ大作戦!
次回はいよいよ、クリスタニアが晴海に登場!
お楽しみに!




