巨大なお嬢様ー神戸はお祭り騒ぎ
きっとBGMは運動会
西陽がやけに眩しい神戸の夕暮れに、白く輝く船が姿を現した。
シンガポールでメンテナンスも行い、船体はとても美しい。
バースには、作業員たちがヘルメットを被って鼻息荒く待ち構えていた。
「来たぞ!準備しろ!」
フォークリフトが走り、作業員たちがダッシュを繰り返すうちに
クリスタニアはゆっくり着岸した。
ルイたちが細々と作業している中、巨大な白い花輪に青と白いのサテンの巨大なリボンがつけられていく。
未だかつて、こんなに爆速で作業が進んだことはない。
「いやぁ…BMMってすごいねー。何さ、この手慣れた感じ。」
ルイは、モニターチェックをしたまま停止した。
フレデリクも、プロテインを飲みながらその様子を見ていた。
「慣れてる…訳がないんだがな。結婚式場じゃあるまいし。」
当然である。
船のデコレーションといえば、花を飾るか万国旗をつける程度が普通だ。
船首からバルコニーまで飾りつけることは、まずない。
慣れているはずはないのだが、
驚く程の早さで、クリスタニアは美しく飾り立てられていく。
一方、船内のあちこちをクルーたちが駆け回っていた。
「デッキのリボンが足りない!あと5m出してー!」
クレーンが、巨大なバスケットに入ったリボンをデッキに運んでいく。
「万国旗、もう少しで終わるー!」
「社旗吊るしてみてー!」
その様子を、葛城本部長と陽司は見ていた。
「どうですか、陽司くん。」
眼鏡をクイっと持ち上げながら、葛城本部長は自慢げに行った。
「…あの花輪、いくらしたんですか…。」
「あれですか?バルコニーにつけた花と合わせると、まぁ新車一台分でしたかねぇ。」
「晴海に先着船がいましたし、協力お願いしたら、心強い協力を得られましたよ。自社船はフェリー一隻しかいませんでしたから、万国博つけるよう言っておきましたけど。」
「どこっすか?先着船。」
「プラチナムクルーズのプラチナムマゼンタと、エメルディアクルーズのエメルディアリリーです。」
「どっちもサイズ95000gt。本部長、なんかやったでしょ。」
「失敬な!我が社と友好関係がある船たちが、お祝いしてくれるだけですよ。」
見上げると、クリスタニアは巨大な花輪を船首につけ、ブルーと白の巨大なリボンを風に靡かせ、どこか自慢げに佇んでいる。
作業員たちは、クリスタニアを見上げると、口々に言った。
「いやー、すごいなー!さすがお嬢様!!」
「女王様だからなー。」
「あとは計画どおりだな!よし、すぐに晴海に戻るぞ!!」
「おっしゃ!!飯!!」
「そのまえに、花にカバーつけねぇと!」
嵐のように作業員たちがカバーをつけに去った後、天幕に隠されたクリスタニアは、屈強な警備たちに守られながら夜を待った。
その姿は、どこか嬉しそうにも見えた。
クリスタニアは船ですが、嬉しいものは嬉しいようです。




