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Blue Ridge Saga —クリスタニアの過去  作者: おーがすてぃーぬ


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24/30

海の上の大渋滞ー暴馬VS暴馬

車間距離は大事。というお話。

あ、船舶間距離ですね。

マニラを出て数日。


クリスタニアは、南シナ海の航路混雑に悩まされていた。


元々航行する船の数が多く、大型タンカーから小型船まで、大小様々な船が入り乱れている海域だ。


日本でいえば、首都高速のようなものである。


二等航海士の三井は、思わず声を上げる。


「あ”ーーー!何回来ても慣れないっすねー。この大渋滞!」


クリスタニアは速度を落とし、レーダー、AIS、そして目視による三重の監視を続けながら慎重に航行していた。


ルイは変わらず飄々とし、フレデリクは双眼鏡で周囲の船影を追う。


これだけ船がいれば、何かが起きてもおかしくない。


「……後続が近いわね」


レーダーを見たシンシアが呟いた。


「距離、およそ1海里。大型船よ」


「どこだ?」


栗栖がAISを確認する。


「本船後続、ブルーリッジ・キンチェム」


 


フレデリクはその名を聞いて、思わず笑った。

「キンチェムか……これまた気性難な……」


 

三井が首を傾げる。

「え、そうなんですか?名前で分かるんですか?」


「キンチェムというのは、かつて存在した名馬だ。野良犬に絡まれながら走り続け、最後には蹴り飛ばして振り切ったという、気の強い牝馬でな。それだけ、あっちの船も気性が荒いということだ。」


 

三井は少し考え、

「それ……どっちかというと……」


 

ブリッジの声が揃った。

「「「クリスタニアじゃん」」」


 

その直後だった。

コンソール越しに伝わる反応が、鈍くなる。

操船応答が重い。


「……あらら。機嫌、悪くなっちゃったみたいだね。」


ルイが小さく笑う。


「シンシア、少し代わろうか」


「了解」


ルイは操船を引き継ぎ、舵の応答を丁寧に合わせていく。


「栗栖、キンチェムに伝えてくれないか」


ウィンクしながら指示を伝える。


「クリスタニアは、かつてブルーリッジサガと呼ばれた船だ。忘れたとは言わせない、ってね」


「それ、完全に喧嘩売ってますやん」


「いいのいいの。ブルーリッジのクルーなら、サガの気性難を知らない者はいない。あちらも分かってて寄せてきてる」


「副長もなかなかやりますな」


栗栖は苦笑しながら無線を飛ばした。


“Blue Ridge Kinchem, this is BMM Cristania. The white horse once known as Blue Ridge Saga is in a rather poor mood. Request you increase distance.”

(ブルーリッジ・キンチェム、こちらBMMクリスタニア。かつてブルーリッジ・サガと呼ばれた白馬が機嫌を損ねている。距離を取られたし)


数秒の沈黙。


“…Saga? You’ve got to be kidding…”

(……サガだって?冗談だろ……)


レーダー上のキンチェムは、ゆっくりと距離を取り始めた。


「ほらね」


ルイが肩をすくめる。


「彼らにとってはトラウマだ。自分たちが扱いきれなかった船だからね」



三井が感心したように言う。


「そんなことまで分かるんすか?」


 


ルイは軽く顎を上げた。


「ヨータ。よく聞いてごらん」


 

外部スピーカーから、大きな警告音が鳴り響いていた。


「……警報っすか?」


「キンチェムだよ。」


ルイは即座に判断する。


「他船接近に対する警報が敏感なんだろう。鯨対策の延長かもしれないけど。」



周囲の混雑は、さらに密度を増していた。



見かねたコーストガードからも警告が飛ぶ。


『船舶間の距離に注意せよ。繰り返す、船舶間の距離に注意せよ』



三井はぽつりと呟いた。


「首都高走ってるパトカーも、こんな気分なんすね……」


 


南シナ海の航路混雑から、すぐに抜けられそうにはなかった。


ブリッジには、深いため息が静かに広がった。

船の警告音は、他船接近によるものもあれば、火気探知など様々ですが、実際に聞いていると、まぁかなり大きな音です。

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