表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Blue Ridge Saga —クリスタニアの過去  作者: おーがすてぃーぬ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/27

束の間の安息ー本社と子熊

平和なクリスタニアですが、ペルシャ湾近海は混沌の真っ只中。

クリスタニアは第二の寄港地マニラへ向けて順調に航行していた。海は穏やかで、風も弱く、波も低い。まるで何も起きていないかのようだった。


 


ブリッジには、ゆるやかな空気が流れている。


「クリスタニア〜、今日も素敵なレディだねぇ〜」


ルイは機嫌よく前方を眺めた。フレデリクはティーカップを片手に肩をすくめる。その大きな体に、カップはやけに小さく見えた。


「気性難とは思えないな。だが、怒ると怖い船だ」


ルイは軽く笑う。


「大したことないよ。……まあ、喜望峰に行ったら、さすがにすごいと思うけどね」


三井がすぐに食いつく。


「え、何がどうすごいんすか?」


ルイは振り返らずに答えた。


「クリスタニアは、多分――高波で飛ぶよ」


 


一瞬、空気が止まる。


「……は?」


 


ルイは楽しそうに笑った。


「まあ、楽しみにしてなって」


 


その言葉に、誰もすぐには返せなかった。


 


その頃、本社運航管理部は限界に近づいていた。紅海、ペルシャ湾、インド洋。次々と入る報告に、被弾した船、退避する船、動けない船が混在する。一隻一隻の状況を把握するだけで手一杯だった。


「リトルベアの位置は」


「変わらず。周囲はVLCCが退避航行中」


「……動けないか」


 


「早く帰港させるべきなのは分かるが、流れを読まなければ危険だ」


「このままにもしておけないだろう」


 


短い沈黙の後、指示が下る。


「状況を見ながら離脱しろと伝えろ。うまくいけばクリスタニアが拾う」


 


誰も反応しなかった。それがどれほど難しいことか分かっているからだ。


 


同じ頃、紅海。小さなバルクキャリアが一隻、取り残されていた。遠くで鈍い爆発音が響く。船体がわずかに震える。



“Little Bear, calling any vessel…”

(こちらリトルベア。どなたか応答願います……)


 


返事はない。


もう一度。


 


“This is BMM Little Bear… Is anyone there?”

(こちらBMMリトルベア……誰かいませんか……?)


 


ノイズだけが流れる。


 


“…Anyone…?”

(……誰も、いないの……?)


 


小さな子熊は、身動きが取れないまま、その場に留まっていた。誰にも届かない呼びかけを、繰り返しながら。


ひとりぼっちのバルクキャリアの声は誰かに届くのでしょうか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ