一等航海士見つかりました—ただし常務の夫です
大人の恋愛かと思いきや、BMM本社は運動会に。
クリスタニアが結局一番偉いBMMです。
それではどうぞ
リヒトがレジェンディアとの日々に戻って一年ほど。
その間に新造船ルナディアとロゼリアの建造と並行して、クリスタニアの改修も急ピッチで進められる。
スムーズには見えたが、本社では未曾有の人手不足に陥っていた。
ロゼリアとルナディアはともかく、クリスタニアは人を選び過ぎるため、乗せられるクルーが限られていたからだ。
社内の全てのクルーを集めても、クリスタニアが許したのは一等航海士を含めても三十人ほど。
試験航海のために必要な人数には程遠い。
本社は人材確保のため、各地を飛び回ることになった。
それなりに人は集まるものの、一等航海士だけが依然として足りない。
クルーズ部門は、運航管理部からもせっつかされ、頭を抱えていた。
「無理無理ー。DMCみたいに出来ないもん、無理だよー。」
「どっかに転がってないかなー、一等航海士ー。」
部下たちの悲鳴を聞きながら、エリコはため息をつく。
「泣き言言わないで!女王様が不機嫌になるわよ!」
分かっている。
だがどうにもならない。
各地に飛ぶ社員たちの報告は、どれも朗報には程遠かった。
エリコはパソコン画面を見るのをやめて、天を仰いだ。
そのときだった。
「エリコー!差し入れ持ってきたよ。皆おなか空いたでしょ。」
エリコの夫、ルイだった。
エリコは夫の顔をじっと見つめる。
「どうしたんだい?そんな難しい顔して」
「……いた!!」
「一等航海士見つけたわ!」
「ね、ルイ。あなたのライセンス、まだ切れてないわよね?」
「急になんだい?もちろんだよ。」
ルイは意味が分からずきょとんとしている。
エリコは駆け寄って夫の手を握った。
「ねぇ、クリスタニアに乗ってくれない?」
「とても気難しい女王様で、扱える一等航海士がいないの!お願い!あなたならきっと女王様が気にいるはずよ!」
妻の必死のお願いに、ルイはカラッと笑った。
「なぁんだ、そんなことか。」
「任せてよ。この世で一番気性難なのはノースレイジアのフェンリルだけさ。」
ルイはウィンクをして引き受けた。
その様子を見ていた社員の一人が、日向キャプテンの執務室へ駆け出す。
息を切らせて飛び込んできた社員に、日向は驚くが、
「どうしたんだ。運動会でもしてるのか?」
と尋ねる。
「ひ、日向キャプテン!一等航海士が見つかりました!!」
日向は椅子を蹴って立ち上がる。
「どこの誰だ?」
「じょ、常務のご主人ですっ!ライセンス期限も切れていませんし、エリコ常務の旦那様なので、ビザも問題ありませんっ!!」
「総務と運航管理に連絡しろ!」
「最速で手続きを済ませろとな。期限は一月だ!急げ!」
社員は息を整える間もなく駆け出す。
総務も運航管理部も、大慌てで動き出した。
もはや前時代のオフィスのように怒号が飛び、社員たちは駆けずり回る。
日向キャプテンは、ドックにいる社員に連絡を入れる。
「二ヶ月後に進水させる」
知らせを受けたドックは、飛び上がった。
何はともあれ進水させようと、すべてが早送りになったように駆け回る。
ルイは、あれよあれよという間にBMMの制服を着せられ、1ヶ月半後にはシンガポールへ飛ばされた。
BGMは運動会シリーズをオススメします。
後日、鬼のような日向キャプテンの采配で、超速でクリスタニア様が晴海にお出ましになります。




