マシュー3
朝方、運よく雨が降り始めた。そのおかげもあり、俺は無事に自陣まで帰ってくることが出来た。俺はすぐにリーダーの元を訪れて報告する。
「リーダー、報告します。魔族の武器庫と思しき建物内で奇妙な杖を発見しました」
「奇妙な杖だと?」
「はい。具体的には―――」
俺は長さや重さを、体感ではあるが正確に伝える。
「なるほどな。どうやってそんなに長い杖を作り出したかは知らないが、それで射程距離を伸ばしていたのか」
「恐らくはそうでしょう。さすがに組み込まれていた魔法陣までは分かりませんでしたが・・・」
「それで、その杖は破壊したのか?」
俺はそう言われて、破壊していないことに気づく。俺は何故敵の秘密兵器を破壊しなかったのか。持ち帰れないなら破壊する、当然の事だろう。ここにきて最大のポカをやらかしたことが分かったが、それを素直に言ったら殺されるかもしれん。
「近くに敵兵が居たため、魔法を使うことが出来ませんでした。情報を持ち帰るので精一杯でした」
「そうか・・・仕方が無いか。敵の秘密兵器の情報は重要だ。これで攻略することが出来れば、お前の階級もあがるかもしれんな」
「はい。それでは、失礼します」
俺は背中を大量に流れる冷や汗に気づかれないように、すぐにリーダーのテントから脱出した。
「マシューくん、無事でよかったです」
「エミリー先輩! はい、無事に帰ってきました」
「怪我はしていませんか? 怪我をしているなら、私が治しますよ」
「ありがとうございます、ですが怪我はしていません。先輩、俺、やりましたよ!」
「作戦成功ですね。マシューくんは勇敢ですね」
「ところで先輩、もし俺がこの件でランクが上がったら、俺と付き合ってください!」
俺は頭を下げてエミリー先輩に告白した。
「えっと、気持ちは嬉しいですが、従軍中に恋仲になるのは規律で禁止されていますよ?」
「だったら、この戦争が終わったら俺と付き合ってください!」
「・・・なぜ私の事を好きに?」
「一目ぼれです!」
「・・・私は敵兵に捕まり、口では言えないような拷問を受けています。そんな私を好きになれますか?」
エミリー先輩が敵に捕まって拷問を受けたことは初めて知った。けれど、それが分からないほどに先輩の体に傷は見当たらない。ヒーラーだから治したんだろうし、治ったなら気にならない。いや、そんな事を理由に嫌いにならない。
「はい、好きです」
「すみません、今すぐに返事をすることは難しいです」
「今すぐじゃなくて大丈夫です! いつまでも待ちますから」
「分かりました、ではしばらく考える時間をください」
「はい」
俺は内心、断られるかもしれないとドキドキしていたが、返事は保留だった。それはつまり、すぐに断られるほど嫌われていないということだ。まあ、すぐにOKを貰えるほど好かれてもいなかったということだが、それは想定内だ。だって、まだ会ってすぐだしな。
「濡れたままだと風邪をひきますよ。着替えてきたらどうでしょう?」
「はい、そうします」
病気はヒールでは治せないので、風邪をひくまえに着替えてこよう。俺はテントへと着替えに戻る事にした。




