マシュー
俺は自分のできる事をリーダーへと伝えた。そして、実際にやってみせる。
「なるほど。言うだけの事はあるな。足音や気配の消し方はうまい。恐らく、木の枝や草で音を立てることはないのだろうな。だが、今回は平野を突っ切ることになる。一応、陽動としてのパーティはいくつか用意するが、危険な事には変わりない。それでもやるんだな?」
「はい、やります」
「リーダー、私もついていっていいでしょうか?」
「お前は貴重なヒーラーだぞ。こんな死亡確率の高い任務に就かせるわけにはいかん。それに、お前は隠密行動ができるのか?」
「・・・できません。けれど、シールドで彼を守ったり、怪我をした時にヒールで治したりできます」
「見つかった時点で終わりだと思え。どうしても何か役に立ちたいのなら、囮の方でシールドを張る役をやれ」
「分かりました」
エミリー先輩が俺の事を心配してついて来ようとするなんて、それだけで俺の胸がドキンと跳ねる。この任務、絶対に成功させる。そしたら、俺の階級もあがって給金も増えるはずだ。できる男になってエミリー先輩を養える男に俺はなってやる!
数日間、作戦が練られた。決行は、特に夜間の視認性が悪くなる新月の日になった。囮になる部隊の動きや、俺がどこを見てこればいいのかの場所の確認が行われる。
兵器が隠されている一番疑わしい場所は、以前に大砲で破壊した建物の近くにある倉庫だそうだ。遠視で確認したところ、そこで複数の魔族が守っていることが分かっている。
その倉庫までの数百メートルは木も何もない平野がある。遠距離から魔法を撃っても届かない位置を確保した結果だからだろう。そして、魔族の魔法の方が俺たちの魔法の射程距離よりも長いため、真正面から近づくことは出来ない。
「よし、俺の準備も出来たぞ」
俺はその日のために草を表面に編み込んだ布を作った。動物相手に、自然に紛れ込むためにいろいろと装備を作ることがある。岩の多い場所なら茶色く塗った布を使ったり、草むらに隠れるなら緑色の布に本物の草をつけたりする。今回は、後者の布を用意したのだ。これは事前に作り置きすることが出来ない。新鮮な草をつけるために、俺は前日に作り上げたのだ。
「決行は午前2時。一番兵士が油断しているであろう時間帯だ」
「はい、準備は出来ています」
俺は緑の布をリーダーに見せる。リーダーは頷くと、テントへと戻っていった。今日は囮になる部隊は夕方には寝る事になっている。リーダーも夜間に起きる準備をしているのだ。俺も今のうちに寝て、0時には起きて配置につくことになる。




