エミリー6
結局、マークは昨日の戦闘が終わった後も帰ってこなかった。あの状況なら簡単に予想がつくことだったからか、思ったよりもすんなりと受け入れることが出来た。
私が見捨てた。私が弱かった。自分がヒールできる事にあぐらをかいていた。
戦闘終了時まで前線を見届けたリーダーからマークの未帰還を告げられた後もリーダーは言葉を探すように私の近くに居た。結局、お互い何も声を掛け合うこともなく別れた。そして今日、私はリーダーのテントへ訪れていた。パーティ人数が2人になってしまったので私達に突撃命令は出ない。新人でもいいから最低4人にならないと出動許可が下りないのだ。それが嫌ならば、他のパーティに編入されればいいのだが、吸収される形になるのはリーダーが拒んだ。
なので、補充があるまでしばらくは待機となる。リーダーはリーダー長としての仕事があるので暇ではないが、私は暇になる。
「リーダー、お願いがあります」
「・・・なんだ?」
「誰かシールドの使い方を教えてくれる人は居ませんか?」
「ヒーラーのお前がシールドを覚えてどうする。それよりも、怪我人の回復をして恩を売ってこい」
「私は他の人よりも魔力が多いと知っていますよね? そして私自身にヒールを使う許可も貰っています。でしたら、その分をシールドに使ってもいいですよね?」
「必要ない」
「必要です。もし私が的確にシールドを使うことが出来たならば、ヒールなんかよりも救う事が出来る人が増えます」
「・・・・・・・・・いいだろう。ただし、人数が揃って出撃許可が下りたらすぐに戻すぞ。―――引退が近いタンクが居る。そいつに教えて貰え」
「はい。ありがとうございます」
私はリーダーに教えて貰った人の所へ訪れた。その人は白髪が多く、もう年だということがわかる。年を取ると魔力が落ちる。だからこの人はもうすぐ魔法が使えなくなる年なのだろう。私はリーダーが書いてくれた紹介状を渡した。
「アランウォールの紹介で来ましたエミリーと申します。ルークリーダーでよろしいでしょうか?」
「ん? ああ、わしがルークだ。アランがわしに部下を寄越すなんてどういう風の吹き回しだ? あいつは昔、わしのパーティメンバーだったんだ。あいつはわしの事を嫌っていると思っていたんだがな」
「そうなのですか?」
「わしは部下に半端な事は教えん。完全にマスターするまで体に叩きこむ。それでもいいなら、教えてもいいが?」
「はい。よろしくお願いします」
ルークリーダーのパーティは、ほとんど防衛のために待機が多いらしい。恐らく、もういい年であるルークリーダーを前に出さないためだと思うけど、こうして兵士にシールドの使い方を教えることもするらしい。ただ、教わりに来る人はほぼいないと思う。
この人の訓練、普通の新人兵士だったら訓練なのに死ぬんじゃないかしら?




