マーク9
リーダーが雷槍、鉄壁が戦っている隙をついて、魔族のパーティが大砲へと突撃をかけはじめた。
「くそっ、お前たちは大砲を守れ!」
本来なら俺たちのパーティが大砲の正面を守る予定だったが、リーダーが敵の英雄と戦っている以上、そこが隙となっている。
「エミリー、マーク、お前たちもあっちで守れ!」
「り、了解です」
「はい」
リーダーの指示を受けて大砲の元へと駆けつける。大砲はすでに発射準備にかかっているので、途中で止めると魔力暴発の危険があるので中断できないらしい。
「エミリー、今は君を頼ることになるが、いいか?」
「分かっているわ。私がバレないように気を付けながら、マークがシールドを使ったように見せかけるわね」
これはエミリーと事前に打ち合わせしていたことだ。基本的にヒーラーは魔力を無駄に使わないようにシールドを使えない。けれど、ヒールの回数をごまかしているエミリーには魔力の余裕がある。なので、何かあった時には俺がシールドを使ったように見せかけてエミリーがシールドを張る事にしていたのだ。
「シールド!」
俺はエミリーに聞こえるように叫ぶ。それに合わせて、俺の前に大きめのシールドが現れた。
「シールド! シールド! シールド!」
俺は人族の限界までシールドを重ねる振りをする。これはシールド8回分の魔力を使っていることになる。なのに、正直防御力としてはギリギリ敵の炎弾1発で壊れない程度だ。2発目は耐えられるかどうか分からない。だから、普通はこんな弱いシールドなんて誰も使わない。
敵の炎弾がさっそく飛んできた。それを、シールドが弾く。シールドの耐久力はまだ余裕がありそうだ。
(おい、エミリー! お前、どれだけシールドを重ねたんだよ!)
(昨日と一緒よ? これなら壊れないでしょ?)
(壊れなかったら壊れなかったで、おかしいって思われるだろうが!)
(作戦が失敗するよりマシじゃない?)
俺は小声でエミリーに怒鳴るが、エミリーはすました顔でそんな返答をする。確かに、ここでシールドが破れれば大砲が壊され、作戦が失敗する。それに、シールドが壊れるということは俺の身も危ういということだ。
「大砲、準備完了!」
「よし、敵の密集地へ撃ち込め!」
「砲撃照準良し! ストーンブラストキャノン発射!」
俺のシールドが多くの敵の弾を防いだため、大砲の準備が整った。リーダーの指示の元、敵が比較的密集している場所へと魔法が撃ち込まれる。敵も慌ててシールドを張ったようだが、そんなものは無いかのように着弾したストーンブラストキャノンは敵をバラバラに吹き飛ばした。
「次弾を準備しますか?!」
「ああ、もう一度だ」
大砲に、再び工兵達が魔力を注ぎ込み始める。それを見て、敵の英雄たちが撤退を開始し始めた。
「おっ、逃げ出しやがった。大砲は準備が整い次第、適当に敵の建物を吹き飛ばしておけ。俺は敵を追撃する!」
「リ、リーダー! 俺たちはどうしますか!」
「そうだな・・・エミリーはついてこい。マークは、戦果を上げたいなら俺についてこい。それとも、もう魔力が尽きたか?」
「いえ、まだ大丈夫です!」
俺はシールドを張ったことにしたことを忘れ、反射的に今の魔力残量で答えてしまってから「しまった」と思った。
「じゃあ、ついてこい。うまくいけば敵の英雄を打ち取れるぞ!」
リーダーが走り出し、俺とエミリーもそれについていくしかないのだった。




