マーク8
俺は今日死ぬだろう。そんな気配をひしひしと感じる。
俺たちは、まだアースウォールが作られてない平原を、敵の陣地に向かって突撃中だ。
昨日の戦果を、今日も再び得ようとしたことによる突撃だ。リーダーの言うことも一理あるとは思っている。敵に時間を与えれば、それだけ大砲の価値が下がっていくのは分かるから。けど、自分が命を懸けてやりたいかと言わればNOだ。
俺は、国を守るためとかいう高尚な意思を持って兵士に志願したわけじゃない。単に、短期間でそれなりのお金を稼げるし、退役後も再就職に有利だと思っていたからだ。まさか、こんなにも命の危機を簡単に味わえる場所だなんて思っていなかった。
それでも俺は運がいいほうで、1年後の新人生存率がたった10%の中で生き残れている。なんだかんだ、うちのリーダーが優秀なのだ。それでもこのパーティで新人の生存率が低いのは、やはり本人の資質が低かったのだろうと思う。俺も平均くらいの能力だと思うけど、リーダーの意図をしっかりと組むことが出来れば生き残れるのだ。まあ、突飛な思考をしているリーダーの意図を読むのがクソ難しいんだが。
「ハッハァッ! 思った通り、敵が浮足立ってやがる! 攻め時だ!」
「ちょっ、リーダー! 突出しすぎですって! 他のパーティが遅れていますよ!」
「そんなの放っておけ! 俺たちで戦果を挙げるぞ!」
「・・・了解です」
了解したくないが、了解するしかない。突出している俺たちは、当然魔族側から攻撃される割合が増える。相変わらず化け物なリーダーは、敵の弾を剣で切り、シールドで逸らしている。本当に、なんで弾が見えるんだ? 俺は敵の弾が飛んできたと思った時にはすでに回避する暇すらないっていうのに。
リーダーは身体強化を使っている。そのせいで、普通の人よりも走るのが早く、恐らくあれでもかなり手加減して走っているんだろうけど、俺とエミリーの全速力に近い速度だ。
エミリーは、走りにくい地面に体重を支える程度の強度でシールドを張ってその上を走っている。勝手にシールドを使うのはまずいとは思うが、俺もエミリーが作ったシールドの上を走らせてもらっているので文句は言えない。こうしないと完全に置いていかれるからな。ここで置いていかれたら、それこそ死ぬだけだ。
リーダーにバレたら何を言われるか分からないが、前にしか意識が向いていないリーダーが気付く事は無いだろう。
「大砲部隊、敵が集中しているところへ撃ち込め!」
今回の作戦に当たり、砲撃指示はアラン城壁が受け持つことになっている。大砲の準備のため、リーダーは進軍速度を緩めた。そろそろ体力が限界だったから助かる。
「はぁっはぁっはぁっ、私、今、このパーティに、配属、してもらって、後悔、してるわ!」
「はぁっはぁっ、大丈夫か?」
「大丈夫、なわけっ、無いでしょ! 何、この進軍速度! 我慢できない、ヒール」
エミリーはリーダーにバレないように自分にヒールを使った。ヒールは傷を治すためにしか使えないと思っていたが、エミリーはヒールで自分の体力を回復できるみたいだ。
「ふぅ。これ、内緒よ? ちなみに、他人には使えないから君へは使えないけど」
「まあ、俺もシールドで楽させてもらっているから告げ口なんてしないけど」
大砲の準備が整う前に、雰囲気の違う敵が2人前に出てくるのが見えた。
「おっ、あれは敵の英雄だな。何回か見たことがあるぞ。雷槍と鉄壁だな」
英雄は人族だけの特権じゃない。当然、敵にもうちのリーダーみたいな英雄は何人も居る。ただ、人族よりも少ないのか、あまり見たことは無いが。
「雷槍と鉄壁・・・て、2人も英雄が?! こちらも支援を要請したほうがよろしいのでは!」
「まあ、今からじゃ間に合わんだろ。俺がやる。少し離れてろ」
英雄にはストーンバレットや炎弾は基本的には効かない。というか、そういうのに対処できる様でなくては英雄なんて呼ばれないのだ。実際、槍を持ってる魔族は普通にストーンバレットを槍で撃ち落としたり弾いたりしてるし、もう一人の方は特殊なシールドを使っているのか普通に効いてないな。
そんな2人に攻撃を加えるのは無駄だと理解したのか、攻撃が止む。必然、リーダーと魔族の2人が歩いて近づいていく特殊な舞台となった。




