エミリー3
「それでは、会議室の方へ移動しようか」
「分かりました」
私は、会議室へと連れていかれた。正直、完全にスパイとして尋問される可能性も考えていたから、捕縛すらされていないこの状況が良く分からない。
会議室へ着き、彼は向こう側の椅子へ座る。
「座り給え」
「はい」
「では、さっそくだが捕まった当日の事から話してもらおう。今まで魔族に捕まって帰ってきたものは皆無だ。正直、魔族についての情報は何でもいいから欲しい」
どうやら、スパイとして疑うよりも、少しでも魔族に対して戦争で有利になるような情報を望んでいるようだ。
「ああ、君が人族を裏切ったとは思っていない。もし裏切っていたのなら、あのような配属先を望む訳は無いからな」
知らずに、マークのパーティに配属申請したのが疑いが晴れる一役を買っていたらしい。
「では、正直に話します。私は自分の命惜しさに自決できず、敵に捕まりました。そして、魔族の休憩施設と思われる場所に連れていかれました。道中は目隠しされ、何かに乗せられて移動したため距離も場所も分かりませんが、今日の戦闘で破壊された施設です」
「捕まった理由と収監された場所は分かった。そこでは何があった?」
「私は拷問され、知っていることをすべて話させられました・・・すみません」
私は正直に敵に情報を渡したことを話す。ここで嘘をつく方が心証が悪くなると思ったから。
「なるほど。拷問の内容、話した内容について話してくれたまえ」
「はい、私は――――」
私は敵に何をされ、何を話したかを正直に話す。私の拷問の無いように、彼の表情が険しくなった。
「それでよく生きていられたな・・・。今まで、生きて帰ってきた者が居ない理由がわかったよ。敵にわたった情報だが、今となっては古い情報がほとんどだ。この基地の事が敵に渡っていない事が分かっただけでも十分だ」
「はい。もともとそれほど詳しいことを知っていなかった事が幸いでしたが、敵はさらに情報を得ようと私をひどく拷問したみたいです。もし、私がヒーラーじゃなかったら死んでいました」
「だろうな。それで、敵を回復させる事を条件に延命したのだったな。まあ、主に回復させたのが敵の新人ばかりだということだから、それほどこちらの被害状況は変わっていないだろう。それより、こちらに貴重なヒーラーが戻ってきたことの方がメリットだ」
私はあえて一日で何十人という敵兵を治したことは伝えなかった。そんな異常な事を信じてもらえるとは思えないし、実際にやらされるのも勘弁してほしいからだ。だから、彼の中では一日に数人の新人敵兵が復帰しただけだと思ってくれているはず。
「よし、十分だ。この情報を俺は上に伝えてくる。君は配属先へと行きたまへ」
「はい。失礼します」
私は会議室を出てマークの所へと向かう。
「あ・・・」
私は、魔族の言葉を話せるレベルで学習していることを伝えるのを忘れた。けど、伝えたら伝えたで再びスパイ容疑がかかりそうなので、このまま黙っていることにした。




