マーク7
俺はリサ先輩の遺体を遺族へ届ける手続きを終えた。その時に、俺の少ない給料も一緒に渡してもらうように依頼した。どうせ前線にいる間はお金は必要ない。娯楽や嗜好品は高くてどうせ俺の給料じゃ満足する事なんて出来ないからな。それなら、リサ先輩の心残りである家族に渡した方が、よっぽど有意義な使い方になるだろう。
さて、エミリーを探すか。その辺に隠れているはずだ。エミリーは俺たちが別れた場所の近くにある木の後ろで座っていた。
「用事は終わったの?」
「ああ。本当に助かったよ。リサ先輩を運んでこられたのも、俺が助かったのも全部エミリーのおかげだ」
「いいのよ、私にとっても得があった話だから気にしないで。それじゃあ、私を基地へ連れて行ってもらえる? タグも何も無いから、自分の身分証明できるものが無いのよ」
「分かった。俺が一緒に話をするよ」
タグというのは、俺たちの身分を証明するもので、名前とランクが明記されている。死亡時は、これを持ち帰って遺族に渡すことが多い。
俺はエミリーを連れて基地へと向かう。この基地は重要な施設のため、ボーダーのクラークさんが居る。本部と連絡が取れなくなったときに、前線を臨時に指揮するために配属されていたが、前線が崩壊してからは完全にこの人の指揮下で俺たちが運用されている。
指揮官となるクラーク国境は一番でかい建物に居る。当然、入るには身分証が必要だ。だが、今回はエミリーが居るからどうなるのやら。
俺たちは建物を警護している警備兵に敬礼すると、俺のタグを見せてから事情を話す。
「アレイのマークです。前線で敵に捕まっていた隊員を保護し、連れてきました」
「アレイのエミリーです。前線ではダニエルリーダーの元に居ました。兵士への復帰を願います。タグと兵服は敵に捕まった時に紛失しました」
「分かった。確認を取るから少し待て」
そう言うと、警備の人は中へと入っていった。しばらくすると、警備の人が戻ってきた。
「エミリーという兵が行方不明扱いとなっていることが確認できた。残念ながら、ダニエルのパーティは誰も生き残っているため確認できない。照合するために一緒に来てもらおうか」
「分かりました」
入り口で俺たちは簡単な身体検査を受ける。魔法が使えるので、どちらかと言えば何か怪しいものを持ち込まないかどうかの確認だろう。俺は普通の兵士が持っている様なものしか持ってないし、エミリーに至っては簡易な服だけだ。それもボロボロで下着が見えるくらいだし、何も持っていないだろう。
俺たちは一つの部屋へと案内される。ここに全兵士の登録が確認できる水晶がある。魔力の波形が登録されているとかで、基本的に成り済ますことは出来ない。できるとすれば双子か、極まれに似た波形の持ち主が居るくらいだろう。確率的には、なりすましはほぼありえないと言われている。
そこに兵の人事管理をしている隊員が居た。エミリーは、水晶へ魔力を流すと、その人は何かと照合しているようだ。
「確認が取れた。エミリーの兵への復帰を認める。この後、捕まっていた時の話を聞かせてもらうことになるが」
「分かりました、ありがとうございます。それでは、配置はどうなりますか?」
「君はヒーラーとして登録されている。望めばどこのパーティでも喜んで受け入れてくれるだろう。どこか希望はあるか?」
「それなら、マークのパーティへ参加したいのですが、よろしいでしょうか?」
エミリーがそう言うと、人事の人は俺に視線を向けた。
「マークというのは君だな。君の所属するパーティのリーダーは誰だ?」
「城壁のアランリーダーです」
「なんと・・・。本当に、そこを希望するのか?」
「? それは、どういう意味でしょうか」
「こう言っては何だが、アランリーダーのパーティの死亡率は明らかに他のパーティよりも高い。新人に至っては、配属から1か月生き延びられる者がほとんどいない。何より突撃が好きで、それにパーティメンバーが巻き込まれる形が多い」
「でも、今のパーティはヒーラーが不在なのですよね? 私は構いませんから、配属を希望します」
「ヒーラーが不在・・・そうなのか?」
「はい。今日の撤退時に、リナ先輩が戦死されました・・・」
「そうか・・・。ならば、どちらにしろアランリーダーからヒーラー配属の催促が来ることが予想できるな。分かった、君の望み通りアランリーダーの所への配属の申請を出しておく。明日から君はそこのパーティで活動しなさい」
「分かりました。ありがとうございます」
「それじゃあ、いなくなっていた期間に遭った出来事の報告をしてもらう。マークはパーティの元へ戻りなさい」
「分かりました」
俺もエミリーが心配なので一緒に居たかったが、戻れという命令を受けた以上、拒否することは出来ない。視線だけで「心配だ」と伝えると、エミリーは視線で「大丈夫よ」と返してきた。
明日になれば同じパーティのメンバーだ。とりあえず、今日はパーティの所へ戻る事にした。




