確かな成長
魔導具の上をイアの血がはい回り、イアの力を示してゆく。
そしてそれが進んでいくにつれてイアの表情は喜びに彩られ、職員の表情は険しくなっていった。
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イア・人種
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筋力・300(+100)
体力・400(+100)
魔力・750(+200)
精神力・750(+200)
<スキル>
「格闘術・Lv10(MAX)」 殴る・蹴るなどの格闘技術の才。関係する技能全般に補正効果(補正値増大)。
「暗殺術・Lv7」 不意打ちや暗器を用いた攻撃技術の才。関係する技能全般に補正効果。
「心身掌握(固有)」 自身の感情のコントロール、それに伴う身体能力のコントロールを可能とする。
「無我の境地(固有)」 極限状態に陥った際、全ての柵から解放され、真の力を発揮する。
<称号>
「運命の神・フォルトゥーナの代行者」 運命の神・フォルトゥーナの代行者である証。能力値に極大の補正を与え、フォルトゥーナと多少の対話が可能。
「???の血」 ???の血を摂取することによって力を得た状態。その血は様々な可能性を齎す。
「古龍の友」 古龍と信頼関係にある証。
「生還者」 絶望的状態から生還した。
「超克者」 様々な限界を超えた。
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そこに示されたのはまさに歴戦の戦士さえも凌駕しかねない驚異的な数字、文字の数々。
能力値は500を超えれば歴戦の戦士と同等以上ということになるのだが、体力、魔力、そして精神力に関してはそれを軽く超え、上限に近い数値をたたき出している。筋力も、500には至っていないが、400という、やはり成人仕立ての少女にしては異常な数値だ。
スキルとはその人物が秘めた才能を示すものであり、本来ならば増えるはずのないはずのそれは何故か2つも増え、うち1つは固有スキル。
格闘術に関してはLv、熟練度と言い換えるべきか。それは上限に至っている。
称号に関しては仰々しいものが増えている。
一番上の物に関しては「フォルトゥーナの関心」が「代行者」に変わっている。
また「???の血」‥‥‥‥‥おそらくセフィリアの血だろうが、それによって新たな称号が増え、その影響だろうか。「超克者」という称号まで得ている。「古龍の友」が指す古龍とは間違いなくニーヴィルのことだろう。
セフィリアと同等、とはいかないだろうが、それでも確実にその背に近づいていることは間違いない。
そしてセフィリアだけでなく、ゴスペルはじめとした仲間達もその結果をのぞき込み、驚きと祝福の声をあげた。
「おお、やったじゃないか! やっぱり運命の神とかいうやつに目をつけられているのか‥‥‥‥‥ けどそれ以外には何ら問題もない。 予定通りの成長スピードだな」
「ほう、こりゃ能力値で言えば俺も越えられちまってるかな。 かろうじて筋力は俺が上か? 道理で最近の訓練じゃ押されることが多くなるわけだ」
「めでたいなあ!! これならわしもイアちゃんの武器を本格的に仕上げても問題なさそうだな! 腕が鳴るぞ!」
「お~! これはちょっと予想外かも。 ま、でもまだ負けないけどね?」
「あら、流石イアちゃん。 フフフ、いよいよ私も負けてられないわね」
「流石神‥‥‥‥セフィリア殿の背を追うイア嬢だ! まさに俺の歌の主役にふさわしい!!」
その中に否定的な言葉や、負の感情はどこにもない。
まるで我が子の成長を喜ぶかのような温かい感情。それだけがイアを包んでいた。
が、その空間に他でもないギルド職員が割って入る。
「いやいやいやあのですね? なんでそんなに皆さん平然としてるんですか? 見たところまだ成人したてでしょう? 大体王都の学院の学生くらいの年代でこの能力値は異常ですからね? わかってます?」
その言葉に全員が一斉に首をかしげた。
「それの何が悪いんだ?」
「異常って‥‥‥‥ セフィリアさんに比べたら全然だし‥‥‥‥」
「まあ別におかしい事じゃないだろう。 毎日あれだけ訓練をしてればなぁ」
「だなあ。 それに早く強くなってもらわねばわしの武器は預けられんしな」
「良いと思うけどな? 強いことは別に悪い事じゃないし」
「そうね。 むしろ喜ぶべき事じゃない。 少なくとも私たちにとってみればそこまで気にすることではないわね。 驚きはするけど」
「そもそも元来英雄と呼ばれる者達は異端な力を持っていたのだ。 であればイア嬢が英雄に匹敵する存在である、そういうことだろう? 祝福すべき事じゃないか」
なにせ全員がイアの目標を知っているし、何よりイアがどんな毎日を送っているか知っている。
更にはセフィリア、カレラについてはイアを圧倒するだけの力を持つのだ。そもそもの基準が違うのである。
その反応に職員は嫌な予感でもしたのか頭を押さえながらも次をするように促した。
職員は魔道具の上に形作られた血文字を布でふき取ると台に置く。
次にそれに手を置いたのはゴスペルであった。
ゴスペルは鎧をまとっているのでその腕甲を外すとサリィに預け、針で血を流すとそれを押し当てた。
ゴスペルは冒険者としてではなくあくまで傭兵として活動をしていたため、”審査”を受けるのは何気に初めてである。
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ゴスペル・人種
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筋力・450(+150)
体力・300(+150)
魔力・200
精神力・400(+50)
<スキル>
「剣術(大剣)・Lv10(MAX)」 剣を扱う技術の才。関連する技能全般に補正効果(補正値極大)。
「戦いの心得・Lv10(MAX)」 戦闘技能全般における才能。 全能力に補正効果。
「不屈(固有)」 どんな苦難に襲われようと抗う心を宿す。精神力に補正効果。
<称号>
「熟練の兵」 幾度とない戦いを乗り越えた。
「善良なる者」 極度のお人よし。
「???の血」 ???の血を摂取することによって力を得た状態。その血は様々な可能性を齎す。
「生還者」 絶望的状態から生還した。
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ゴスペルの能力も筋力、体力の面で言えばかなりの物であった。
魔力、精神力ではイアに劣ってしまっているが、その2点に関しては未だイアは及ばないようだ。
そのことに他でもないゴスペル自身が驚く。
何せ自分は鍛えてこそいるが、まさかここまでの数値を示すとは思っていなかったのだ。
それに大きく関係するのがイアも持っていた称号、「???の血」。
これはセフィリアの血を得たことの証であり、ゴスペルはこれを失った腕を癒す為に使っている。
しかしその量はイアに比べればはるかに少ない。
それでもセフィリアのその血は本来であればそれ以上の成長はないはずのゴスペルの能力の限界を引き上げたのだ。
そんな事とは知らず、ゴスペルはセフィリアとイアの旅に加わり、自身の訓練だけでなくイアの模擬戦の相手も務めるようになった。その結果がこれである。
これに喜んだのはサリィだ。
「凄いよゴスペル! それでこそ私の愛する人!!」
「馬鹿!! 人前でそういう事を言うんじゃないってあれほど‥‥‥‥‥」
「いいでしょ? だって嬉しかったんだもん!」
相変わらずの溺愛っぷりに仲間たちは相変わらずだなあと呆れた表情を浮かべ、職員は親の仇でも見るような目で2人を睨みつけた。きっと独身なのだろう。ご愁傷様である。
職員は荒々しく魔道具の血文字をぬぐい取るとドンッ、とわざとらしく音を立てて机の上にそれを置いた。
「お、つ、ぎ、の、か、た、ど、う、ぞ!?」
その声にゴスペルはサリィを何とか引きはがすと「とりあえず落ち着け」と言い、預けていた手甲をはめるとそそくさと後ろに下がった。
サリィはそのことに若干むっとしながらも、仕方がないと自身の歯で指に傷をつけ、血を魔道具に垂らした。
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サリィ・獣人(黒狼)
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筋力・400(+100)
体力・400(+100)
魔力・200
精神力・400(+100)
(スキル・闘争本能発動時、筋力×2)
<スキル>
「剣術(刀)・Lv10(MAX)」 剣を扱う技術の才。関連する技能全般に補正効果。
「闘争本能(固有)」 獣の本能。興奮状態に陥った時、筋力に極大の補正効果。
「黒狼の目(固有)」 黒狼一族たる証。僅かな挙動をもとらえ、本能的に敵の行動を先読みする。
<称号>
「剣姫」 卓越した剣の腕を持つ女性であることの証。
「愛を捧げる者」 心より慕う相手がいることの証。
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獣人であるサリィの能力だが、これもなかなかのものだ。
平常時こそゴスペルとイアの中間をとったようなステータスだが、補正、そして何より固有スキル「闘争本能」が発動したときの筋力値はゆうに2人を超えている。
最もこのパーティーには全能力999オーバーの化け物がいるので、上には上がいるのだが。
初めてセフィリアとイアが出会った時、勘違いをしたサリィが鎧をまとったままのゴスペルを片手で引きずるなんてことができたのはこのスキルのおかげである。
浮気と早とちりしたサリィが怒る、つまり興奮状態に陥り、このスキルが発動。2倍になった筋力をもってゴスペルを連行した、という流れだ。
称号についてはイアやサリィ程ではないが、目を引くのは剣姫という称号だ。
卓越した剣の腕とあるが、これは刀で魔物を一刀両断するほどの腕があるサリィだからこその称号である。
初めて見るサリィの具体的な能力値に、冒険者時代のサリィを知るゴスペルとオーギュストを除くほぼ全員が驚きをあらわにする。
「へえ、なかなかだな。 筋力ではトップクラスか」
「むう、ゴスペルさんもサリィさんもまだまだ超えられないか‥‥‥‥‥ でもすぐに超えて見せる」
「獣人って本当に身体能力が高いわよね。 この「黒狼の目」、疑似的な未来予測ができるなんて驚きだわ」
そしてその次はオーギュストだ。
オーギュストは鍛冶師ということもあり手の皮が非常に厚い。
その為針では傷つけられそうになかったので、ゴスペルに魔剣の先で少し傷をつけてもらい、その血を魔道具に垂らした。
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オーギュスト・ドワーフ
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筋力・300(+150)
体力・300
魔力・100(+50)
精神力・200(+100)
<スキル>
「槌術・Lv8」 槌、大槌などを扱う才。 関連する能力全てに補正効果。
「鍛冶術・Lv10(MAX)」 鍛冶の才。 関連する能力全般に補正効果。 更に熱に対する耐性を持つ。
「魔力操作・Lv1」 魔力を操る才。 魔力に補正効果。
「特製付与(固有)」 魔力を用いることで製作途中の物品に魔法的効果を付与することができる。
<称号>
「至高を追い求める者」 至高を追い求め続け、そこへ至らんとする者の証。
「魔剣の製作者」 過去に魔剣を打ったことがあることの証明。
「酒豪」 酒をこよなく愛する者。 酔いに耐性がつく。
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基本的に戦わずに鍛冶に励むオーギュストはスキルも戦闘に向いた物よりも鍛冶に向いた物の方が多い。
「鍛冶術」などその最たる例だ。
そして称号はオーギュストがいかに鍛冶に人生を捧げているかが分かる物だ。
1つは完全に趣味によるものだったが。
しかしそれでも何度も鎚を振るってきた中で鍛えられた筋力は申し分ないものだ。
と、ここで職員の方が折れた。
深い、それはもう深いため息をつくと魔道具を治し、次にと控えていたリカンを必要ないと制したのだ。
「はあ。 貴方たちがどれだけぶっ飛んだ集団なのかはもう十分にわかりましたから、もういいです。 というか、これだけの実力者が4人もいるんですから仮に残りの3人が戦えなくとも庇いながら進むことは可能でしょう」
職員の言葉には酷い疲労の色が滲んでいた。
しかし手はちゃんと動いており、一行が迷宮へと向かうために必要な書類をすらすらとまとめていく。
その速さは目を疑うほどだ。なにせセフィリアですら少し目を見開いたくらいなのだから。
「はい、こちらが許可証になります。 これを迷宮の入口にいる番人に見せてから、ギルドカードを渡してください。 そうすれば魔道具で迷宮を訪れたということがギルドカードに記録されます。 そして迷宮探索は必ず1週間以内で切り上げるように。 でなければ死んだものとして扱われ、ギルドカードはその効力を失います。 この場合、再発行をする必要があるのでご注意を。 結構高いですよ? ‥‥‥‥ふう。 説明は以上です。 説明はないですね? ないですね。 では、お気をつけて~」
一息に全ての説明を済ませると、職員はすることはすんだとギルドカードより少し大きいくらいの金属質の板、許可証をセフィリアに渡すとひらひらと手を振ってそのまま机に突っ伏してしまった。
どうやら限界が来てしまったらしい。
セフィリアは受け取った許可証を眺める。
そこには確かに『試練の迷宮・許可証』と文字が刻まれていた。
そしてセフィリアは振り返り、仲間たちの顔を見やる。
その表情はどれもやる気に満ちていた。
「じゃあ早速向かうか。 試練の迷宮に」
いよいよ迷宮攻略の開始である。




