剣聖
「そこまでだよ」
またの名を『銀色』ともいう、剣聖シリウス・プロキオスが俺の目の前に立っていた。
「遅れてすまない。このポーションをあそこの2人にかけてから、すぐにここから離れてくれ。足手まといはいらない」
「……はい」
足手まといだとはっきりと言われる。事実だけれど多少心に刺さる。
剣聖は悪魔の方を向き、剣を構える。
先程いきなり登場したように見えるほどの速い動き、立っているだけで伝わってくる戦闘力に悪魔も気が付いたのだろう。
「大変お強い方と見ました。私はギルバルド、魔王様に仕える四天王第一席アルケール様の右腕でございます。貴女はどちら様でしょうか」
「名乗るほどの名はない。お前を倒すだけだ」
剣聖の返答は素っ気ないが、そんなことを気にしている場合ではない。急いでユーリとルトにポーションをかける。あっという間に傷が癒えていく。
俺たちがここから離れていないうちに、もう闘いが始まってしまう。
「ふむ、残念ですね……『サタンの鉤爪』」
手から50センチほどの爪を生やした悪魔が剣聖に飛びかかる。
「……『極光 破壊と再生』」
剣聖の究極の斬撃が放たれる。あたりが白い光で包まれた。眩しすぎて目を閉じてしまう。
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目を開けると、悪魔がいた場所には黒い炭のようなものしか残っていなかった。そして、村の建物が全て元通りになっており、母さんの死体も綺麗にどこかに行っていた。
「『破壊と再生』で悪魔たちを殺しつつ、この村の時間を巻き戻した。先ほどまで死んでいた者たちは、時間を巻き戻したため蘇った。まあ死んだという記憶はもう無いけれども」
「ありがとう……ございます」
母さんたちは生き返ったらしい。それは嬉しいのだけど、自分の無力さに改めて気付かされたような気がしてとてもやるせない。
「……強くなりたい……もっと……」
「それなら、冒険者じゃなくて傭兵にでもなったらいいんじゃない?」
剣聖が話しかけてくる。
「何が違うんですか?」
「冒険者は魔物専門だからなかなか強くなれない。今回みたいな魔物とはそう滅多に戦えない。
傭兵になれば、こういう強さの人間と闘う機会が増えるからね」
「なるほど……」
傭兵というものを初めて知った。
「ただ、人殺しが苦手な人が君の仲間にいるのならやめた方が絶対にいい。盗賊なんかを切り捨てる機会はとても多くなるからね」
人殺し、か。正直抵抗はない。あとは2人がどう思うかによって、傭兵になるか冒険者のままかを選ぼうと思う。




