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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
第二部 迷宮エア編 一層

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第97話「新調した得物、待っていた対」

マランの世界、毎日投稿中です。

ストックが少なくなってきたので

当面、3話投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

フォージタウンの槌の音は、今日も変わらず、通りに響いていた。


「装備、一新か」


ブロムが、ミラの姿を、上から下まで、見回す。


「前衛に、立つことになったので」


ミラが、静かに、答えた。


「僧侶の胸当てじゃ、心もとないな、確かに」


---


「胸当てと、フレイル。売れますか」


ダダが、荷物から、二つを、取り出しながら、聞く。


「フレイル、まだ、十分使えるやつだな」


ブロムが、柄を、確かめながら、言う。


「使えるけど、もう、私の型には、合わない」


ミラが、静かに、答えた。


「もったいない、気もするけど」


ネリスが、フレイルを、覗き込む。


「うん。名残惜しくは、ある」


ミラが、フレイルの、鎖の部分を、そっと、撫でる。


「でも、これからは、これじゃない」


その声には、迷いより、区切りをつける、静かな決意が、あった。


---


「で、得物の方は、どうする」


ブロムが、聞く。


「短剣一本で、前衛は、ちょっと、厳しいでしょうか」


ミラが、聞く。


「厳しいな、正直」


ブロムが、はっきりと、答えた。


「間合いが、短すぎる。前に立つなら、相応の得物と、盾がいる」


---


「盾……」


ミラが、少し、考え込む。


「両手剣にしないなら、盾は、必須だ。片手で受けられないと、前は、務まらん」


ブロムが、棚から、何振りか、抜き出してくる。


「これなら、どうだ」


ロングソードを、一振り、差し出した。


---


「握ってみろ」


ミラが、柄を、握る。


短剣より、明らかに、長く、重い。


「重い、けど……振れる」


一度、素振りをしてみせる。


風を切る音が、これまでとは、違う響きを、持っていた。


---


「間合いも、取れるし、盾との相性も、いい」


ブロムが、続けて、小ぶりな、丸盾を、差し出す。


「これくらいの、大きさなら」


ミラが、腕に、通してみる。


「動きは、殺されない」


「軽装の鎧と、組み合わせれば、動きやすさと、粘りの、両方が、取れるはずだ」


---


「短剣は、どうする」


ダダが、聞く。


「これは……」


ミラが、腰の聖アリアの剣を、そっと、見下ろす。


「手放したくは、ない。お守り代わりに、腰に、下げておく」


「主力は、ロングソードと、丸盾。短剣は、いざという時の、二の矢、ってことか」


カインが、確かめるように、言った。


「うん。それが、しっくりくる」


ミラが、頷いた。


---


「値、つけとくぞ。悪くない金額に、なるはずだ」


ブロムが、胸当てとフレイルを、まとめて、台の奥に、しまう。


「その分、防具に、回してください」


ダダが、静かに、言う。


「もとより、そのつもりだ」


ブロムが、笑った。


---


しばらくして、装備一式が、整った。


軽装の鎧に、ロングソードと、小さな丸盾。


腰には、聖アリアの剣が、静かに、下げられている。


「似合ってるでござるよ」


外で待っていたワングが、静かに、言う。


「うん。前衛っぽく、なった」


ネリスも、頷いた。


「まだ、慣れないけど」


ミラが、盾の位置を、何度か、調整しながら、答えた。


---


その足で、六人は、ヘクサインへ、向かった。


「今日、これから、どうする」


カインが、皆を、見回す。


「エア、行くには、ちょっと」


ダダが、慎重に、言う。


「ミラのレベル、9まで、下がったばかりだしな」


「うん。今の、私には、まだ、荷が重いと、思う」


ミラが、正直に、答えた。


---


「じゃあ、今日は」


カインが、少し、考える。


「ノアの、九層で、試そう。慣らしも、兼ねて」


「賛成」


ダダが、頷いた。


「拙者も、同意でござる」


ワングも、続いた。


---


翌日、六人は、慣れた足取りで、ノアの九層へと、潜っていった。


「今日は、ミラの、お披露目でござるな」


ワングが、軽く、言う。


「お披露目って、緊張するからやめて」


ミラが、苦笑した。


盾を、腕に、しっかりと、通し直す。


---


しばらく進むと、鎧のような外殻を持つ魔物の群れが、通路の先に、現れた。


「型、いつも通りで。ミラも、様子見ながらで、いい」


カインが、告げる。


「うん」


ミラが、ロングソードを、静かに、構えた。


---


「ダダ、前へ!」


「了解!」


ダダが、盾を、構え、ウォーハンマーを、握り直しながら、踏み込む。


敵の攻撃を、進んで、盾で、受け止める。


「私も、行く」


ミラが、盾を、斜めに、構えながら、その隣に、並んだ。


---


迫る一撃を、丸盾で、軽く、いなす。


受け止めるのではなく、力を、逃がすように。


その隙に、ロングソードが、外殻の隙間へ、正確に、振り下ろされた。


「決まった……!」


ネリスが、思わず、声を、上げた。


一撃で、一体が、崩れ落ちる。


---


「ミラ、攻撃、鋭くなってるでござるな」


ワングが、攻撃を、刀の側面で、受け流しながら、言う。


「自分でも、驚いてる」


ミラが、答える。


「カインより、手数、出てる、かもしれない」


ダダが、盾で、群れの正面を、一手に、引き受けながら、言った。


---


「否定、できない……!」


カインが、後方から、苦笑しながら、剣を、構え直す。


「連携、崩さないでね」


ミラが、横からの一撃を、盾で、そっと、逸らしながら、答えた。


---


ダダが、盾で、敵の攻撃を、一身に、受け続ける。


その陰で、ワングの刀と、ミラのロングソードが、攻撃を、いなしながら、鋭く、切り込む。


受けるダダと、流して斬り込む、ワング・ミラ。


役割の違う三人の動きが、まるで、以前からの型のように、噛み合っていた。


---


「残りは、任せて」


ノリアが、杖を、構える。


「業火弾」


放たれた炎が、群れの残りを、一気に、飲み込んだ。


---


「終わった」


カインが、剣を、下ろす。


「今日、進み、早いな」


ダダが、周囲を、見回しながら、言った。


「ミラが、前に出るだけで、こんなに、変わるんでござるな」


ワングが、感心したように、言う。


「攻撃、全部、俺が、受けるから。二人は、自由に、動いてくれ」


ダダが、静かに、言った。


「前と、後ろ、両方、経験してるから、かな」


ミラが、ロングソードを、下ろしながら、答える。


「どこが、手薄になるか、わかる、気がする」


---


前衛の連携と、ノリアの魔法が噛み合い、九層は、これまでにない速さで、進んでいった。


「これまでの、倍くらいの、速さでござるな」


ワングが、感心したように、言う。


「装備、変わっただけで、こんなに違うんだ」


ネリスも、驚いたように、続けた。


途中、いくつかの、小さな木箱も、姿を、見せた。


「今日は、拾い物、多いでござるな」


ワングが、荷袋を、確かめながら、言う。


「悪くない、流れ」


ミラが、静かに、頷いた。


---


やがて、奥の広間で、これまでにない、巨大な影が、姿を、現した。


古びた鎧を纏った、大柄な魔獣だった。


「九層の、主格でござるな、恐らく」


ワングが、刀を、構え直す。


「デカいな……」


ダダが、盾を、握り直す。


「型、崩さず、いこう。落ち着いて」


カインが、告げた。


「うん」


ミラが、盾とロングソードを、両方、構え直す。


初めての、大型戦。


その緊張が、わずかに、肩に、滲んでいた。


---


ダダが、盾を構え、正面から、攻撃を、真っ向、受け止める。


「重い、けど……俺が、支える!」


その陰から、ワングとミラが、左右へ、散る。


ミラは、振り下ろされた爪を、盾で、いなしながら、間合いを、詰めた。


ノリアの炎が、頭上から、降り注ぐ。


---


「ここ!」


ミラが、隙間を、正確に、狙う。


鎧の継ぎ目に、ロングソードが、深々と、突き刺さった。


巨体が、大きく、揺らいだ。


---


「今!」


カインの号令に、六人の攻撃が、一斉に、集まる。


崩れ落ちた巨体が、静かに、光の粒へと、変わっていった。


---


「終わった……」


ダダが、盾を、下ろしながら、息を、吐く。


「今日一番の、大物でござったな」


ワングが、静かに、言った。


---


崩れた跡に、大きめの、宝箱が一つ、現れる。


「開けよう」


カインが、蓋に、手をかけた。


---


中に、収まっていたのは、一振りの剣だった。


鞘の意匠が、ミラの腰の、聖アリアの剣と、どこか、よく似ていた。


「これ……」


ミラが、思わず、息を、呑む。


---


「聖アリアの剣と、対に、なってる気がする」


ネリスが、覗き込みながら、言う。


「柄の形、鞘の飾り、確かに、揃いでござるな」


ワングが、頷いた。


---


「対の剣……」


ミラが、剣を、そっと、手に取る。


短剣と、並べてみると、明らかに、同じ作り手のものだと、わかった。


「誰の、ものだったんだろう」


ノリアが、静かに、呟く。


「アプレイザルで、確かめよう」


カインが、皆を、見回しながら、言った。


「賛成」


六人の声が、揃った。


---


短剣と、対の剣。


その意味を、六人は、まだ、掴めていなかった。


「アリアさんに、対の武器が、あった、ってことなのかな」


ノリアが、歩きながら、静かに、言う。


「あるいは、別の誰かの、ものかもしれぬでござるな」


ワングが、答える。


「わからないことは、また、一つ増えたな」


カインが、苦笑した。


「増える一方だけど」


ミラが、二振りを、大事そうに、抱え直す。


「悪い増え方じゃ、ない」


篝火の灯る道を、六人は、揃って、戻り始めた。


新しい得物の重みが、それぞれの手に、まだ、馴染みきらないまま、残っていた。


いかがでしょうか?


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