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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
第二部 迷宮エア編 一層

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第98話「差を埋める賭け、二人だけの潜行」

マランの世界、毎日投稿中です。

ストックが少なくなってきたので

当面、3話投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

「こちらの剣ですが」


鑑定士が、記録紙を、静かに、めくる。


「聖アリアの剣と、同じ、鍛冶の跡が、認められました。恐らく、対になる一振りだと、思います」


「やっぱり……」


ミラが、二振りを、そっと、並べる。


「アリアさん、剣を、二振り、使っていたんでしょうか」


「そこまでは、記録にありません。ただ、対の得物、というのは、珍しい話ではないので」


鑑定士が、静かに、答えた。


---


窓口を出て、六人は、通りを、歩き始めた。


「今日も、収穫、多かったな」


カインが、皆を、見回しながら、言う。


「多かった」


ダダが、頷く。


その輪の中で、ミラだけが、少し、後ろを、歩いていた。


---


その夜、ミラは、一人、考え込んでいた。


レベル9。


他のメンバーは、皆、十五を、大きく超えている。


「このままじゃ、足を、引っ張ってしまう」


その事実が、静かに、重く、のしかかっていた。


宿の天井を、見つめながら、ミラは、これまでのことを、思い返す。


前衛としての、初戦。


たしかに、手応えは、あった。


だが、それは、今のレベルの、上限ぎりぎりの、頑張りに、過ぎない。


「もっと、確実な、方法が、いる」


ミラは、静かに、体を、起こした。


以前、九層で、大量の敵を、まとめて、片づけたことがあった。


あの時の、経験値の伸び方は、普段とは、まるで、違っていた。


「あれを、もう一度、やれないだろうか」


そう思いついた瞬間、頭の中に、一つの、名前が、浮かんだ。


---


翌日、ミラは、ノリアに、声を、かけた。


「相談したいこと、あるんだけど」


「私に?」


ノリアが、少し、驚いたように、聞き返す。


「うん。二人だけで、聞いてほしい」


---


「私、レベル、他のみんなと、差がありすぎる」


ミラが、率直に、切り出す。


「うん……そうだね」


ノリアが、静かに、頷いた。


「その差、少しでも、早く、埋めたい」


「埋める、って、どうやって」


---


「協力、してほしいの」


ミラが、続ける。


「ノリアと、二人で、九層に、潜りたい」


「二人だけで?」


ノリアが、目を、見開いた。


「うん。ノーマルデーモン相手なら、いけると思う」


---


「ノーマルデーモン……前に、静黙、効かなかった、あの敵?」


ノリアが、聞く。


「いや、効かなかったのは格上の個体。ノーマルの方は、まだ、試してない」


ミラが、答える。


「今のノリアの魔力なら、通ると思う」


---


「私の、魔力……」


ノリアが、自分の両手を、見つめる。


「魔道師になって、確かめてないだけで、可能性は、あると思う」


ミラが、静かに、続けた。


---


「静黙が、通れば、ノーマルデーモンの動きは、大きく、抑え込める」


ミラが、続ける。


「そこから、ノリアには、遠隔の呪文で、数を、減らしてほしい」


「数を……」


ノリアが、聞き返す。


---


「六体、出るとして。四体を、ノリアの魔法で。残り二体になったところで」


ミラが、続ける。


「そこで、離れて、待っていてほしい」


「離れて、待つ、って?」


ノリアが、聞き返す。


---


「経験値は、戦いが終わるまでその場にいないと、もらえない。かといって、二体相手に、二人で無理に深追いする必要も、ない」


ミラが、静かに、説明する。


「近くの、前の間まで、下がって。私が、片づけ終わるのを、待っていてほしい」


---


「前の間、なら」


ノリアが、確かめる。


「敵の気配、届かない場所だから、安全は、安全。ただ」


ミラが、少し、言いにくそうに、続ける。


「残り二体を、片づけるのは、私一人。ノリアには、そこから先、見ていてもらうだけになる」


---


「見てるだけ、なんて、落ち着かないけど」


ノリアが、正直に、言う。


「うん。それでも、頼みたい。ノリアの魔法で、数を減らしてもらえるだけで、私一人の負担は、全然、違う」


ミラが、頭を、下げた。


---


ノリアは、しばらく、黙っていた。


「わかった」


「いいの?」


ミラが、顔を、上げる。


「ミラが、そこまで、真剣に、考えてるなら」


ノリアが、静かに、微笑んだ。


「自分の稼ぎより、大事なことがある。それくらい、わかるつもり」


「でも、無茶は、しないでね」


ノリアが、少し、真剣な、顔になる。


「限界まで、って言っても、限界の、その先まで、頑張らないこと」


「約束する」


ミラが、静かに、頷いた。


「危なくなったら、すぐ、戻ってくる。それだけは、守る」


「うん。それなら」


ノリアが、ようやく、表情を、緩めた。


---


「ありがとう」


ミラが、静かに、頷いた。


「他のみんなには」


ノリアが、聞く。


「今回だけは、黙って、いさせて。心配、かけたくないから」


「うん。二人の、秘密」


ノリアが、頷いた。


---


翌日、二人だけで、ノアの九層へと、潜っていく。


「緊張する、二人だけって」


ノリアが、周囲を、確かめながら、言う。


「私も。でも、今日だけは、やり切りたい」


ミラが、答えた。


---


慎重に、階段を、降りていく。


九層特有の、重い気配が、二人を、包んでいた。


「みんなと、来た時とは、違う、緊張感だね」


ノリアが、小さく、呟く。


「うん。守ってくれる人数が、少ない分、余計に」


ミラも、静かに、頷いた。


---


しばらく進むと、赤黒い肌の魔物が、通路の先に、姿を、現した。


「来た……」


ノリアが、杖を、両手で、構える。


「ノーマルの、群れ」


ミラも、剣を、抜いた。


---


「静黙」


ノリアの声が、静かに、響く。


淡い光が、魔物たちを、包んだ。


魔物の手のひらに、灯りかけていた光が、次々と、消えていく。


「効いた……!」


ノリアが、思わず、声を、上げた。


---


「通った……!」


ミラも、静かに、息を、呑んだ。


「このまま、続ける」


ノリアが、杖を、握り直す。


「業火弾は、範囲まで、広がっちゃうから」


ノリアが、狙いを、一体に、定める。


「雷殺」


雷が、一体だけを、正確に、貫いた。


---


「続けて」


ノリアが、繰り返し、杖を、構える。


「雷殺」


また一体が、崩れ落ちる。


六体だった群れが、みるみる、数を、減らしていく。


---


「あと、二体」


ノリアが、息を、整えながら、呟く。


「うん。ここまでで、十分」


ミラが、静かに、頷いた。


「約束通り、ここから先は」


---


「私一人で、片づける。ノリアは、前の間まで、下がってて」


ミラが、続ける。


「わかった」


ノリアが、静かに、頷く。


「無理は、しないでね」


「わかってる」


---


「守りの聖歌」


ミラが、自分に向け、静かに、唱える。


温かい光が、体を、薄く、包んだ。


「加護の盾」


続けて、二重の光が、重なる。


「これで、しばらくは、持つ」


---


ノリアが、来た道を、静かに、下がっていく。


前の間の、篝火の明かりが、見える位置まで、退がったところで、足を止めた。


「ここなら、様子も、見ていられる」


ノリアが、そこから、静かに、見守る。


---


「さあ、始めよう」


ミラが、剣を、正面へと、構え直す。


魔法を封じられた、残り二体の魔物が、なおも、拳を、振り上げて、迫ってくる。


---


盾で、いなす。


ロングソードで、切り込む。


封じられた一体が、ものの数合で、崩れ落ちた。


すると、新たな一体が呼ばれた。


再度、元からいた一体を倒す。


・・・新たな一体が呼ばれる。


果てしない繰り返しが始まった。


---


適度に回復魔法を自分で掛け、


防御魔法も適度に追加した。


そろそろ、魔法が無くなりそうだ・・・


二体のうちの一体を倒しきる。


そして、残るもう一体。


「これで、最後」


ミラが、静かに、剣を、構え直す。


盾で、爪を、いなし、間合いを、詰める。


一撃で、二体目も、崩れ落ちた。


---


「終わった……」


ミラが、大きく、息を、吐く。


前の間の方角へ、振り返った。


「ノリア、終わったよ」


---


「よかった……!」


ノリアが、駆け寄ってくる。


「怪我、してない?」


「大丈夫。守りの聖歌も、加護の盾も、まだ、余力があった」


ミラが、答えた。


「え?ギリギリだったよ。無理するから心配だった」


ノリアが笑い泣きの表情で返した。


---


「これだけ、やれば」


ミラが、小さく、呟く。


「少しは、追いつける、はず」


一人だけの、いや、二人の静かな戦いが、そこで、ようやく、区切りを、迎えた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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