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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
第二部 迷宮エア編 一層

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第99話「露見した勇み足、募る心配」

マランの世界、毎日投稿中です。

ストックが少なくなってきたので

当面、3話投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

ヘクサインの扉を、開けた瞬間だった。


「どこ、行ってたの!」


ネリスの声が、真っ先に、飛んできた。


「二人とも、今日、丸一日、いなかったよな」


ダダも、腕を組んだまま、二人を、見据える。


---


「アプレイザルにも、フラグメンツにも、いなくて」


カインが、静かに、続ける。


「宿の人に、聞いたら、朝から、出たきり、だって」


ワングも、腕を組んだまま、静かに、言葉を、待っていた。


---


「九層に、二人だけで、行ってました」


ミラが、正直に、答える。


「二人だけで……!?」


ネリスの声が、跳ね上がった。


「何、考えてるの! 危ないって、わかってるよね!」


---


「ごめん」


ミラが、頭を、下げる。


「ノリアも、頼んで、付き合ってもらった」


「私も、承知の上で、行ったから」


ノリアが、静かに、付け加えた。


---


「承知の上、じゃない! 二人だけの、九層だぞ!」


ダダが、珍しく、強い声を、上げる。


「万が一のことが、あったら」


「わかってる。わかってるけど」


ミラが、静かに、言葉を、探す。


---


「私、レベル、みんなと、差がありすぎて」


ミラが、続ける。


「このままじゃ、足を、引っ張ると思った。だから」


「だからって、二人だけで、無茶していい理由には、ならない!」


ネリスが、なおも、詰め寄る。


「怖かったんだよ、こっちは! 何かあったら、って!」


---


その勢いに、ミラが、一瞬、言葉を、失う。


「ノリアまで、巻き込んで」


ネリスが、なおも、続ける。


「一人が、危ない目に、遭ったら、もう一人も、巻き込まれるんだよ。わかってる?」


「わかってる、つもりだった」


ミラが、静かに、答える。


「つもりって、なんだよ」


ダダが、低く、言う。


「実際、危なかったんだろう」


「危なかった、です」


ミラが、正直に、認めた。


「魔力、ギリギリまで、使いました」


---


「ギリギリって……」


ネリスが、絶句する。


「一つ、間違えたら、取り返しが、つかなかった、ってことだよな」


カインが、静かに、確かめる。


「はい」


ミラが、頷いた。


その返事に、しばらく、誰も、口を開かなかった。


---


「ネリス」


カインが、静かに、間に、入った。


「その気持ちは、よく、わかる」


---


「わかる、って」


ネリスが、振り返る。


「俺も、なかなか、レベル、上がらないからな」


カインが、静かに、続けた。


「万能士って、伸びが遅い分、焦る気持ち、痛いほど、わかる」


---


「でも、二人だけで、危険を、冒すのは」


カインが、続ける。


「別だ。それだけは、はっきり、言っておく」


「はい」


ミラが、静かに、頷いた。


「本当に、ごめんなさい」


---


「今度からは」


カインが、続ける。


「同じことを、考える時は、まず、みんなに、相談してくれ。付き合うかどうかは、その上で、決める」


「うん」


ノリアも、静かに、頷いた。


---


しばらく、重い空気が、続いた。


それを、破ったのは、ワングだった。


「まあ、怒るだけ、怒って。次に、進むでござる」


ワングが、静かに、皆を、見回す。


「今回のこと、いくつか、わかったことも、あるでござるからな」


---


「わかったこと?」


カインが、聞き返す。


「はい。まず、静黙について」


ワングが、続ける。


「あの呪文、敵単体ではなく、パーティ全体に、かかるものらしいでござる」


---


「パーティ全体……?」


ダダが、腕を、組み直す。


「ミラ殿から、聞いたでござるが、戦闘の途中で、新しい個体が、次々と、呼ばれてきたと」


ワングが、続ける。


「はい。呼ばれる度に、また、静黙をかけ直すのかと、身構えてました」


ミラが、当時を、思い出しながら、答える。


「でも、かけ直さなくても、ずっと、封じられたままだったんです」


---


「新しく呼ばれた個体にも、同じ、封じの効果が、及んでいたと」


ワングが、続ける。


「新手が、湧いても、あらためて、かけ直す必要は、なかった、ということでござるな」


「一度、成立すれば、その場の敵全員が、対象になる。そういう呪文だったんでござろう」


---


「それは、大きい発見だな」


カインが、静かに、頷く。


「そしてもう一つ」


ワングが、続ける。


「ノリア殿の魔法、相当、伸びているでござる。ノーマルデーモン相手にも、静黙が、通った」


---


「魔道師に、なった、影響か」


ダダが、聞く。


「恐らく、そうでござろう」


ワングが、頷いた。


「格上には、まだ通らぬでござろうが、通常個体になら、十分、通用する」


「自分でも、驚いた」


ノリアが、静かに、言う。


「前は、弾かれてばかりだったのに」


「魔道師としての、伸びしろが、出てきた、ってことだろうな」


カインが、感心したように、言った。


---


「じゃあ」


カインが、続ける。


「今後、静黙頼みの戦い方、選択肢が、広がる、ってことだな」


「そういうことに、なるでござる」


ワングが、静かに、頷いた。


「ただ、格上の相手には、まだ通らぬ。過信は、禁物でござろう」


「わかってる。使いどころは、見極めないと」


カインが、頷いた。


「今回、二人だけで、通用した相手だから、余計に、危なかったんだよな」


ダダが、静かに、付け加える。


「相手が、少しでも、格上だったら」


「そこは、本当に、反省してる」


ミラが、静かに、答えた。


---


「話は、それとして」


カインが、皆を、見回す。


「ミラの、レベル。ちゃんと、確認しておこう」


「そうだな」


ダダも、頷いた。


---


その足で、六人は、アプレイザルへ、向かった。


「今日は、また、盛りだくさんそうですね」


鑑定士が、六人の顔ぶれを、見て、静かに、言う。


「ミラのレベル、確認、お願いします」


カインが、告げた。


---


鑑定士が、水晶に、手を、かざす。


しばらくして、静かに、口を、開いた。


「レベル、16です」


「16……!」


ミラが、思わず、声を、上げる。


「9から、一気に、七つも」


---


「元の、一つ手前まで、戻ったのか」


ダダが、驚いたように、言う。


「一日で、これだけ……」


カインも、静かに、目を、見開いた。


---


「使用回数は、どうでしょう」


ミラが、聞く。


「そちらは、変化なし。各階梯とも、以前のまま、です」


鑑定士が、答えた。


「レベルは、大きく、伸びたけど。呪文の方は、ついてきていない、ということですね」


「はい。レベルと、呪文の伸びは、必ずしも、同時に、進むわけではありません」


鑑定士が、静かに、補足する。


「そのうち、追いついてくる、ということですか」


カインが、聞く。


「可能性は、あります。断定は、できませんが」


鑑定士が、慎重に、答えた。


---


「そういうことに、なります」


鑑定士が、頷く。


「レベルと、呪文の伸びが、必ずしも、一致するとは、限らない、ということでしょう」


「それでも」


ミラが、静かに、続ける。


「一日で、ここまで、戻れるとは、思わなかった」


---


「無茶した、甲斐は、あった、ってことか」


ダダが、静かに、言う。


「甲斐は、あった。けど」


ミラが、皆を、見回す。


「もう、二人だけでは、やらない。約束する」


---


「私も」


ノリアが、静かに、続ける。


「今度、同じこと考えたら、まず、みんなに、話す」


「うん、それでいい」


ネリスが、ようやく、少し、表情を、緩めた。


「心配、しただけだからね」


「わかってる。ありがとう」


ミラが、静かに、答えた。


---


「それでいい」


カインが、静かに、頷いた。


「頼りにしてる分、心配も、大きいんだ」


「うん。わかった」


ミラが、静かに、頷き返した。


その顔には、反省と、安堵が、静かに、同居していた。


「次からは、六人で、一緒に、稼ごう」


ダダが、静かに、言う。


「その方が、確実だし、何より、安心だ」


「賛成」


六人の声が、久しぶりに、揃った。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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