↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
第二部 迷宮エア編 一層

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/237

第96話「確かめられた資質、選びとる代償」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、3話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

アプレイザルの窓口に、六人分の気配が、並んだ。


「エアで、色々ありまして」


カインが、順を追って、これまでの経緯を、説明していく。


十二の牙、新しい得物、ノリアの杖、そして、帰り道の襲撃。


鑑定士は、時折、頷きながら、静かに、聞き入っていた。


「新しい武器を、まとめて試された、初日に、それだけの出来事とは」


鑑定士が、記録紙に、何かを、書き留めながら、言う。


「濃い一日でした」


ミラが、苦笑した。


「怪我人は、今は」


鑑定士が、心配そうに、聞く。


「もう、大丈夫。あの後、しっかり、休みました」


ノリアが、答えた。


---


「まず、ノリアさんの、状態から、確認しましょうか」


鑑定士が、記録紙を、机に、広げる。


「レベル、16。変わっていません」


「変わって、ない……」


ノリアが、自分の手のひらを、見つめる。


「各階梯の、使用回数も、確認します」


しばらくして、鑑定士が、顔を上げた。


「こちらも、変化なし。すべて、以前のままです」


---


「杖の力、解放したのに?」


ダダが、身を乗り出す。


「はい。数字の上では、何も、動いていません」


鑑定士が、静かに、答えた。


「じゃあ、あの光は、何だったんだ」


カインが、聞く。


---


「一つ、考えられることが、あります」


鑑定士が、記録紙を、指で、なぞりながら、続ける。


「ノリアさんの階梯の伸び方、以前から、少し、独特でした」


「独特、って」


ノリアが、聞き返す。


---


「本来なら、魔術師は、階梯ごとに、ある程度、決まった順序で、伸びていくものです。ですが、ノリアさんの記録は、その並びに、いくつか、ばらつきがありました」


鑑定士が、続ける。


「もしかすると、ノリアさんは、もともと、魔術師ではなく、魔道師だったのでは、と思います」


---


「もともと……魔道師?」


ノリアが、目を、見開く。


「そう考えると、これまでの、ばらつきにも、説明がつきます。魔術師の型に当てはめようとしていたから、伸び方が、少しいびつに見えていた」


鑑定士が、静かに、言う。


---


「じゃあ、杖の力を、解放したことで、何が」


ミラが、聞く。


「変わったのは、数字ではなく、認識だと、思います」


鑑定士が、答えた。


「もともと、魔道師だった自分が、ようやく、そう名乗れるように、確定した。そういうことでは、ないでしょうか」


---


「数字は、変わらないけど、確定した……」


ノリアが、その言葉を、繰り返す。


「それだけでも、大きな一歩でござろう」


ワングが、静かに、頷いた。


「うん。なんとなく、しっくりくる」


ノリアが、小さく、頷いた。


---


「続いて、そちらの、短剣とプレートですね」


鑑定士が、ミラの持つ短剣に、目を、向ける。


「プレート、こちらで、読めますか」


カインが、金色のプレートを、差し出す。


---


鑑定士が、プレートを、しばらく、見つめる。


「……申し訳ありません。こちらでは、読み取れません」


「やっぱり」


カインが、小さく、息を吐く。


---


「試しに、ミラさん、もう一度、見てもらえますか」


鑑定士が、促す。


ミラが、プレートを、受け取り、視線を、落とす。


その表情が、静かに、変わった。


---


「……読める」


ミラが、小さく、呟く。


「読める、って、本当か」


ダダが、覗き込む。


「文字が、浮かび上がってくる、みたいな感じ」


ミラが、プレートを、じっと、見つめたまま、続けた。


---


「なんて、書いてある」


カインが、聞く。


ミラが、ゆっくりと、読み上げる。


「『其方が、さらに力を望むなら、剣の力を、開放するが良い。ただし、それなりの、見返りは求められる』」


---


その場に、しばらく、沈黙が、落ちた。


「見返り、ですか」


鑑定士が、静かに、口を開く。


「先ほどの、ノリアさんの件ですが」


「はい」


「レベルも、使用回数も、まったく変わらないまま、というのは、実は、かなり珍しいことです」


---


「珍しい……」


ミラが、繰り返す。


「これまでの記録では、転職や、力の開放には、多くの場合、何らかの変化――特に、レベルの低下が、伴うことが、知られています」


鑑定士が、続けた。


---


「ノリアさんの場合は、もともと、魔道師だった自覚が、確定しただけだったので、変化がなかった、と考えられます。ですが、ミラさんの場合は」


「私の、場合は」


ミラが、身構える。


---


「短剣の、来歴を、お伝えします」


鑑定士が、記録紙を、めくる。


「以前、お伝えした通り、この短剣は、『聖アリアの剣』。かつて、ロードであったアリアが、持っていたとされる品です」


「はい」


「ですが、記録をさらに、辿ると、アリアは、最初から、ロードだったわけではないようです」


---


「最初は、違う……?」


カインが、聞く。


「聖騎士。まず、そこから、始まったと、記録にあります」


鑑定士が、答えた。


「聖騎士が、君主――ロードへと至った、という道筋です」


---


「聖騎士から、ロード」


ミラが、静かに、繰り返す。


「聖騎士も、ロードも、いずれも、ノストス系の魔法を使える上、その威力は、専任の僧侶と、同等の水準に、達すると言われています」


鑑定士が、続けた。


---


「じゃあ、悪い話じゃ、ないんじゃ」


ダダが、聞く。


「戦闘力も、回復力も、両方、伸びる、ってことだよな」


「はい。ただ」


鑑定士が、少し、間を置く。


「型としては、侍や、万能士のような、特殊職に、近いものになります。専任の僧侶ほどの伸びやすさは、望めません」


「侍と、同じ、系統か」


ワングが、静かに、呟く。


「拙者の、歩みが、参考になるやもしれぬでござるな」


「そうした、力と役割を、大きく広げる転職では、レベルが、下がる可能性が、高いと、記録にあります」


鑑定士が、続けた。


「目安としては、おおよそ、半分ほどまで、下がった例が、多いようです」


---


「下がる……」


ノリアが、小さく、呟いた。


先ほどの、自分の場合との違いに、気づいたのだろう。


「私の場合は、変わらなかったけど、ミラの場合は」


「同じとは、限らない、ってことか」


カインが、静かに、続けた。


---


「決めるのは、ミラさん自身です」


鑑定士が、静かに、言う。


「今すぐでなくても、構いません」


---


ミラは、しばらく、短剣を、見つめていた。


「聖騎士も、ロードも」


ミラが、ゆっくりと、口を開く。


「回復も、戦うことも、両方、できる、ってことだよね」


「そうなります」


鑑定士が、頷いた。


---


「今までは、後ろで、支えることしか、できなかった」


ミラが、皆を、見回す。


「レベルが、下がっても、その先で、もっと、皆の力になれるなら」


「無理は、しなくていい」


カインが、静かに、言う。


---


「無理じゃない。これは、私が、選びたいこと」


ミラが、短剣の柄に、そっと、手をかけた。


その目に、迷いは、もう、残っていなかった。


「力を、開放する」


---


短剣が、静かに、淡い光を、帯び始めた。


光は、ミラの手を、包み、腕を、伝い、体全体へと、広がっていく。


「ミラ!」


カインが、思わず、声を、上げる。


「大丈夫……たぶん」


ミラが、目を、閉じたまま、答えた。


---


光が、ゆっくりと、収まっていく。


ミラは、その場に、静かに、立っていた。


何が、どう変わったのか、その場にいる誰にも、まだ、わからなかった。


「ミラ、大丈夫か」


ダダが、恐る恐る、声をかける。


「大丈夫。ただ……」


ミラが、自分の手のひらを、見つめながら、静かに、答えた。


「何かが、確かに、変わった気が、する」


「レベル、確認、できますか」


カインが、鑑定士に、聞く。


「今、確認します」


鑑定士が、水晶に、手をかざす。


しばらくして、静かに、口を、開いた。


「レベル、9。以前の、半分ほどまで、下がっています」


鑑定士が、続けて、記録紙に、目を、落とす。


「そして、職業についても、記録が、更新されています。『ロード』――君主です」


「ロード……」


ミラが、静かに、その名を、繰り返す。


聖騎士を、経ることなく、直接、その先へと、至ったらしかった。


その言葉に、ミラが、小さく、息を、吐いた。


「半分、か……思ったより、ずっと、大きいな」


ダダが、低く、呟く。


「わかってたこと」


ミラが、静かに、答える。


「ここからだよ」


「拙者たちも、支えるでござる」


ワングが、静かに、言った。


「うん」


ミラが、頷いた。


その顔には、迷いよりも、確かな覚悟が、浮かんでいた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。