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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
第二部 迷宮エア編 一層

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第79話「証がくれたもの」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

クロスロードの窓口に、六人分の足音が、並んで響いた。


「リゼットさん、おはようございます」


カインが、いつもの調子で、声をかける。


「おはようございます」


リゼットが、書類から顔を上げ、六人を見る。


その目に、いつもとは違う、わずかな緊張が、滲んでいた。


---


「エアへの入場証、確認しました」


リゼットが、手続き用の紙束を、静かに揃える。


「手続き自体は、今すぐにでも進められます」


「じゃあ、今日にでも」


ダダが、身を乗り出しかける。


「その前に」


リゼットが、それを、静かに制した。


---


「まず、アプレイザルで、レベルを確認してきてください」


「レベル?」


ネリスが、聞き返す。


「潜ってすらいないのに」


「潜っていなくても、です」


リゼットが、続ける。


「ノアの攻略報酬が、レベルという形で、付与されます」


「攻略報酬が、レベル……」


ミラが、静かに、繰り返した。


---


「そういう、仕組みなんですか」


カインが、聞く。


「詳しい理由は、私にもわかりません」


リゼットが、正直に、答える。


「ただ、記録上、ノア攻略者には、必ず、そういう反映があります」


「わからないけど、確かにある、か」


ダダが、小さく、笑う。


「この街じゃ、珍しくもないでござるな」


ワングが、静かに、頷いた。


---


アプレイザルの窓口には、見慣れた鑑定士が、いた。


「今日は、また、皆さんで」


「今日は、ちょっと、特別な確認で」


カインが、答える。


「聞いています。ノア攻略、おめでとうございます」


鑑定士が、静かに、頭を下げた。


---


まず、ダダから。


台に手を乗せると、光が、いつもより長く、灯った。


「盾役、レベル18ですね」


「18……」


ダダが、自分の手を、じっと見つめる。


「14から、一気に、四つも」


「ノア攻略という節目は、それだけの重みがあるということです」


鑑定士が、静かに、続けた。


---


次、ネリス。


同じく、光が長く灯る。


「斥候、レベル18です」


「私も」


ネリスが、短く、頷いた。


「一気に、跳んだな」


カインが、感心したように言う。


「跳んだ」


ネリスは、それだけ答えた。


---


「次、ノリアさん」


呼ばれて、ノリアが、台の前に立つ。


「レベル15ですね」


「15」


ノリアが、静かに、繰り返す。


---


「習得呪文の使用回数ですが」


鑑定士が、続ける。


「第七階梯、終焉が3回。第六階梯が5回。第五階梯が7回。第四階梯以下は、9回、上限です」


「終焉が、3回にまで」


カインが、静かに、呟く。


「切り札の、幅が、広がったでござるな」


ワングが、頷いた。


---


「次、ミラさん」


呼ばれて、ミラが、台に手を乗せる。


「レベル16ですね」


「16……」


ミラが、静かに、目を見開く。


---


「第七階梯、神域が4回。第六階梯が6回。第五階梯が8回。第四階梯以下は、9回です」


鑑定士が、続けた。


「神域を、四回も、使えるように」


ミラが、自分の手を、そっと、握りしめる。


「頼りにしてる」


ダダが、短く、言った。


「はい」


ミラが、静かに、頷いた。


---


「次、ワングさん」


呼ばれて、ワングが、台の前に立つ。


光が、これまでとは違う、深い色で、灯った。


「侍、レベル18ですね」


「18でござるか」


---


「そして」


鑑定士が、紙に、目を落としたまま、続ける。


「第六階梯に、到達しています」


「第六階梯……」


ワングが、静かに、自分の右腕を、見つめた。


---


「習得呪文は、滅却光です」


鑑定士が、告げる。


「めっきゃくこう……」


カインが、聞き慣れない響きを、繰り返す。


「効果は」


「詳しい説明は、まだ、記録されていません。使ってみないと、わからない部分もあるかと」


「わからないまま、覚える呪文、初めてでござるな」


ワングが、少しだけ、笑った。


---


「使用回数は、滅却光が1回。第五階梯が5回。第四階梯が8回。第三階梯以下は、9回です」


鑑定士が、続けた。


「順調に、伸びてる」


ダダが、静かに、言う。


「順調、でござるな」


ワングが、頷いた。


---


「最後、カインさん」


呼ばれて、カインが、台の前に立つ。


「万能士、レベル13ですね」


「13!」


カインが、思わず、声を上げる。


「10から、一気に、三つ」


---


「そして、両系統とも、第四階梯に、到達しています」


鑑定士が、続ける。


「アルカナ系、真贋の瞳。ノストス系、神撃。それぞれ、新規習得です」


「真贋の瞳って、確か」


カインが、記憶をたどる。


「ワングやノリアが、覚えていた呪文でござるな」


ワングが、頷く。


「同じ呪文、俺も覚えるのか」


「同じ階梯の呪文なら、複数人が覚えることも、珍しくありません」


鑑定士が、補足した。


---


「使用回数は」


カインが、聞く。


「第四階梯、真贋の瞳・神撃、それぞれ1回ずつです」


鑑定士が、続ける。


「第三階梯以下は、万能士の上限である、3回です」


「上限まで、来てるのか、下の階梯は」


カインが、確認するように、言う。


「ずっと前から、上限のままだ」


ダダが、横から、言った。


---


窓口を離れ、外に出る。


夕方には、まだ、少し早い時間だった。


「今日は、全員、揃って伸びたな」


カインが、皆を、見回す。


「揃って、伸びた」


ダダが、頷く。


「ノア攻略の報酬、実感が湧いてきたでござる」


ワングが、静かに、言った。


「実感が、追いつかない」


カインが、思わず、呟く。


「それ、俺の台詞」


ダダが、すかさず、突っ込んだ。


その一言に、六人の間に、いつもの空気が、戻ってきた。


「でも、本当に」


ミラが、静かに、続ける。


「一気に、これだけ伸びると、少し、怖くもあります」


「怖い?」


ネリスが、聞き返す。


「力に、見合うだけの覚悟が、追いついているか、っていう意味で」


ミラの言葉に、しばらく、誰も、何も言わなかった。


「追いつかせながら、行くしかないでござるな」


ワングが、静かに、言う。


「それしか、ないよな」


カインが、頷いた。


---


クロスロードに、戻ると、リゼットが、六人を待っていた。


「レベル、確認できましたか」


「できました。全員、かなり伸びてます」


カインが、答える。


「良かったです」


リゼットが、頷く。


「もう一つ、お伝えしたいことが」


---


「装備の方も、一度、整えておくことを、お勧めします」


リゼットが、続ける。


「フォージタウンに、行った方がいいってことですか」


カインが、聞く。


「行こうとしていたところ、だったんです」


ダダが、付け加えた。


---


「その前に」


リゼットが、少し、声を落とす。


「エアは、ノアとは、一線を画すものが、ドロップします」


「一線を画す……?」


ネリスが、聞き返す。


---


「装備の質、系統、どちらも、これまでとは、違ってくる可能性があります」


リゼットが、静かに、続ける。


「今の装備を、無理に強化するより、まずは、状況を確かめてから、整える方が、確実かもしれません」


「先に、フォージタウンに行くより、か」


カインが、考え込むように、言う。


---


「もちろん、判断は、皆さん次第です」


リゼットが、付け加える。


「ただ、記録上、ノアとエアで、ドロップの傾向が、大きく違うという報告は、複数、上がっています」


「なら、まずは、様子見でござるな」


ワングが、静かに、言った。


---


「賛成」


ダダが、頷く。


「今の装備、まだ、十分戦える」


「戦えるか、確かめてから、決めよう」


カインが、皆を、見回す。


「賛成」


六人の声が、揃った。


---


クロスロードを、後にする。


夕暮れの光が、六人の影を、長く伸ばしていた。


「明日、エアの門か」


カインが、静かに、呟く。


「明日」


ダダが、頷く。


「ノアとは、違う場所、か」


ネリスが、遠くを、見つめるように、言った。


「違う場所」


ノリアが、短く、繰り返す。


「未知の場所でござるな」


ワングが、静かに、言う。


「未知だけど」


ミラが、微笑む。


「今の私たちなら、大丈夫な気がします」


「根拠は」


ダダが、聞く。


「根拠は、ないです」


ミラが、素直に、答えた。


「根拠なくても、言い切っていい夜も、あるからな」


カインが、笑いながら、言った。


「あるでござるな、確かに」


ワングが、頷く。


「フラグメンツで、今夜は、少し飲むか」


カインが、提案する。


「賛成」


ダダが、真っ先に、答えた。


「ガラントさんに、伸びた分、聞いてもらいたい気分」


ネリスが、続ける。


「聞いてもらう、というより」


ノリアが、静かに、言う。


「聞かれる前に、こっちから、話したい気分」


「珍しいな、ノリアが、そう言うの」


カインが、少し驚いたように、言う。


「珍しくても、いい夜」


ノリアの答えに、誰も、それ以上は、聞かなかった。


六人は、フラグメンツへ向かう道を、並んで、歩き出した。


いかがでしょうか?


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よろしくお願いいたします。

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