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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第74話「取り戻した高さ」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

鑑定所の窓口に、ミラが、指輪を、そっと差し出した。


「これも、見てもらえますか」


鑑定士が、それを手に取り、専用の台座に置く。


淡い光が、指輪を、静かに包み込んだ。


---


しばらくして、光が、収まる。


「結果、出ました」


鑑定士が、記録紙を、皆に見せる。


「装備条件は、僧侶職。ノストス系の、回復魔法を、増強する加護が、確認されています」


「増強……」


ミラが、静かに、繰り返す。


---


「どれくらい、強くなるんですか」


カインが、聞く。


「回復量が、一定割合、上乗せされる作りのようです」


鑑定士が、答える。


「群癒のような、範囲回復にも、効果は、及びますか」


ミラが、聞く。


「範囲、単体、どちらにも、効果はあります」


鑑定士が、静かに、続けた。


---


「呪いの類は」


ネリスが、念のため、聞く。


「確認されていません。安心して、装備できます」


鑑定士の言葉に、六人の間に、静かな安堵が、広がった。


「ワングの見立て、正しかったな」


カインが、笑いながら、言う。


「拙者の目も、まだまだ、捨てたものでは、ないでござるな」


ワングが、静かに、頷いた。


---


「これ、私が、使わせてもらう」


ミラが、指輪を、そっと、指に戻す。


「もちろん」


カインが、頷いた。


「回復役に、回復の加護。適材適所、そのものだ」


---


鑑定所を出て、六人は、再び、九層へと向かった。


「今日も、地道に、稼ぐか」


カインが、皆を見回しながら、言う。


「もう、慣れたもんだ」


ダダが、ウォーハンマーを、担ぎ直しながら、答えた。


---


九層の通路を、六人は、迷いのない足取りで、進んでいった。


甲殻をまとった魔物の群れと、幾度となく、行き合う。


「ダダ、前へ」


「了解!」


ダダの得物が、唸りを上げて、振り下ろされる。


一体が、大きく怯み、体勢を崩した。


---


「隙、できてる!」


ネリスが、その隙を、逃さず、爪を突き立てる。


「ワング、ノリア、右!」


「承知!」


「業火弾」


連携は、日を追うごとに、さらに、磨かれていった。


---


杖持ちの魔物とも、幾度か、行き合う。


「静黙、先に!」


カインの声に、ノリアが、素早く、応じた。


「静黙!」


杖の先の光が、灯りかけて、そのまま、消えていく。


「今のうちに!」


ワングの一閃が、確実に、仕留めていった。


---


さらに奥へ進むと、これまでより、一回り大きな、甲殻型の群れと、行き合った。


「数、多いな、今日」


ダダが、盾とウォーハンマーを、構え直しながら、言う。


「型、いつも通りで、いけるか」


カインが、聞く。


「いける。むしろ、この武器、こういう数の多さに、向いてる気がする」


ダダが、答えた。


---


「眠霧、先に、まとめてかけるか」


カインが、提案する。


「いける」


ノリアと、ワングが、同時に、頷く。


「眠霧」


「眠霧」


二重にかけられた霧が、群れの大半を、静かに、眠りへと、誘っていった。


---


「今のうちに、畳みかける!」


カインが、叫ぶ。


ダダの一撃が、眠る敵の一体を、大きく、吹き飛ばす。


ネリスの爪が、間隙を縫って、次々と、急所を捉えていった。


「今日の連携、かなり、精度、上がってるでござるな」


ワングが、静かに、感心したように、言う。


---


「群癒、使うか」


戦いの合間、ミラが、皆を見回しながら、言う。


「頼む」


カインが、頷いた。


「群癒」


いつもより、淡い光が、大きく、広がっていく。


「今の、確かに、効き、いいな」


ダダが、体の軽さを、確かめるように、言った。


「指輪の、効果、ちゃんと、出てるみたいだ」


ミラが、静かに、微笑んだ。


---


そうして、丸一日をかけて、六人は、九層の奥まで、粘り強く、稼ぎ続けた。


「今日も、かなり、進んだな」


カインが、灰の消えた跡を、見渡しながら、言う。


「そろそろ、確かめたいな。レベル、どこまで、戻ったか」


ダダが、静かに、言った。


---


九層前室から、篝火の灯る道を、六人は、ゆっくりと、戻り始めた。


その足で、まっすぐ、アプレイザルへと向かう。


「今日こそ、確かめよう」


カインの声に、少しの緊張が、混じっていた。


---


窓口に、六人分の光が、順番に灯っていく。


「カインさん、レベル10です」


「10……戻った!」


カインが、思わず、声を上げる。


---


「ダダさんは、レベル14」


「ネリスさんも、レベル14」


「ノリアさんも、レベル13」


「私も、13」


ミラが、続ける。


「拙者も、16でござる」


ワングが、最後に、答えた。


「全員、綺麗に、元の高さに、戻ったな」


カインが、皆を見回しながら、言う。


---


「それと、ノリアさん」


鑑定士が、続ける。


「もう一つ、報告があります」


「まだ、何か」


ノリアが、身構える。


---


「習得済みの階梯、それぞれで、使用回数が、1回ずつ、増えています」


鑑定士が、記録紙を、指でなぞる。


「第一階梯は、すでに上限だったため、据え置きですが。第二階梯から、第七階梯まで、軒並み、1回ずつです」


「全部、増えてる……」


ノリアが、自分の手のひらを、見つめる。


---


「同じレベルに、戻っただけ、じゃないのか」


ダダが、聞く。


「単純に、戻っただけでは、ないようです」


鑑定士が、答える。


「一度、落ちてから、また積み上げ直した分、以前より、深く、根付いた、ということかもしれません」


---


「戻っただけじゃ、なかったんだ」


ノリアが、静かに、呟く。


「悔しい思いをした分、ちゃんと、意味があった、ってことだな」


カインが、笑いながら、言った。


「そう、思っていい、と思う」


ミラが、静かに、頷いた。


---


「私、あの日、みんなのレベルを、下げてしまった」


ノリアが、少し、俯きながら、言う。


「今日、それが、こうして、埋め合わせられた気がする」


「埋め合わせなんて、思わなくていい」


ダダが、静かに、言う。


「あの日、お前がいなかったら、埋め合わせも、何も、なかった」


「そうだよ」


ネリスも、静かに、続けた。


「みんな、ありがとう」


ノリアが、小さく、頭を下げた。


その声には、これまでより、少し、軽い響きがあった。


---


アプレイザルを出ると、夕暮れの光が、通りを、静かに染めていた。


「今日で、ようやく、元の高さだ」


カインが、皆を見回しながら、言う。


「元以上、って、言い方の方が、正確かもな」


ダダが、静かに、付け加えた。


---


「次は、また、あの部屋か」


ネリスが、静かに、聞く。


「まだ、少し、早い気がする」


カインが、答える。


「今のうちに、装備も、もう少し、整えておきたい」


「賛成」


六人の声が、揃った。


---


「次、九層で、他にも、拾えそうなものが、あるかもな」


ダダが、期待を込めて、言う。


「あるといいな。装備、揃うほど、あの部屋にも、近づける」


カインが、静かに、答えた。


「静黙と、眠霧と、業炎獄。切り札は、揃ってきてる」


ノリアが、静かに、付け加える。


「あとは、私たちの、練度次第、ってことだな」


カインが、頷いた。


ダダのウォーハンマーと、ミラの指輪が、夕暮れの光を、それぞれ、静かに、受けていた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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