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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第72話「積み直す足取り、掴んだ得物」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

アプレイザルの窓口に、六人分の光が、順番に灯っていく。


「カインさん、レベル9です」


「9……やっぱり、一つ、落ちてるか」


カインが、静かに、頷いた。


---


「ダダさんは、レベル13」


「ネリスさんも、レベル13」


「ノリアさんは、レベル12」


三人が、順に、頷いていく。


「私も、12」


ミラが、静かに、続ける。


「拙者も、15でござる」


ワングが、最後に、答えた。


「みんな、綺麗に、一段階ずつ」


カインが、苦笑しながら言う。


「聞いてた通りだな」


---


窓口を出て、六人は、通りを歩きながら、これからのことを、話し合った。


「今日は、九層に、戻ろう」


カインが、皆を見回しながら、言う。


「一気に、九層まで、行けたルート、覚えてるし」


ダダが、頷いた。


「レベル、取り戻すところから、地道に、な」


---


「悔しいけど」


ネリスが、静かに、言う。


「あの部屋に、また挑むには、まだ、足りない」


「足りないなら、積み上げるだけだ」


カインが、答えた。


「それが、俺たちのやり方だから」


---


「一段階、下がったくらい」


ワングが、静かに、付け加える。


「拙者たちなら、すぐに、取り戻せるでござろう」


「そうだな」


ダダが、頷く。


「落ち込んでる暇があったら、稼いだ方が、早い」


「前向きで、助かる」


ミラが、小さく、微笑んだ。


---


「静黙と、眠霧、また、頼りにするからな」


カインが、ノリアとワングに、声をかける。


「もちろん」


ノリアが、頷く。


「あの戦い方、悪くなかった。もう一度、使う」


「拙者も、いつでも」


ワングが、静かに、答えた。


---


九層の通路は、以前と、変わらない姿で、六人を、迎えた。


「気配、いつも通り」


ネリスが、耳を伏せながら、言う。


「今日は、まず、稼ぐことに、集中しよう」


カインが、静かに、言った。


---


しばらく進むと、甲殻をまとった魔物の群れが、通路を、塞ぐように、待ち構えていた。


「型、いつも通りで」


カインが、剣を構える。


「ダダ、前へ」


「了解!」


ダダの盾が、先頭の一体を、正面から、受け止めた。


---


「ワング、ノリア、右!」


「承知!」


ワングの刀が、二体を、続けざまに、斬り伏せる。


「業火弾」


ノリアの一撃が、残る数体を、まとめて、焼き払った。


「これくらいなら、今の私たちでも、十分だ」


カインが、剣を納めながら、言う。


---


灰を回収しながら、さらに、奥へと進む。


再び、複数の気配が、通路の先に、生まれた。


「また、来る」


ネリスが、耳を伏せる。


「杖持ち、混じってる」


「静黙、先に」


カインの声に、ノリアが、頷いた。


---


「静黙」


魔物が、杖を構えるより先に、声が、響く。


見えない力が、杖の先を、丸ごと、包み込んだ。


「今のうちに!」


ダダとワングが、間合いを、一気に詰めていく。


杖持ちが、抵抗もできないまま、崩れ落ちた。


---


「前より、動き、揃ってきたな」


カインが、額の汗を拭いながら、言う。


「レベル、落ちても、連携は、変わらない」


ダダが、盾を、下ろしながら、答えた。


「積み上げたのは、数字だけじゃない、ってことだな」


カインが、静かに、頷いた。


---


戦いの合間、ネリスが、ふと、通路の壁に、目を止めた。


「待って」


ネリスが、静かに、言う。


「何か、あるのか」


カインが、聞く。


「わからない。念のため」


ネリスが、爪を、そっと、壁に当てた。


---


かつん、という、乾いた音とともに、うっすらとした光の線が、壁に浮かび上がる。


「見える」


ネリスが、静かに、言う。


「罠、か」


ダダが、身構える。


「罠、ってほどじゃない。でも、細い糸が、通ってる」


ネリスが、慎重に、線をたどりながら、答えた。


---


「触らなければ、大丈夫。避けて、通ろう」


ネリスが、指示する。


「さすが、だな」


カインが、感心したように、言う。


「これが、あって、良かった」


ネリスが、自分の爪を、そっと、見つめた。


---


さらに奥へと進むと、通路の先、開けた場所に、小さな木箱が、静かに、置かれていた。


「宝箱、あったな」


カインが、目を、見開く。


「見てみる」


ネリスが、静かに、進み出た。


---


爪の先で、蓋の縁を、そっと、叩く。


うっすらとした光の線が、蓋の周りに、浮かび上がった。


「これも、罠、ある」


ネリスが、静かに、言う。


「どこ」


ダダが、聞く。


「蝶番の、内側。開け方、間違えると、発動する」


---


ネリスが、慎重に、蓋の隙間に、細い道具を差し込んでいく。


「金具、こっちにある」


指先が、正確に、仕掛けを、探り当てていった。


かちり、という、小さな音が、響く。


「よし、これで、大丈夫」


---


ネリスが、ゆっくりと、蓋を、持ち上げる。


中から、鈍い光を放つ魔石と、太い柄を持つ、大槌のような武器が、姿を現した。


「これは……」


ダダが、思わず、声を、上げた。


---


「ウォーハンマー、か」


カインが、覗き込みながら、言う。


ダダが、それを、そっと、両手で、持ち上げた。


ずしりとした、確かな重さが、手のひらに、伝わってくる。


---


「これ……」


ダダの声が、わずかに、震えていた。


「実家の、工房にあったやつと、似てる」


「似てる、って、どんな風に」


ミラが、聞く。


---


「柄の握り方、頭の形。うちの一族が、代々、打ってきた形に、近い」


ダダが、柄を、確かめるように、握り直す。


「まさか、ここで、出会うとはな」


---


「使えそうか」


カインが、聞く。


「使える。というか」


ダダが、軽く、素振りをしてみせる。


風を切る音が、いつもの盾とは、違う響きを、持っていた。


「盾一本より、これがあれば、攻めにも、転じられる」


---


「嬉しそうだな」


ネリスが、からかうように、言う。


「嬉しい。素直に」


ダダが、隠さずに、答えた。


その顔には、これまで、あまり見せたことのない、明るさがあった。


---


「装備条件、鑑定してもらわないと、わからないけど」


カインが、言う。


「わかってる。でも、これは」


ダダが、ウォーハンマーを、しっかりと、抱え直した。


「他の誰かに、譲る気は、しないな」


---


「今日は、良い拾い物だったな」


カインが、皆を見回しながら、言う。


「レベルも、これから、取り戻せる」


ダダが、静かに、頷く。


「拾い物も、悪くない、収穫だ」


---


「今日は、ここまでにしよう」


カインが、言う。


「明日、アプレイザルで、これ、見てもらおう」


ダダが、ウォーハンマーを、大事そうに、見つめながら、言った。


「行こう」


六人の声が、揃った。


---


九層前室から、篝火の灯る道を、六人は、ゆっくりと、戻り始めた。


「今日、少しだけ、前を、向けた気がする」


ノリアが、静かに、呟く。


「少しずつでも、前に、進むしかない」


カインが、答えた。


ダダの手の中で、ウォーハンマーが、篝火の光を、静かに、受けていた。


---


門を抜けて、外に出ると、日は、まだ、傾ききっていなかった。


フラグメンツに寄ると、ガラントが、すぐに、気づいた。


「今日は、いい顔してるな」


「拾い物、あったので」


ダダが、ウォーハンマーを、そっと、掲げてみせる。


「ほう、これは」


ガラントが、目を、細めた。


「フォージタウンの、匂いがする作りだな」


「わかりますか」


ダダが、少し、驚いたように、言う。


「長く、この街にいればな」


ガラントが、静かに、笑った。


---


「明日、鑑定に、出すのか」


ガラントが、聞く。


「出す。それから、また、九層に、潜る」


ダダが、答えた。


「一段階、落ちた分は、必ず、取り戻す」


「取り戻せるさ、お前たちなら」


ガラントの言葉に、ダダが、静かに、頷いた。


---


夜が更けていく中、六人は、それぞれの卓で、今日の収穫を、語り合っていた。


レベルは、まだ、元には戻っていない。


だが、手の中には、確かな一歩が、残っていた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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