第70話「伸びた分だけ、駆け抜ける」
マランの世界、毎日投稿中です。
当面、数話を連続投稿の予定です。
お楽しみいただけましたら幸いです。
アプレイザルの窓口に、六人分の光が、順番に灯っていく。
「カインさん、レベル10です」
「10……! 便利屋、大台か」
カインが、思わず、声を上げた。
「新規習得は、ありません。ただ、業火弾、群癒、それぞれ、使用回数が、増えています」
鑑定士が、続ける。
「新しい呪文じゃなくても、回数が増えるだけで、だいぶ違うよな」
ダダが、感心したように言う。
「そうだな。使える場面、単純に、増える」
カインが、頷いた。
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「次、ダダさんとネリスさん」
「盾役、レベル14です」
「斥候、レベル14」
二人が、ほぼ同時に、頷いた。
「順調に、伸びてるでござるな」
ワングが、静かに、言う。
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「ノリアさんと、ミラさん、ワングさんは」
「三名とも、変化なし、でした」
鑑定士が、淡々と、告げる。
「私は、見送り、か」
ノリアが、静かに、呟く。
「レベル、抑えてるつもりは、ないんだけど」
「気にしなくていい」
ミラが、静かに、言う。
「私も、変化なしだから。伸びる時期は、人それぞれ」
「そうだな」
カインが、頷いた。
「今日も、業炎獄、十分、頼りにしてる」
「わかってる。任せて」
ノリアが、小さく、笑った。
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窓口を出て、六人は、通りを歩きながら、今日の方針を、話し合った。
「今日、九層まで、まとめて、行くんだよな」
ダダが、確認するように、言う。
「九回、戦闘があるはずだ。一回ごとに、六体フルで」
カインが、答えた。
「一層から、九層まで、順番に」
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「最初のうちは」
ノリアが、静かに、言う。
「私の遠隔攻撃で、先制する」
「業炎獄、温存しといてくれ」
カインが、頷く。
「わかってる。浅い階層は、早めに、削り切る」
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「六層相当に、なったら」
カインが、続ける。
「静黙と、眠霧を、複数人で、掛けていく」
「あの階層、動きが読みにくい敵、多かったからな」
ダダが、頷いた。
「封じてから、確実に、削る方が、いい」
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「八層も、同じ手で、行けそうか」
ミラが、聞く。
「行けるはずだ。静黙と、眠霧、両方とも、チャージ、十分にある」
カインが、答えた。
「九層は」
ネリスが、聞く。
「あのグラヴォルの、上位種だ。一度、経験してる分、今日は、落ち着いて、いける」
カインが、静かに、頷いた。
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「よし」
カインが、皆を見回す。
「今日で、一気に、九層まで、片づけよう」
「賛成」
六人の声が、揃った。
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十層の前室で、紋様に足を踏み入れる。
白い光が、視界を包み、気づくと、通路の奥に、最初の気配が生まれていた。
一層のゴブリンが、六体。
「行くぞ」
カインの合図と同時に、ノリアの手が、翳された。
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「業火弾」
炎の弾が、通路いっぱいに広がり、六体まとめて、灰に変える。
「一発、か」
ダダが、拍子抜けしたように、呟く。
「レベル、上がった甲斐、あるな」
カインが、剣を、鞘に納めながら、答えた。
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二層、三層と、同じ調子で、進んでいく。
ノリアの一撃で、削り切れない分は、ダダとネリスが、前に出て、片づける。
「ネリス、動き、いつもより、鋭くないか」
ミラが、感心したように、言う。
「レベル、上がったからね。体が、軽い」
ネリスの爪が、次々と、急所を、正確に捉えていった。
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「ダダも、盾さばき、変わったよな」
カインが、戦いながら、言う。
「気のせいだ」
「気のせいじゃない。受け方、明らかに、変わってる」
ダダは、答えず、盾を、静かに構え直した。
だが、その口元は、わずかに、緩んでいた。
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四層。
翅を持つ女王が、二体、現れる。
「業火弾」
ノリアの一撃が、通路を、炎で満たした。
「もう、これで、慣れたな」
カインが、苦笑しながら、言う。
「前は、あんなに、苦戦した相手だったのに」
ミラが、灰の中の魔石を、拾い上げながら、呟いた。
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五層。
分岐廊下の魔物たちが、まとまって、現れる。
甲殻型、植物型、擬態系。
種類の違う敵が、一度に来るのが、この階層の厄介さだった。
「タイプ、バラバラだ」
ダダが、盾を構えながら、言う。
「構わない。数さえ揃えば、こっちも、対応できる」
カインが、答えた。
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ネリスが、擬態系の輪郭を、瞬時に見抜き、爪を突き立てる。
「見えた」
短い声とともに、灰に変わる。
ワングの刀が、植物型の根元を、正確に断ち、ダダの盾が、甲殻型を、押し込んでいく。
数分と経たず、五層相当の六体は、すべて、片づいていた。
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「このペースなら」
ワングが、刀を納めながら、言う。
「今日中に、九層まで、行けそうでござるな」
「行こう。行けるうちに」
カインが、答えた。
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六層相当の気配が生まれた時、カインが、すぐに、声を上げた。
「静黙、いくぞ」
「静黙」
カインとノリアの声が、重なる。
魔法を使う気配のあった数体が、光に包まれ、沈黙した。
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「眠霧、続けて」
ワングの声とともに、白い霧が、残る敵を包む。
数体が、そのまま、崩れるように、眠りに落ちた。
「今のうちに」
ダダとネリス、ワングが、一斉に、踏み込む。
抵抗もできないまま、六体は、灰に変わっていった。
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「これは、楽でござるな」
ワングが、静かに、言う。
「楽なんじゃなくて、対策が、ハマっただけだ」
カインが、答えた。
「対策も、実力のうちだろ」
ダダが、付け加えた。
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七層。
同じ手順が、繰り返される。
静黙で、魔法を封じ、眠霧で、動きを止め、前衛三人が、確実に、仕留めていく。
「これ、流れ作業みたいになってきたな」
ダダが、盾を下ろしながら、言う。
「悪いことじゃない。安定してる、ってことだ」
カインが、答えた。
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八層。
罠の多い階層だったはずが、再現された敵たちに、罠そのものはなかった。
「敵だけ、なんだな、ここで再現されるのは」
ネリスが、周囲を確認しながら、呟く。
「そのぶん、まだ、助かる」
ミラが、静かに、頷いた。
静黙と眠霧を、迷わず重ねがけし、六体は、ほとんど反撃らしい反撃もできないまま、灰に変わっていった。
「八層の敵、初見の時は、あんなに、手こずったのに」
ミラが、灰の消えた後を、見つめながら、呟いた。
「今なら、こんなものか」
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そして、九層相当の気配が、生まれた。
甲殻をまとった、巨大な影。
「グラヴォルの、上位種、六体……いや」
カインが、目を凝らす。
「六体、揃って、来る、ってことか」
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「前に戦った時とは、わけが違うでござるな」
ワングが、刀を構える。
「でも、動きは、覚えてる」
ネリスが、静かに、答えた。
「関節の隙間、前と同じだ」
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「静黙、眠霧、まず、二体分」
カインの声に、ノリアとワングが、応じる。
「静黙」
「眠霧」
二体の動きが、鈍る。
「残り四体、力押しで、行くぞ」
カインが、剣を構えた。
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ダダが、盾で、二体を受け止め、ネリスが、側面から、爪を突き立てる。
「業炎獄」
ノリアの炎が、動きの止まった二体を、焼き尽くした。
残る二体は、ダダが引きつけ、ワングとカインが、左右から、挟み込む。
「今だ!」
二人の刃が、同時に、核を貫いた。
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灰が、六つ分、静かに、舞い落ちる。
「終わった……のか」
カインが、荒い息のまま、周囲を見渡す。
「終わった」
ダダが、盾を下ろしながら、頷いた。
「前より、明らかに、楽だった」
ネリスが、爪の汚れを、払いながら、言う。
「積み上げてきた分、確かに、力になってる」
ミラが、静かに、微笑んだ。
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灰の消えた通路の先に、これまでとは違う、大きな扉が、姿を現していた。
装飾の施された、重厚な造りの扉。
「これが……」
カインが、息を、飲む。
「十層の、最後の部屋、でござるな」
ワングが、静かに、言った。
六人は、しばらく、その扉を、無言で、見つめ続けた。
「今日は、ここまでにするか」
カインが、静かに、口を開く。
「この扉、開けるなら、万全の状態で、来た方がいい」
「賛成」
ダダが、即座に、頷いた。
「九層分、まとめて、駆け抜けた日に、ここで、無理はしたくないでござるな」
ワングが、静かに、付け加える。
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六人は、来た道を、ゆっくりと、戻り始めた。
紋様のある場所に足を踏み入れ、白い光に、包まれていく。
気づくと、一層の、見慣れた通路に、立っていた。
「今日一日で、九層分」
ノリアが、静かに、呟く。
「積み上げてきたもの、無駄じゃなかったな」
カインが、答えた。
扉の向こうに、何が待っているのか。
それは、まだ、誰にも、わからなかった。
いかがでしょうか?
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