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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第70話「伸びた分だけ、駆け抜ける」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

アプレイザルの窓口に、六人分の光が、順番に灯っていく。


「カインさん、レベル10です」


「10……! 便利屋、大台か」


カインが、思わず、声を上げた。


「新規習得は、ありません。ただ、業火弾、群癒、それぞれ、使用回数が、増えています」


鑑定士が、続ける。


「新しい呪文じゃなくても、回数が増えるだけで、だいぶ違うよな」


ダダが、感心したように言う。


「そうだな。使える場面、単純に、増える」


カインが、頷いた。


---


「次、ダダさんとネリスさん」


「盾役、レベル14です」


「斥候、レベル14」


二人が、ほぼ同時に、頷いた。


「順調に、伸びてるでござるな」


ワングが、静かに、言う。


---


「ノリアさんと、ミラさん、ワングさんは」


「三名とも、変化なし、でした」


鑑定士が、淡々と、告げる。


「私は、見送り、か」


ノリアが、静かに、呟く。


「レベル、抑えてるつもりは、ないんだけど」


「気にしなくていい」


ミラが、静かに、言う。


「私も、変化なしだから。伸びる時期は、人それぞれ」


「そうだな」


カインが、頷いた。


「今日も、業炎獄、十分、頼りにしてる」


「わかってる。任せて」


ノリアが、小さく、笑った。


---


窓口を出て、六人は、通りを歩きながら、今日の方針を、話し合った。


「今日、九層まで、まとめて、行くんだよな」


ダダが、確認するように、言う。


「九回、戦闘があるはずだ。一回ごとに、六体フルで」


カインが、答えた。


「一層から、九層まで、順番に」


---


「最初のうちは」


ノリアが、静かに、言う。


「私の遠隔攻撃で、先制する」


「業炎獄、温存しといてくれ」


カインが、頷く。


「わかってる。浅い階層は、早めに、削り切る」


---


「六層相当に、なったら」


カインが、続ける。


「静黙と、眠霧を、複数人で、掛けていく」


「あの階層、動きが読みにくい敵、多かったからな」


ダダが、頷いた。


「封じてから、確実に、削る方が、いい」


---


「八層も、同じ手で、行けそうか」


ミラが、聞く。


「行けるはずだ。静黙と、眠霧、両方とも、チャージ、十分にある」


カインが、答えた。


「九層は」


ネリスが、聞く。


「あのグラヴォルの、上位種だ。一度、経験してる分、今日は、落ち着いて、いける」


カインが、静かに、頷いた。


---


「よし」


カインが、皆を見回す。


「今日で、一気に、九層まで、片づけよう」


「賛成」


六人の声が、揃った。


---


十層の前室で、紋様に足を踏み入れる。


白い光が、視界を包み、気づくと、通路の奥に、最初の気配が生まれていた。


一層のゴブリンが、六体。


「行くぞ」


カインの合図と同時に、ノリアの手が、翳された。


---


「業火弾」


炎の弾が、通路いっぱいに広がり、六体まとめて、灰に変える。


「一発、か」


ダダが、拍子抜けしたように、呟く。


「レベル、上がった甲斐、あるな」


カインが、剣を、鞘に納めながら、答えた。


---


二層、三層と、同じ調子で、進んでいく。


ノリアの一撃で、削り切れない分は、ダダとネリスが、前に出て、片づける。


「ネリス、動き、いつもより、鋭くないか」


ミラが、感心したように、言う。


「レベル、上がったからね。体が、軽い」


ネリスの爪が、次々と、急所を、正確に捉えていった。


---


「ダダも、盾さばき、変わったよな」


カインが、戦いながら、言う。


「気のせいだ」


「気のせいじゃない。受け方、明らかに、変わってる」


ダダは、答えず、盾を、静かに構え直した。


だが、その口元は、わずかに、緩んでいた。


---


四層。


翅を持つ女王が、二体、現れる。


「業火弾」


ノリアの一撃が、通路を、炎で満たした。


「もう、これで、慣れたな」


カインが、苦笑しながら、言う。


「前は、あんなに、苦戦した相手だったのに」


ミラが、灰の中の魔石を、拾い上げながら、呟いた。


---


五層。


分岐廊下の魔物たちが、まとまって、現れる。


甲殻型、植物型、擬態系。


種類の違う敵が、一度に来るのが、この階層の厄介さだった。


「タイプ、バラバラだ」


ダダが、盾を構えながら、言う。


「構わない。数さえ揃えば、こっちも、対応できる」


カインが、答えた。


---


ネリスが、擬態系の輪郭を、瞬時に見抜き、爪を突き立てる。


「見えた」


短い声とともに、灰に変わる。


ワングの刀が、植物型の根元を、正確に断ち、ダダの盾が、甲殻型を、押し込んでいく。


数分と経たず、五層相当の六体は、すべて、片づいていた。


---


「このペースなら」


ワングが、刀を納めながら、言う。


「今日中に、九層まで、行けそうでござるな」


「行こう。行けるうちに」


カインが、答えた。


---


六層相当の気配が生まれた時、カインが、すぐに、声を上げた。


「静黙、いくぞ」


「静黙」


カインとノリアの声が、重なる。


魔法を使う気配のあった数体が、光に包まれ、沈黙した。


---


「眠霧、続けて」


ワングの声とともに、白い霧が、残る敵を包む。


数体が、そのまま、崩れるように、眠りに落ちた。


「今のうちに」


ダダとネリス、ワングが、一斉に、踏み込む。


抵抗もできないまま、六体は、灰に変わっていった。


---


「これは、楽でござるな」


ワングが、静かに、言う。


「楽なんじゃなくて、対策が、ハマっただけだ」


カインが、答えた。


「対策も、実力のうちだろ」


ダダが、付け加えた。


---


七層。


同じ手順が、繰り返される。


静黙で、魔法を封じ、眠霧で、動きを止め、前衛三人が、確実に、仕留めていく。


「これ、流れ作業みたいになってきたな」


ダダが、盾を下ろしながら、言う。


「悪いことじゃない。安定してる、ってことだ」


カインが、答えた。


---


八層。


罠の多い階層だったはずが、再現された敵たちに、罠そのものはなかった。


「敵だけ、なんだな、ここで再現されるのは」


ネリスが、周囲を確認しながら、呟く。


「そのぶん、まだ、助かる」


ミラが、静かに、頷いた。


静黙と眠霧を、迷わず重ねがけし、六体は、ほとんど反撃らしい反撃もできないまま、灰に変わっていった。


「八層の敵、初見の時は、あんなに、手こずったのに」


ミラが、灰の消えた後を、見つめながら、呟いた。


「今なら、こんなものか」


---


そして、九層相当の気配が、生まれた。


甲殻をまとった、巨大な影。


「グラヴォルの、上位種、六体……いや」


カインが、目を凝らす。


「六体、揃って、来る、ってことか」


---


「前に戦った時とは、わけが違うでござるな」


ワングが、刀を構える。


「でも、動きは、覚えてる」


ネリスが、静かに、答えた。


「関節の隙間、前と同じだ」


---


「静黙、眠霧、まず、二体分」


カインの声に、ノリアとワングが、応じる。


「静黙」


「眠霧」


二体の動きが、鈍る。


「残り四体、力押しで、行くぞ」


カインが、剣を構えた。


---


ダダが、盾で、二体を受け止め、ネリスが、側面から、爪を突き立てる。


「業炎獄」


ノリアの炎が、動きの止まった二体を、焼き尽くした。


残る二体は、ダダが引きつけ、ワングとカインが、左右から、挟み込む。


「今だ!」


二人の刃が、同時に、核を貫いた。


---


灰が、六つ分、静かに、舞い落ちる。


「終わった……のか」


カインが、荒い息のまま、周囲を見渡す。


「終わった」


ダダが、盾を下ろしながら、頷いた。


「前より、明らかに、楽だった」


ネリスが、爪の汚れを、払いながら、言う。


「積み上げてきた分、確かに、力になってる」


ミラが、静かに、微笑んだ。


---


灰の消えた通路の先に、これまでとは違う、大きな扉が、姿を現していた。


装飾の施された、重厚な造りの扉。


「これが……」


カインが、息を、飲む。


「十層の、最後の部屋、でござるな」


ワングが、静かに、言った。


六人は、しばらく、その扉を、無言で、見つめ続けた。


「今日は、ここまでにするか」


カインが、静かに、口を開く。


「この扉、開けるなら、万全の状態で、来た方がいい」


「賛成」


ダダが、即座に、頷いた。


「九層分、まとめて、駆け抜けた日に、ここで、無理はしたくないでござるな」


ワングが、静かに、付け加える。


---


六人は、来た道を、ゆっくりと、戻り始めた。


紋様のある場所に足を踏み入れ、白い光に、包まれていく。


気づくと、一層の、見慣れた通路に、立っていた。


「今日一日で、九層分」


ノリアが、静かに、呟く。


「積み上げてきたもの、無駄じゃなかったな」


カインが、答えた。


扉の向こうに、何が待っているのか。


それは、まだ、誰にも、わからなかった。


いかがでしょうか?


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よろしくお願いいたします。

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