第68話「再びたどる道」
マランの世界、毎日投稿中です。
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前室の扉をくぐると、昨日と同じ壁の文字が、六人を迎えた。
「この迷宮を、再度たどる、か」
カインが、もう一度、読み上げる。
「意味、わかるといいけど」
ネリスが、通路の奥を見つめながら、呟いた。
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「行くか」
ダダが、盾を構え直す。
「行こう」
カインの声に、迷いはなかった。
六人は、前室を抜け、十層の通路へと、足を踏み入れた。
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通路は、これまでの九層とは、明らかに違う造りだった。
石壁が、やけに広く、真っ直ぐ続いている。
「これ、なんか」
ネリスが、周囲を見渡しながら、言う。
「一層に、似てないか」
ダダが、低く、答えた。
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その言葉と同時に、通路の奥から、複数の気配が近づいてきた。
姿を現したのは、錆びた短剣を持つ、小柄な魔物だった。
「ゴブリン……?」
カインが、目を見開く。
一体、二体と、数えるうちに、六体まで揃った。
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「懐かしい、というか」
ミラが、静かに、言う。
「懐かしすぎる」
ダダが、苦笑した。
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「とりあえず、片づけよう」
カインが、剣を構える。
「ダダ、前」
「了解」
ダダの盾が、先頭の一体を、正面から受け止めた。
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「浅い」
ダダが、短く、呟く。
九層まで潜ってきた六人にとって、その一撃は、拍子抜けするほど軽かった。
ワングの刀が、二体を、続けざまに斬り伏せる。
ネリスの爪が、もう一体の急所を、正確に捉えた。
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「業火弾」
ノリアの声とともに、残る三体が、まとめて炎に包まれた。
数分と経たず、六体のゴブリンは、すべて灰になって消えていった。
「これだけなら、な」
カインが、剣を納めながら、言う。
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だが、灰が消える間もなく、通路の先に、新たな気配が生まれた。
「また、来る」
ネリスが、耳を伏せる。
現れたのは、先ほどより、やや大柄なゴブリンの群れだった。
数えると、やはり六体。
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「これ、二層のやつだよな」
ダダが、記憶をたどるように、言う。
「たぶん」
カインが、頷く。
「一層の次に、二層。順番、そのままだ」
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「油断は、しない」
ワングが、静かに、刀を構え直す。
「油断はしないでござるが、この程度なら」
「言い切るな、まだ」
カインが、苦笑しながら、釘を刺した。
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ダダとワングが、前衛として、群れを押し込んでいく。
ミラの聖光弾が、後方から援護に入った。
「聖光弾」
光が、二体をまとめて吹き飛ばす。
「これも、余裕あるな」
カインが、剣を振るいながら、言う。
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だが、その一言が、フラグのように響いた瞬間。
六体を倒し終えた通路の奥から、地響きのような音が、届いた。
「今の、なに」
ネリスが、耳を、鋭く伏せる。
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土煙とともに、姿を現したのは、甲殻に覆われた、巨大な多脚の生物だった。
一体だけではない。
二体、三体。
同じ姿の影が、通路いっぱいに、並んでいた。
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「グラヴォル……!?」
カインの声が、掠れた。
「三体……!?」
ダダが、盾を握り直しながら、絶句する。
「三層の主が、なんで、三体も」
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「本物、なのか」
ノリアが、警戒しながら、聞く。
「わからない。でも、来る」
カインが、剣を構え直した。
三体のグラヴォルが、一斉に、脚を振り上げる。
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「散開!」
ダダの叫びに、六人が、素早く距離を取った。
一体の脚が、床を叩き、通路全体が震える。
「重い、これ、九層でも、まだ通用する重さだ……!」
ダダが、盾越しに、うめいた。
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「ワング、一体、頼めるか!」
カインが、叫ぶ。
「承知!」
ワングが、左の刀で受け、右の刃を、関節の隙間へ、正確に突き込む。
「入った!」
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「もう一体、俺とダダで!」
カインが、続けて、叫ぶ。
「了解!」
ダダが、引きつけ役に回り、カインが、側面から斬り込んでいく。
刃が、以前より、深く食い込んだ。
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「最後の一体は!」
ミラが、周囲を見渡しながら、聞く。
「ノリア、頼む!」
カインが、叫ぶ。
「わかった」
ノリアが、両手を、残る一体へと向ける。
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「業炎獄」
第五階梯の炎が、甲殻を、内側から焼き貫いた。
グラヴォルが、大きく仰け反る。
「今だ、ネリス!」
「わかってる!」
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ネリスの爪が、露わになった継ぎ目に、深く突き刺さった。
一体、また一体と、グラヴォルの巨体が、崩れ落ちていく。
最後の一体は、ワングの刃が、核を正確に貫いた。
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しばらく、誰も、動かなかった。
「終わった……のか」
カインが、剣を支えに、荒い息をつく。
「終わった」
ダダが、盾を下ろしながら、頷いた。
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「みんな、怪我は」
ミラが、すぐに、確認に回る。
「大丈夫」
「大丈夫でござる」
「なんとか」
口々に、答えが返ってくる。
「群癒、使っておく」
ミラが、両手を広げた。
「群癒」
優しい光が、六人全体を、包み込む。
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灰になった三体のグラヴォルの跡には、それぞれ、見覚えのある大きさの魔石が、転がっていた。
「本当に、三層の、あれと同じだ」
カインが、拾い上げながら、呟く。
「同じ、というか」
ミラが、静かに、続ける。
「一層のゴブリン、二層のゴブリン、三層のグラヴォル」
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「順番通り、来てる」
ノリアが、静かに、言う。
「今までたどってきた道を、そのまま、なぞらされてる、ってことか」
カインが、壁の文字を、思い出すように、見つめた。
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「『この迷宮を、再度たどる』……これが、そういうことか」
カインの声に、静かな納得が滲んでいた。
「今までの階層を、一つずつ、もう一度」
ダダが、低く、続ける。
「順番に、思い出させられてる、みたいだな」
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「三体も、まとめて来た時は、正直、肝が冷えたでござるが」
ワングが、刀を納めながら、言う。
「拙者たちが、九層まで潜ってきた分、手加減なしで来る、ということかもしれぬ」
「その理屈、嫌な感じに、筋が通ってるな」
カインが、苦笑した。
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「じゃあ」
ネリスが、通路の奥を、じっと見つめる。
「次は……四層で出会った魔物、ってことだよな」
その一言に、六人の間に、一瞬の沈黙が落ちた。
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「四層の主って」
ミラが、静かに、口を開く。
「あの、女王」
「あの女王、か」
カインが、剣の柄を、握り直す。
「アーカイブにも、まだ名前、なかったよな、あれ」
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「なかった」
ダダが、頷く。
「一体でも、あれだけ、骨が折れた相手だ」
「そんな敵が、複数来るとしたら」
ノリアが、静かに、付け加える。
「今の、グラヴォル以上に、なるかもしれない」
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「望むところ、とは、言えないけど」
ネリスが、通路の先を、見据えながら、言う。
「わかってるなら、備えられる」
「その通りでござるな」
ワングが、静かに、頷いた。
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「今日は、ここまでにしよう」
カインが、皆を見回す。
「四層の女王、まとめて相手にするなら、万全の状態で来た方がいい」
「賛成」
ダダが、即座に、頷いた。
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六人は、来た道を、慎重に戻り始めた。
途中、以前見つけた紋様のある場所に立ち寄り、そこへ、足を踏み入れる。
白い光が、視界を、静かに包んでいく。
気づくと、六人は、一層の、見慣れた通路に、立っていた。
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「今日は、三つ分の階層を、たどったことになるな」
カインが、確かめるように、言う。
「たどった」
ダダが、頷く。
「次は、四層の記憶だ」
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「あの女王が、複数来るとしたら」
ミラが、静かに、言う。
「今日以上に、気を引き締めないと」
「引き締める」
六人の声が、静かに、揃った。
まだ見ぬ、あの女王が待つ道は、確かに、その先にあった。
いかがでしょうか?
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