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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第63話「積み上げた実り」

翌朝、六人は、そわそわしながら、アプレイザルへ向かった。


「昨日の分、絶対、大きいはずだ」


カインが、歩きながら言う。


「大きいといいな」


ダダも、珍しく、落ち着かない様子だった。


「あれだけ、粘ったんだから、期待していいはず」


ネリスが、袋を、そっと撫でながら言う。


「期待しすぎて、外れたら、それはそれで」


ノリアが、少し、苦笑した。


---


窓口には、見慣れた鑑定士が座っていた。


「また、皆さんで」


「また皆さんで、です」


カインが、いつもの調子で答える。


「今日は、いつも以上に、そわそわしてますね」


「わかります?」


「わかります」


鑑定士が、静かに、口元を緩めた。


---


一人ずつ、台座に手をかざしていく。


「ダダさん、レベル13です」


「13!」


ダダが、思わず、大きな声を上げた。


「続いて、ネリスさん」


「斥候、レベル13」


「13……!」


ネリスも、目を丸くした。


---


「ノリアさん」


呼ばれて、ノリアが、台の前に立つ。


光が、これまでで一番、長く灯った。


「魔術師、レベル13です」


「13……! 一気に、四つも!」


ノリアが、思わず、声を上げた。


---


「習得状況ですが」


鑑定士が、続ける。


「第五階梯、業炎獄。第六階梯、帰郷の扉。第七階梯、終焉です」


「七階梯まで……!」


カインが、驚いたように、言う。


---


「相変わらず、飛び飛びなんだな、覚え方」


ダダが、感心したように言う。


「うん。今回も、各階梯、一つずつしか」


ノリアが、静かに、答えた。


「使用回数は」


カインが、聞く。


「第七階梯が1回。第六階梯も1回。第五階梯が3回。第四階梯が6回。第三階梯以下は、9回です」


鑑定士が、答えた。


「終焉って、確か……」


カインが、記憶をたどる。


「敵全体に、極大ダメージを与える、切り札級の呪文です」


鑑定士が、静かに、補足した。


「切り札、覚えたのか……」


カインが、感慨深げに、呟いた。


---


「次、カインさん」


呼ばれて、カインが、台の前に立つ。


「万能士、レベル9です」


「9!」


「第三階梯に、到達しています」


鑑定士が、続ける。


「アルカナ系、業火弾。ノストス系、群癒。それぞれ、1回です」


「三階梯まで、来たか」


カインが、静かに、拳を握った。


---


「次、ミラさん」


呼ばれて、ミラが、台の前に立つ。


光が、さらに長く、灯った。


「僧侶、レベル13です」


「13……!」


ミラが、静かに、目を見開いた。


---


「第七階梯、神域。パーティ全体を、一定時間、無敵化する呪文です」


鑑定士が、続ける。


「無敵化……そんな呪文まで」


カインが、驚いたように、言う。


「それと、第六階梯以下、すべての呪文が、揃いました」


「全部……」


ミラが、静かに、自分の手を見つめた。


---


「使用回数は」


カインが、聞く。


「第六階梯が3回。第五階梯が6回。第四階梯が8回。第三階梯以下は、9回です」


鑑定士が、答えた。


「これは、すごいな」


ダダが、静かに、言った。


「無敵化の呪文まで、覚えるとは、思わなかった」


ミラが、まだ、実感の湧かない様子で、呟く。


「使う場面、あるといいな。というか、なくて済む方が、いいのかもだけど」


カインが、少し、複雑な顔で、言った。


---


「最後、ワングさん」


呼ばれて、ワングが、台の前に立つ。


「侍、レベル16です」


「16でござるか」


ワングが、静かに、頷いた。


---


「第五階梯、跳躍門。ダンジョン内の、既知の地点へ、転移する呪文です」


鑑定士が、続ける。


「使用回数、2回です」


「それと、第五階梯以下、すべての呪文が、揃っています」


鑑定士が、付け加えた。


---


「使用回数は」


カインが、聞く。


「第五階梯が4回。第四階梯が6回。第三階梯以下は、9回です」


鑑定士が、答えた。


「拙者も、着実に、伸びてるでござるな」


ワングが、静かに、言った。


「16レベルって、もう、大ベテランの域だよな」


カインが、感心したように、言う。


「まだまだ、上には、上があるでござる」


ワングが、静かに、笑った。


---


窓口を離れ、外に出る。


「今日は、みんな、大幅に、伸びたな」


カインが、皆を見回しながら言う。


「昨日の九層、稼げた甲斐、あったな」


ダダが、満足そうに、答えた。


「危なかったけど、無駄には、ならなかった」


ミラが、静かに、頷いた。


---


「そういえば」


カインが、思い出したように、言う。


「アーカイブに、九層の報告、しに行こう。デーモンの群れのこと」


「そうだった」


ダダが、頷いた。


「あの一帯、記録に残しておいた方がいい」


---


その足で、六人は、アーカイブへ向かった。


ティリーに、九層の扉のこと、デーモンとの戦い、そして、あの群れの湧く一帯のことを、順を追って伝える。


「人型の、魔法を使う魔物、複数体。撃破後、仲間を呼ぶ習性あり。記録しておきます」


ティリーが、淡々と、記録帳に書き記していく。


---


「あの、湧き続ける仕組み、名前とか、ついてないんですか」


ネリスが、聞く。


「今の段階では、まだ、何とも。ただ」


ティリーが、記録帳から、顔を上げる。


「同様の報告が、他のパーティからも、稀に上がってきています。継続して発生する魔物の集団、という現象自体は、把握されています」


---


「じゃあ、養殖できる場所、って、他にも、あるんですね」


カインが、身を乗り出す。


「可能性は、あります。ただ、リスクも伴うので、推奨は、していません」


ティリーの答えは、いつも通り、簡潔だった。


「今回の記録、貴重な事例として、扱わせていただきます」


---


「もう一つ、お願いが」


カインが、続ける。


「例のスクロールのこと、何か、進展ありませんか」


「確認します」


ティリーが、別の記録を、めくった。


---


「エンポリアムの職人から、追加の見解が、届いています」


ティリーが、静かに、読み上げる。


「通常の静黙のスクロールより、はるかに高純度の魔素で、作られている可能性が高い、とのことです」


「高純度……」


ノリアが、繰り返す。


---


「効果範囲が、単体ではなく、周囲一帯に及んだのも、それが理由ではないか、という見解です」


ティリーが、続ける。


「断定は、できませんが、上位互換の、希少なスクロールだったのではないか、とのことでした」


「あれ、そんなに、貴重なものだったのか……」


カインが、改めて、驚いたように言う。


---


「使い切ってしまったのは、少し、惜しかったですね」


ミラが、静かに、言う。


「でも、あの場面で使わなかったら、もっと、まずいことになってた」


カインが、答える。


「使うべき時に、使えたなら、それでいい」


ダダが、静かに、付け加えた。


---


「今後、似たものを見つけたら、慎重に、扱った方が良さそうですね」


ティリーが、静かに、言う。


「そうします」


カインが、頷いた。


「次に見つけたら、今度は、もっと、じっくり、使いどころ、考えような」


ダダが、静かに、付け加える。


「賛成」


ノリアが、頷いた。


---


アーカイブを出ると、夕暮れの光が、通りを、静かに染めていた。


「今日は、本当に、盛りだくさんだったな」


カインが、皆を見回しながら言う。


「レベルアップ、九層の報告、スクロールの正体」


ミラが、指を折りながら、数える。


「三つとも、大きな収穫だった」


ダダが、静かに、頷いた。


---


「九層、まだまだ、続きがあるんだよな」


ネリスが、思い出したように、言う。


「扉の鍵も、まだ、見つかってないし」


カインが、頷いた。


「明日から、また、頑張るか」


「頑張ろう」


六人の声が、揃った。


夕暮れの光に向かって、六人は、ゆっくりと、歩き出した。


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