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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第62話「封じられた牙」(後半)

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

「ノリア、静黙、まだ、いけるか!」


カインが、叫ぶ。


「駄目、もう、切れた!」


ノリアが、悔しそうに、答えた。


---


新たな気配が、次々と、通路の奥から、姿を現し始めていた。


赤黒い肌の魔物が、二体、三体と、増えていく。


「まずいな、これ……!」


ダダが、盾を構え直しながら、呟いた。


---


「待って!」


ノリアが、袋から、あのスクロールを、取り出す。


「これ、使う!」


「あの、正体不明の……!」


カインが、驚いたように、振り返った。


---


「今しか、ない気がする!」


ノリアが、叫びながら、スクロールを、勢いよく開いた。


見えない力が、これまでとは、明らかに違う密度で、辺り一帯に、広がっていく。


---


デーモンたちが、一斉に、体を、大きく震わせた。


「今の……!」


ネリスが、目を見開く。


デーモンの手のひらに、灯りかけていた光が、次々と、かき消えていった。


---


「効いてる……! 全部に!」


カインが、驚いたように、叫ぶ。


「一体だけじゃ、ない……!」


ダダも、信じられないように、周囲を見回した。


---


「魔法、使えなく、なってる……!」


ミラが、静かに、確かめるように、言った。


デーモンたちは、なおも、拳を振り上げ、迫ってくる。


だが、その手のひらに、もう、あの光は、灯らなかった。


---


「これなら、いける!」


カインが、剣を構え直す。


「ダダ、前! 加護の盾、頼む!」


「加護の盾!」


ミラの声が、響く。


淡い光が、ダダを、しっかりと、包み込んだ。


---


「守りの聖歌も!」


ミラが、続けて、声を上げる。


温かい光が、六人全体を、薄く、覆っていく。


「二重に、かけたのか!」


ダダが、驚いたように、言う。


「今日は、粘る勝負になりそうだから」


ミラが、静かに、答えた。


---


「ダダ、抑えろ! ワング、カインで、削る!」


カインが、叫ぶ。


「了解!」


「承知!」


物理の力だけで、デーモンを、じわじわと、押し込んでいく。


「魔法さえ、封じれば、なんとかなる相手だ!」


カインが、手応えを、確かめるように、言った。


---


一体、また一体と、デーモンが、崩れ落ちていく。


だが、崩れ落ちるたびに、また、新しい気配が、通路の奥から、近づいてきた。


「呼ぶの、止まらないな、これ」


ネリスが、爪を振るいながら、言う。


「止まらないなら」


カインが、ふと、動きを止めた。


---


「あえて、二体、残すか」


「残す、って」


ダダが、聞き返す。


「呼び続けてくれるなら、こっちにとっては、都合がいい」


カインが、素早く、状況を整理する。


「新しく来る奴らだけ、片づけていけば」


---


「経験値、稼ぎ放題、ってことか」


ダダが、にやりと、笑った。


「そういうことだ。二体だけ、押さえ込んで、残りを、狩る」


カインの言葉に、六人が、一斉に、頷いた。


---


「ワング、ダダ、二体、頼む! 抑えるだけでいい!」


カインが、叫ぶ。


「承知!」


「了解!」


ワングとダダが、最初の二体を、押さえ込む役に、回った。


「残りは、俺とネリスとノリアで!」


カインが、剣を構え、新手へと、踏み込んでいく。


---


新たに現れたデーモンも、やはり、魔法を、使えなかった。


「効果、続いてる……!」


ノリアが、驚いたように、呟く。


「今のうちに!」


カインの剣が、新手の一体を、正確に、切り伏せた。


---


「ネリス、隙間から!」


「任せて!」


ネリスの爪が、次々と、新手の急所を、捉えていく。


一体、また一体と、崩れ落ちていった。


---


「ミラ、大丈夫か!」


カインが、後方に、叫ぶ。


「まだ、いける! でも、そろそろ……!」


ミラが、答えながら、加護の盾を、ダダに、かけ直す。


「加護の盾!」


---


戦いは、長く、続いた。


「ダダ、ワング、そっちは!」


カインが、合間を縫って、叫ぶ。


「まだ、耐えられる!」


「拙者も、まだ、いける!」


二人の声に、確かな、粘りがあった。


---


新手が、次々と、現れては、六人の連携に、沈んでいく。


「これ、いつまで、続くんだ」


ネリスが、息を切らしながら、言う。


「わからない。でも、経験値は、着実に、稼げてる!」


カインが、答えた。


---


「ミラ、呪文、まだ、大丈夫か!」


カインが、心配そうに、聞く。


「正直、けっこう、使った……でも、まだ、少し……!」


ミラが、答える。


「無理は、するなよ!」


「わかってる……!」


---


さらに、何体もの新手を、六人は、着実に、片づけていった。


「ミラ、限界、近いか」


カインが、聞く。


「……近い。守りの聖歌、もう、切れそう」


ミラが、正直に、答えた。


---


「よし、ここらで……」


カインが、言いかけて、ふと、動きを止めた。


「待て。このまま、二体、残して退いたら」


「まずいのか」


ダダが、聞き返す。


「殲滅しないと、経験値、入らないって、確か……」


カインの声に、焦りが、にじんだ。


---


「本当に……!?」


ネリスが、鋭く、聞き返す。


「たぶん。パーティー単位で、決着つけないと駄目、って、前に聞いた覚えがある」


カインが、素早く、記憶をたどる。


「じゃあ、今まで倒した分まで、無駄になるのか!」


ダダが、驚いたように、叫んだ。


---


「無駄には、させない!」


カインが、剣を握り直す。


「ここで、全部、決める! 出し惜しみ、なしだ!」


「了解!」


「承知!」


「わかった!」


六人の声が、一斉に、揃った。


---


「ミラ、残ってる分、全部、使ってくれ!」


カインが、叫ぶ。


「わかった……! 守りの聖歌!」


ミラが、残った力を、振り絞るように、声を上げる。


温かい光が、もう一度、六人を、包み込んだ。


---


「ノリア、業炎獄、まだ、残ってるか!」


カインが、叫ぶ。


「残ってる、一発!」


ノリアが、即座に、答える。


「二体まとめて、頼む!」


「業炎獄!」


大きな炎が、抑え込まれていた二体を、まとめて、飲み込んだ。


---


「ワング、ダダ、今のうちに!」


カインが、叫ぶ。


「承知!」


「了解!」


炎に怯んだ二体へ、ワングとダダが、間合いを、一気に詰める。


「拙者の分も、全部、出すでござる!」


ワングの刀が、鋭く、閃いた。


---


「俺も、ここが、踏ん張りどころだ!」


ダダの盾が、押し込むように、迫る。


「カイン、俺と、一緒に!」


「ああ!」


カインが、残った呪文を、迷わず、放つ。


「静黙!」


念のため、封じの効果を、上乗せする。


---


四人の力が、同時に、二体のデーモンへと、叩き込まれた。


「終われ……!」


カインの剣が、最後の一体を、深く、貫いた。


もう一体も、ワングの一閃に、崩れ落ちていく。


---


赤黒い光が、二体の体から、静かに、消えていった。


今度こそ、新しい気配が、通路の奥から、現れることは、なかった。


「終わった……!」


カインが、剣を支えに、大きく、息をついた。


「今度こそ、本当に、終わった」


ダダが、盾を下ろしながら、頷いた。


---


「経験値、これで、ちゃんと、入るよな」


ネリスが、確かめるように、言う。


「入るはずだ。パーティー全体で、決着、つけたんだから」


カインが、答えた。


「危なかった。もう少しで、全部、無駄にするところだった」


ミラが、静かに、息をついた。


---


戦いから、離れたところで、六人は、ようやく、足を止めた。


「終わった……のか」


カインが、剣を支えに、大きく、息をついた。


「終わった」


ダダが、盾を下ろしながら、頷いた。


---


「今の、何体、倒したんだろうな」


ネリスが、荒い息のまま、言う。


「数えてない。でも、相当な数だった」


カインが、答える。


「スクロール、あれ、すごい効果だったな」


ダダが、感心したように、言った。


---


「普通の静黙のスクロールと、密度が違う、って言ってたよな」


カインが、ノリアを、見る。


「これが、その差、だったのかも」


ノリアが、静かに、答えた。


「範囲まで、変わるなんて、普通じゃないな」


---


「ミラ、大丈夫か」


カインが、心配そうに、聞く。


「大丈夫。でも、正直、今日は、使い切った」


ミラが、静かに、答えた。


「よく、粘ってくれた。おかげで、かなり、稼げたと思う」


カインが、労うように、言った。


---


「今日は、ここまでにしよう」


カインが、皆を見回す。


「賛成。魔力も、体力も、限界だ」


ダダが、頷いた。


「拙者も、賛成でござる」


ワングが、続いた。


---


来た道を、六人は、ゆっくりと戻り始めた。


九層の奥から、八層、七層と、階層を登っていく。


篝火の灯る前室に戻ると、ようやく、肩の力が抜けた。


---


「今日は、九層、思ったより、厳しい相手だったな」


カインが、皆を見回しながら、言う。


「厳しかった。でも、あのスクロールのおかげで、なんとかなった」


ミラが、静かに、頷いた。


「あの一帯、また、同じ群れ、湧くかもな」


ネリスが、少し、興味深そうに、言う。


「湧いたら、また、今日みたいに、稼げるかもしれないな」


ダダも、静かに、頷いた。


---


「扉の鍵、まだ、見つかってないけどな」


カインが、思い出したように、言う。


「今日は、それどころじゃ、なかったからな」


ダダが、苦笑した。


「次は、鍵探しと、デーモン狩り、両方、やることになりそうだな」


カインが、笑いながら、言った。


夕暮れの光が、通路の入り口から、静かに差し込んでいた。


いかがでしょうか?


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