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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第60話「積み上げた実り」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

翌朝、六人は、まず、アプレイザルへ向かった。


「今日は、レベルの確認、しような」


カインが、皆を見回しながら言う。


「しよう」


六人の声が、揃った。


「九層、行く前に、確認しておきたいしな」


ダダが、静かに、付け加えた。


---


窓口には、見慣れた鑑定士が座っていた。


「また、皆さんで」


「また皆さんで、です」


カインが、いつもの調子で答える。


「今日は、期待できそうな顔、してますね」


「わかります?」


「わかります」


鑑定士が、静かに、口元を緩めた。


---


一人ずつ、台座に手をかざしていく。


「まず、ダダさんから」


「盾役、レベル9ですね」


「9、か」


ダダが、静かに頷いた。


「続いて、ネリスさん」


「斥候、レベル9」


「9!」


ネリスが、少し弾んだ声を上げる。


---


「ノリアさん」


呼ばれて、ノリアが、台の前に立つ。


光が、いつもより長く、灯った。


「魔術師、レベル9です。それと」


鑑定士が、記録紙を、めくる。


「アルカナ第五階梯、新規習得です」


「第五階梯……!」


ノリアが、思わず、声を上げた。


---


「業炎獄。敵集団に、大ダメージを与える呪文です」


鑑定士が、続ける。


「それと、第四階梯にも、新しい呪文が」


「まだ、あるんですか」


カインが、身を乗り出す。


「真贋の瞳です。雷殺と同じ階梯に、新たに追加されています」


---


「ワングと、同じ呪文か」


カインが、驚いたように言う。


「同じ呪文、覚える人、二人になったな」


ノリアが、少し照れたように、笑った。


「今度は、私も、鑑定、手伝えるかも」


---


「次、ミラさん」


呼ばれて、ミラが、台の前に立つ。


光が、これまでで一番、長く灯った。


「僧侶、レベル12です」


「12……」


ミラが、静かに、自分の手を見つめる。


---


「第六階梯、新規習得です」


鑑定士が、続ける。


「大群癒。味方全体を、大幅に回復する呪文。それと、帰郷の扉・聖」


「クロスロードへ、即時帰還できる呪文、ですね」


ミラが、確かめるように言う。


「その通りです」


---


「それと、これまで習得が抜けていた、下位階梯の呪文も、埋まっています」


鑑定士が、記録紙を、皆に見せる。


「第五階梯まで、すべて、揃いました」


「全部……」


ミラが、目を見開いた。


---


「使用回数は」


カインが、聞く。


「第六階梯が1回。第五階梯が3回。第四階梯が6回。第三階梯以下は、9回です」


鑑定士が、答える。


「これは、すごいな」


ダダが、静かに言った。


---


「最後、カインさん」


呼ばれて、カインが、台の前に立つ。


「万能士、レベル8です」


「8!」


カインが、拳を握る。


---


「使用回数ですが」


鑑定士が、続ける。


「すべての階梯で、3回になっています」


「全部、3回……」


カインが、繰り返す。


「万能士の上限、確か、3回でしたよね」


「はい。上限に、到達したことになります」


---


「ということは」


カインが、少し複雑な顔をする。


「これ以上、回数は、増えないってことですか」


「使用回数に関しては、そうなります。ただし、新しい階梯へ進めば、その階梯は、また1回から始まります」


鑑定士が、静かに、付け加えた。


「なるほど、な」


カインが、頷いた。


「便利屋の頃は、想像もしてなかったな。呪文の上限に、到達する日が来るなんて」


カインが、しみじみと言う。


「感慨深いな」


ダダが、静かに、笑った。


---


窓口を離れ、外に出る。


「今日は、みんな、伸びたな」


カインが、皆を見回しながら言う。


「伸びた。特に、ミラ、大きかったな」


ダダが、静かに言う。


「一気に、埋まった感じ」


ミラが、少し照れたように、答えた。


---


その足で、六人は、フォージタウンへ向かった。


「そういえば、ブロムさんの返事、そろそろだよな」


カインが、思い出したように言う。


「行ってみよう」


ネリスが、少し、足取りを速めた。


---


工房に入ると、ブロムが、こちらに気づいた。


「よう、坊主たち。ちょうど、いいところに来た」


「もしかして」


ネリスが、身を乗り出す。


「できたぞ」


ブロムが、奥から、軽そうな防具を、取り出してきた。


---


「これが、あの魔石を、練り込んだやつですか」


カインが、覗き込む。


「そうだ。何度か失敗したが、最終的には、いい仕上がりになったと思う」


ブロムが、防具を、ネリスに手渡す。


「装備条件は」


ネリスが、確かめるように聞く。


「前衛職向けだ。魔法防御、多少、乗ってるはずだ」


---


ネリスが、そっと、防具を身につける。


「軽い。動きやすい」


「動きにくかったら、意味ないからな」


ブロムが、静かに言った。


「ありがとうございます」


ネリスが、深く、頭を下げる。


「試作に付き合ってくれた、礼だ。気にするな」


---


「これで、ネリスも、多少は、安心か」


カインが、皆を見回しながら言う。


「安心。杖持ちの光、少しは、耐えられるはず」


ネリスが、静かに、頷いた。


「見た目も、悪くないな」


ダダが、装備を眺めながら言う。


「機能優先で頼んだのに、見た目まで、良くしてくれたのか」


ネリスが、少し驚いたように言った。


「ついでだ。気にするな」


ブロムが、ぶっきらぼうに答えた。


---


工房を出ると、カインが、ふと、立ち止まった。


「あ、スクロールのこと、アプレイザルで、聞き忘れた」


「戻るか」


ダダが、静かに言う。


「戻ろう」


六人は、再び、アプレイザルへと、足を向けた。


---


窓口で、事情を伝える。


「未鑑定のスクロールの件、ですね」


鑑定士が、記録を確かめる。


「エンポリアムから、結果が、戻ってきています」


「どうでした」


カインが、身を乗り出す。


「『わからない』、という回答でした」


---


「専門の職人でも、わからない、ってことですか」


カインが、聞き返す。


「そうなります。スクロールごと、そのまま、お返しします」


鑑定士が、丸められた紙片を、差し出した。


「専門でも、駄目だったのか」


ダダが、静かに、呟いた。


---


「あの」


ノリアが、恐る恐る、口を開く。


「私、今日、真贋の瞳、覚えたばかりですけど、試してみても、いいですか」


「もちろん、構いません」


鑑定士が、頷いた。


---


ノリアが、スクロールに、そっと手をかざす。


「真贋の瞳」


淡い光が、紙片を、静かに包んだ。


しばらくして、光が、収まる。


---


「どう、だった」


カインが、聞く。


「……静黙、っぽい、気がする」


ノリアが、慎重に、言葉を選ぶ。


「輪郭は、この間のスクロールと、似てる」


---


「でも」


ノリアが、続ける。


「何か、普通のと、違う」


「違う、って」


ダダが、聞き返す。


「うまく、言えないけど……もっと、密度が、濃い感じ」


ノリアが、正直に答えた。


---


「濃い、密度……」


カインが、繰り返す。


「専門の職人でも、わからなかったのは、それが、理由かもしれませんね」


鑑定士が、静かに言う。


「普通の静黙のスクロールとは、何か、違う可能性がある、ということです」


---


「じゃあ、これ、どうする」


ダダが、聞く。


「持ち帰るしかないな。使いどころも、慎重に、考えないと」


カインが、慎重に、袋にしまった。


「普通のものと違う、って考えると、逆に、楽しみだな」


ネリスが、笑いながら言う。


「そうだな。何かの拍子に、わかる日が、来るかもしれない」


カインも、静かに、頷いた。


---


アプレイザルを出ると、夕暮れの光が、通りを、静かに染めていた。


「今日は、盛りだくさんだったな」


カインが、皆を見回しながら言う。


「レベルアップ、ネリスの防具、スクロールの謎」


ミラが、指を折りながら言う。


「三つとも、収穫だな」


ダダが、静かに頷いた。


「九層、明日から、また、頑張るか」


カインが、笑った。


「頑張ろう」


六人の声が、揃った。


「今日みたいな日が、また、続くといいな」


ミラが、静かに、微笑んだ。


「続くように、頑張ろう」


カインが、頷いた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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