第58話「見えない敵、見える手」
マランの世界、毎日投稿中です。
当面、数話を連続投稿の予定です。
お楽しみいただけましたら幸いです。
その日も、六人は、八層へ向かった。
「石、届けてから、五日目か」
カインが、歩きながら言う。
「あと、一日」
ネリスが、指折り数えた。
「楽しみござるな」
ワングが、静かに言う。
「まあ、待つしかない。今は、今日の分、頑張ろう」
カインが、頷いた。
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分岐を進み、奥へと進んでいく。
「気配、今日は、なんか、変」
ネリスが、ふと、足を止めた。
「変、って」
カインが、聞く。
「動いてるのに、生きてる感じが、しない」
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通路の先、開けた空間に、これまで見たことのない魔物が、佇んでいた。
朽ちた骨だけの姿をしたものが、数体。
ぼろぼろの布をまとった、人型の影のようなものも、混ざっている。
「あれ……」
ミラが、声を詰まらせた。
「不死系、か」
カインが、低く呟いた。
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「不死系、初めてだよな」
ダダが、盾を構えながら、確かめるように言う。
「初めて」
カインが、頷く。
「普通の攻撃、効くのか」
「わからない。とりあえず、様子見だ」
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「ダダ、前へ」
「了解!」
ダダが、盾を構えて踏み込む。
骨の魔物が、がちがちと顎を鳴らしながら、迫ってきた。
「剣、通る!」
カインが、斬りかかりながら、叫ぶ。
だが、手応えは、これまでよりも、明らかに軽かった。
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「効いてるのか、これ」
カインが、戸惑ったように言う。
「切れてる。切れてるけど、崩れない」
ネリスが、爪で切り裂きながら、叫ぶ。
骨の魔物は、切られた部分を、平然と、また元の位置に戻していく。
「再生してる……!」
ミラが、目を見開いた。
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「物理、あまり効かない相手か!」
カインが、素早く判断する。
「ミラ、何か、効くやつ、あるか!」
ダダが、盾で押しのけながら、叫ぶ。
「邪払い!」
ミラが、即座に、声を上げた。
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祈るような光が、ミラの手のひらから、骨の魔物に向かって放たれる。
光が触れた瞬間、骨の魔物が、大きく、体を震わせた。
「効いてる!」
ミラが、驚いたように、叫ぶ。
「物理より、効いてる!」
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「聖光弾、使えるか!」
カインが、後方に叫ぶ。
「使える! でも、そっちは、もう少し、様子見てから!」
ミラが、即座に、答えた。
「わかった、任せる!」
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「ダダ、俺で、動き、止める! ミラに、集中させろ!」
カインが、叫ぶ。
「了解!」
ダダと並び、カインが、骨の魔物の正面に立ち、盾と剣で、動きを封じにかかる。
「今のうちに!」
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「邪払い!」
ミラが、続けて、声を上げる。
二度目の光が、骨の魔物を、深く、蝕んでいく。
「もう一体、いける!」
ミラが、力強く言った。
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「ワング、ネリス、そっちの影、頼む!」
カインが、叫ぶ。
「承知!」
「任せて!」
ワングとネリスが、布をまとった影の魔物へ向かう。
剣も爪も、輪郭を、わずかにかすめるだけで、手応えがなかった。
「これも、物理、効かないでござるか」
ワングが、静かに言う。
「削れない、けど、動きは、鈍らせられる」
ネリスが、爪を振るいながら、答えた。
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「ミラ、聖光弾、まだいけるか!」
カインが、叫ぶ。
「いける!」
ミラが、答える。
「聖光弾!」
輝く光の弾が、影の魔物を、真正面から貫いた。
「効いてる、こっちも!」
ミラが、力強く、叫んだ。
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「一体、倒れた!」
ネリスが、鋭く声を上げる。
骨の魔物が、砕け落ちていた。
「残り、影が一体!」
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「ミラ、無理はするな!」
カインが、心配そうに言う。
「まだ、大丈夫。もう一押し!」
ミラが、力強く答えた。
「邪払い!」
三度目の光が、揺らめく影を、包み込む。
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「ダダ、押し込め!」
カインが、叫ぶ。
「了解!」
ダダの盾が、揺らめく影を、壁際に追い詰めていく。
「今だ!」
ミラの光が、影の輪郭を、確実に、削っていった。
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影の魔物が、声もなく、闇に溶けるように、消えていく。
戦いが、ようやく、終わった。
「終わった……のか」
カインが、剣を支えに、大きく息をついた。
「終わった」
ダダが、盾を下ろしながら、頷いた。
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「不死系、物理、あんまり効かないんだな」
ダダが、額の汗を拭いながら言う。
「ほとんど、効いてなかった。ミラの邪払いと聖光弾、なかったら、どうなってたか」
カインが、正直に言う。
「ミラ、大丈夫か、呪文、結構、使ったろ」
「大丈夫。でも、正直、けっこう、使った」
ミラが、答えた。
「今日は、ミラに、負担かけたな」
カインが、静かに言った。
「不死系が出たら、私が、要になるってこと、覚えておいて」
ミラが、静かに、付け加えた。
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「魔石、いつもと、また違う」
ネリスが、地面に転がる、灰色がかった魔石を、拾い上げながら言う。
「不死系の魔石、色も違うのか」
カインが、覗き込んだ。
「これも、アーカイブに、報告した方がいいな」
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さらに奥へと進む。
小さな空間に、木箱が一つ、静かに置かれていた。
「宝箱、あったな」
カインが、目を見開く。
「罠、確かめる」
ネリスが、爪の先で、蓋の縁を、そっと叩いた。
光の線は、浮かばなかった。
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慎重に確かめたあと、蓋を開ける。
中から、丸められた紙片が、姿を現した。
「また、スクロールか」
カインが、手に取る。
見慣れない筆致は、前回のものとは、また違う模様だった。
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「これも、何が書いてあるか、わからないな」
ノリアが、覗き込みながら言う。
「アプレイザル、持って帰るしかないか」
カインが、慎重に、袋にしまおうとした、その時だった。
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「試しに、拙者が、見てみるでござる」
ワングが、思いついたように言う。
「見る、って」
カインが、聞き返す。
「真贋の瞳」
ワングが、静かに言った。
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「そんな呪文、あったのか」
ダダが、驚いたように言う。
「アルカナ第四階梯にある、簡易鑑定の呪文でござる。使う機会が、あまりなかったが」
ワングが、スクロールに、手をかざす。
「真贋の瞳」
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淡い光が、スクロールを、静かに包んだ。
しばらくして、光が、収まる。
「どうだ」
カインが、身を乗り出す。
「……何か、封じられた呪文の記録、らしきものが、見える気がするでござる」
ワングが、目を細めながら言う。
「気がする、って」
ネリスが、聞き返す。
「はっきりとは、わからない。輪郭だけ、ぼんやりと」
ワングが、正直に答えた。
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「アプレイザルの鑑定とは、違うのか」
カインが、聞く。
「違うでござる。あちらは、はっきりと、名前まで教えてくれる。こちらは、あくまで、簡易」
ワングが、続けた。
「精度、落ちるんだな、やっぱり」
ダダが、確かめるように言う。
「落ちる。でも、何も知らずに持ち帰るよりは、いくらか、目安になる」
ワングが、静かに言った。
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「今の感じだと、危険なものではなさそうか」
カインが、聞く。
「そこまでは、断言できないでござる。ただ、明確な悪意は、感じなかった」
「なら、持ち帰って、ちゃんと鑑定してもらおう」
カインが、頷いた。
「その方が、確実でござるな」
ワングも、同意した。
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「便利な呪文だな、それ」
ネリスが、感心したように言う。
「便利だが、万能ではない、ということでござる」
ワングが、静かに、付け加えた。
「使いどころ、覚えておくか。とりあえずの目安をつけたい時とか」
カインが、頷いた。
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「今日は、この辺で、切り上げるか」
カインが、皆を見回す。
「賛成。ミラの負担、大きかったし」
ダダが、静かに言う。
「拙者も、賛成でござる」
ワングが、続いた。
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来た道を、六人は、ゆっくりと戻り始めた。
「不死系、か」
カインが、歩きながら、呟く。
「物理、ほとんど、通じない相手だったな」
「ミラの邪払いと聖光弾、頼りきりだったな、今日は」
ダダが、静かに言った。
「私だけじゃ、心細いから、みんなが、動きを止めてくれる分、集中できた」
ミラが、静かに、答えた。
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八層の奥から、七層、六層と、階層を登っていく。
篝火の灯る前室に戻ると、ようやく、肩の力が抜けた。
「今日も、新しい発見、多かったな」
カインが、皆を見回しながら言う。
「多かった。不死系のこと、ミラの立ち位置のこと、ワングの瞳のこと」
ダダが、指を折りながら言う。
「明日、アプレイザルに、報告と鑑定、両方、行くか」
カインが言う。
「行こう」
六人の声が、揃った。
「不死系の情報、ティリーさん、喜びそうだな」
ネリスが、少し楽しそうに言う。
「新しい記録、また増えるな」
カインが、笑った。
夕暮れの光が、通路の入り口から、静かに差し込んでいた。
いかがでしょうか?
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