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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第57話「新しい壁、また一つ」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

ブロムからの返事を待つ間も、六人は、いつも通り、八層へ潜っていた。


「今日で、四日目か」


カインが、歩きながら言う。


「あと、二日」


ネリスが、指折り数えながら、頷いた。


---


分岐を進み、奥へと進んでいく。


「気配、今日は、いつもと違う」


ネリスが、ふと、足を止めた。


「違う、って」


カインが、聞く。


「複数の気配が、固まってる。杖持ちの気配も、混ざってる」


---


通路の先、開けた空間に、これまでとは違う気配の一団が、待ち構えていた。


ローブ姿の魔物が一体、その周りを、甲殻型の魔物が、数体、固めている。


「杖持ちと、いつもの型、一緒に来たか」


ダダが、盾を構えながら言う。


「今までと、違う編成だな」


カインが、目を細めた。


---


「ノリア、静黙、頼む」


カインが、声をかける。


「わかった」


「静黙!」


ノリアの声が、響く。


だが、見えない力は、杖の先で、押し返されるように、弾かれた。


「効かない……!」


ノリアが、驚いた声を上げた。


---


「効かないのか、今回!」


ダダが、叫ぶ。


「たぶん、格が、違う。これまでの、杖持ちより、強い」


カインが、素早く、状況を読む。


「じゃあ、どうする!」


「甲殻型から、先に潰す! 杖持ちは、後回し!」


カインが、即座に、判断を下した。


---


「ダダ、前!」


「了解!」


盾を構えて、ダダが踏み込む。


「ワング、ネリス、両脇から!」


「承知!」


「任せて!」


三人が、甲殻型の魔物に、一気に襲いかかる。


その間、杖の先から、光の塊が、次々と放たれてきた。


---


「散開、忘れるな!」


カインが、叫ぶ。


「ミラ、下がって! ノリア、隙見て、援護!」


「わかった!」


ミラが、後方に下がりながら、答える。


一発が、ワングの肩を、かすめて過ぎた。


「かすった、程度でござる。問題ない!」


---


甲殻型を一体、また一体と、削っていく。


「残り、二体!」


ネリスが、爪を振るいながら、叫んだ。


「杖持ち、まだ、健在だ!」


カインが、油断なく、周囲を見回す。


「ミラ、ノリア、無事か!」


「無事!」


「ここは、平気!」


---


「ダダ、俺と一緒に、杖持ちへ!」


カインが、叫ぶ。


「了解!」


甲殻型を片づけたダダと、カインが、杖持ちへ向かう。


「静黙、もう一回、試す!」


ノリアが、声を上げた。


「静黙!」


---


二度目の呪文が、今度は、わずかに、届いた。


「今度は、効いてる、少しだけ!」


ノリアが、叫ぶ。


「今のうちに!」


カインとダダが、同時に踏み込む。


盾で押さえ、剣で切り込む。


杖持ちが、大きく体勢を崩した。


---


「ワング、決めろ!」


「承知!」


一閃が、杖持ちを、深く切り裂いた。


崩れ落ちる魔物を見て、六人が、揃って息をついた。


「今のは、きつかったな」


ダダが、盾を下ろしながら、息を切らす。


---


「呪文、結構、使ったな」


ノリアが、額の汗を拭いながら言う。


「まだ、大丈夫か」


カインが、聞く。


「まだ、少し、残ってる」


ノリアが、答えた。


「無理はするな。今日は、まだ長い」


カインが、静かに言った。


---


魔石を回収する。


「これ……いつもと、色つやが、違う」


ネリスが、手のひらの魔石を、じっと見つめる。


「確かに、輝きが、強い気がする」


カインも、覗き込んだ。


「編成が、強い分、質も、いいのかもな」


ミラが、静かに言う。


---


さらに奥へと進むと、再び、同じ気配が、待ち構えていた。


「また、来たか」


ダダが、盾を構え直す。


「今度は、少し、多いな」


カインが、数を数える。


杖持ちが一体、甲殻型が、四体。


---


「さっきの、手順で!」


カインが、叫ぶ。


「甲殻型、先に!」


六人の連携が、再び、動き出す。


「ダダ、前!」


「了解!」


盾が、光を弾き返す。


「ネリス、隙間!」


「任せて!」


爪が、二体を、同時に仕留めた。


---


「ミラ、大丈夫か!」


カインが、後方に叫ぶ。


「守りの聖歌!」


ミラの声が、響く。


淡い光が、六人を、薄く包んだ。


「今の、余力、あるのか!」


ダダが、驚いたように言う。


「まだ、いける!」


ミラが、力強く、答えた。


---


甲殻型を、次々と、削っていく。


「杖持ち、まだ!」


ネリスが、叫ぶ。


「静黙!」


ノリアが、続けて、声を上げる。


今度は、力を振り絞るように、しっかりと、届いた。


「効いてる!」


---


「今のうちに!」


カインとダダが、間合いを詰める。


ワングの一閃が、最後の杖持ちを、静かに沈めた。


戦いが、ようやく、終わる。


「今日は、二回目、きつかったな」


カインが、剣を支えに、大きく息をついた。


---


「ミラ、呪文、まだ、大丈夫か」


カインが、心配そうに聞く。


「正直、けっこう、使った」


ミラが、答える。


「でも、まだ、少し、残ってる」


「無理はするなよ、絶対に」


カインが、念を押した。


---


魔石を回収しながら、通路の先を確かめる。


小さな空間に、木箱が一つ、静かに置かれていた。


「宝箱、あったな」


カインが、目を見開く。


「罠、確かめる」


ネリスが、爪の先で、蓋の縁を、そっと叩いた。


光の線は、浮かばなかった。


---


慎重に確かめたあと、蓋を開ける。


中から、丸められた紙片が、姿を現した。


「スクロール、か」


カインが、手に取る。


文字も、模様も、これまで見たことのない、見慣れない筆致だった。


「何が、書いてあるか、全然、わからない」


ノリアが、覗き込みながら言う。


「これも、鑑定してもらわないと、駄目そうだな」


カインが、慎重に、袋にしまった。


---


「今日は、この辺で、切り上げるか」


カインが、皆を見回す。


「賛成。今日は、かなり、消耗した」


ミラが、静かに答えた。


「拙者も、賛成でござる」


ワングが、続いた。


---


来た道を、六人は、ゆっくりと戻り始めた。


八層の奥から、七層、六層と、階層を登っていく。


篝火の灯る前室に戻ると、ようやく、肩の力が抜けた。


「今日みたいな相手、もっと出てくるんだろうな、これから」


カインが、皆を見回しながら言う。


「出てくる。それでも、今日、乗り切れた」


ダダが、静かに頷いた。


---


翌日、六人は、スクロールと魔石を持って、アプレイザルへ向かった。


窓口に、二つを差し出す。


「まず、こちらの、魔石から」


鑑定士が、手に取り、光にかざす。


「質、かなり高めですね。今までの、二段階は上です」


「二段階……」


ネリスが、思わず、繰り返した。


---


「続いて、スクロールですが」


鑑定士が、慎重に、紙片を広げる。


しばらく、じっと見つめたあと、静かに、首を振った。


「これは、こちらでは、特定できません」


「特定できない」


カインが、聞き返す。


「専門の魔道具職人に、見てもらう必要があります」


鑑定士が、答えた。


「エンポリアムの、あの職人か」


ダダが、呟く。


「その通りです」


鑑定士が、頷いた。


---


「順番待ち、長いんですよね」


ミラが、確かめるように聞く。


「時間は、かかると思います。それでも、価値のある品だとは思いますので、待つ甲斐は、あるかと」


鑑定士が、静かに、答えた。


「わかりました。お願いします」


カインが、頷いた。


---


「そういえば」


鑑定士が、ふと、記録紙をめくる。


「せっかくですので、皆さんの状態も、確認しておきますか」


「お願いします」


カインが、答える。


台座に、順番に手をかざしていく。


---


「カインさん、レベル、7に上がっていますね」


「上がった!」


カインが、目を輝かせる。


「ミラさん、レベル、11。ノストス第五階梯、使用回数が、一つ、増えています」


「増えてる……!」


ミラが、驚いたように、自分の手を見つめた。


---


「ノリアさんも、レベル、8です。アルカナ第四階梯の使用回数が、増えていますね」


「本当だ」


ノリアが、静かに、頷いた。


「他の皆さんも、少しずつ、伸びていますね」


鑑定士が、記録紙を、皆に見せながら言った。


---


「今日の相手、強かった分、伸びも、大きかったってことか」


カインが、皆を見回しながら言う。


「そういうことだな」


ダダが、静かに頷いた。


「スクロールの正体も、気になるし、ブロムさんの返事も、もうすぐだし」


ネリスが、袋を、大事そうに抱えながら言う。


「楽しみが、増えたな」


カインが、笑った。


夕暮れの光が、アプレイザルの窓から、静かに差し込んでいた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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