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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第56話「頼めるかどうか」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

翌朝、六人は、フォージタウンへ向かった。


「魔法防御の防具、作れないか、聞いてみるか」


カインが、皆を見回しながら言う。


「ネリスの分、あればいいよな」


ダダが、頷いた。


「期待、しすぎないようにするけど」


ネリスが、少し照れたように言う。


「聞くだけ、聞いてみよう」


カインが、静かに言った。


---


工房に入ると、槌の音が、途中で止んだ。


「よう、盾の坊主。今日は、何の用だ」


ブロムが、こちらを見る。


「相談したいことがあって」


ダダが、答えた。


---


「ローブ、鑑定してもらったんだ」


カインが、経緯を説明する。


「魔法防御の効果があって、呪文使う職限定だった」


「ノリアが、使うことになったんだけど」


ダダが、続ける。


「同じような効果を、前衛向けにも作れないか、聞きたくて」


---


ブロムが、腕を組む。


「魔法防御、な」


「できますか」


カインが、身を乗り出す。


「正直に言うと、俺の専門とは、少しずれる」


ブロムが、静かに答えた。


---


「うちで打つのは、基本、物理の防具だ」


ブロムが、続ける。


「頑丈さ、重さ、粘り。そのあたりは、いくらでも、腕がある」


「魔法防御は」


ダダが、聞く。


「あれは、素材が、ものを言う分野だ」


ブロムが、答えた。


---


「普通の鉄や革じゃ、魔力を防ぐ性質は、ほとんど乗らん」


ブロムが、道具箱から、小さな金属片を取り出す。


「うちにも、多少は扱った経験がある。だが、専門の魔道具職人ほどじゃない」


「素材次第、ってことか」


カインが、確かめるように言う。


「そうだ」


---


「実は」


ネリスが、袋から、色の違う魔石を取り出す。


「こないだ、杖持ちの魔物から、こういうの、取れたんだ」


ブロムが、魔石を手に取り、光にかざす。


「これは……」


しばらく、じっと見つめた。


---


「見たことのない、色合いだな」


ブロムが、呟く。


「アルカナ系の魔力が、いつもより、濃く残ってる気がする」


「使えそうですか」


ミラが、聞く。


「試してみないと、わからん」


ブロムが、正直に答えた。


---


「これを、防具に練り込めれば、多少は、魔法防御が、乗るかもしれん」


ブロムが、続ける。


「ただ、うちのやり方でやると、上手くいく保証はない」


「時間、かかりますか」


カインが、聞く。


「かかる。まず、この石の性質を、見極めるところからだ」


---


「どれくらい、かかりそうですか」


ダダが、聞く。


「五日、いや、六日は見といてくれ」


ブロムが、答える。


「失敗も、覚悟の上でな」


「失敗しても、いいです」


ネリスが、静かに言う。


「試してもらえるだけで、ありがたい」


---


「石、もっと、あった方がいいですか」


カインが、聞く。


「あるに越したことはない」


ブロムが、頷く。


「同じ性質の石が、何個かあれば、試す回数も、増やせる」


「じゃあ、次に見つけたら、持ってきます」


カインが、答えた。


---


「頼む方も、頼まれる方も、期待しすぎない方がいい」


ブロムが、念を押すように言う。


「うちは、専門じゃない。それでも、やってみる価値はあると思ってる」


「十分です」


ネリスが、頭を下げた。


「ありがとうございます」


六人の声が、揃った。


---


「そういえば」


ミラが、ふと、聞く。


「魔法防御の専門って、他に、あるんですか」


「エンポリアムの方に、魔道具専門の職人がいる」


ブロムが、答える。


「そっちなら、もっと確実だろう。だが、順番待ちが、長いと聞く」


「順番待ち」


カインが、繰り返す。


「人気の職人でな。数ヶ月待ち、なんてこともあるそうだ」


「それなら、まず、こっちで試してもらう方が、早そうだな」


ダダが、静かに言った。


「そういうことだ」


ブロムが、頷いた。


---


「石、見つけ次第、持ってきます」


カインが、改めて言う。


「頼む」


ブロムが、短く答えた。


「試す間、坊主たちは、いつも通り、潜ってりゃいい」


「いつも通り、か」


カインが、笑った。


---


工房を出ると、日差しが、少し高くなっていた。


「返事、待つ間、どうする」


カインが、皆を見回す。


「潜るしかないだろ」


ダダが、静かに言う。


「石、もっと見つけないといけないし」


ネリスが、頷いた。


---


その足で、六人は、八層へと向かった。


分岐を進み、慣れた調子で、奥へと進んでいく。


「今日も、いつもの型、多そうだな」


カインが、周囲を見回しながら言う。


「たぶん」


ネリスが、耳を伏せた。


---


しばらく進むと、鎧のような外皮を持つ魔物の群れが、通路を塞ぐように、待ち構えていた。


「これは、いつもの、甲殻型だな」


ダダが、盾を構えながら言う。


「型、いつも通りで」


カインが、頷いた。


---


「ダダ、前へ」


「了解!」


ダダが、盾を構えて踏み込む。


「ワング、ノリア、右!」


「承知!」


ワングが、刀を振るう。


「ファイア!」


ノリアの炎が、群れの側面を、大きく飲み込んだ。


---


「ネリス、隙間、縫って!」


「任せて」


ネリスが、低い姿勢のまま、群れの隙間を、素早く駆け抜ける。


鋼の爪が、二体を、同時に切り裂いた。


「効いてる!」


慣れた連携で、群れは、さほど時間をかけずに静かになった。


---


「終わった」


ダダが、盾を下ろしながら、頷く。


「今日は、これくらいで済んだな」


カインが、額の汗を拭いながら言った。


「胸当ても、剣も、絶好調だ」


ダダが、満足そうに言う。


「装備、揃うと、余裕、違うな」


カインが、頷いた。


魔石を回収しながら、さらに奥へと進む。


---


「気配、また、変わった」


ネリスが、ふと、耳を伏せる。


「杖持ちか?」


カインが、身構える。


「たぶん、そう」


---


通路の先、開けた空間に、ローブ姿の魔物が、数体、立っていた。


「ノリア、頼む」


カインが、静かに、目配せする。


「静黙!」


ノリアの声が、先に響いた。


見えない力が、杖の先を、丸ごと包み込む。


「今日も、先手!」


---


杖を封じられた魔物に、六人の連携が、迷いなく叩き込まれていく。


「近づけば、脆いのは、知ってる!」


ネリスが、隙間を縫って、距離を詰める。


一体、また一体と、崩れていった。


---


戦いが終わり、六人は、周囲を確かめる。


「今日の石、いつもより、多く落ちてないか」


ダダが、地面を見回しながら言う。


「本当だ。数、多い」


ネリスが、拾い集めながら言った。


「ブロムさんの試し分、これで、足りるかもな」


カインが、静かに言った。


「集められるだけ、集めとこう」


ミラが、静かに、付け加える。


「賛成」


六人の声が、揃った。


---


魔石を袋に詰めながら、六人は、来た道を戻り始めた。


「返事、楽しみだな」


ネリスが、袋を、大事そうに抱えながら言う。


「気長に、待つでござる」


ワングが、静かに言った。


八層の奥から、七層、六層と、階層を登っていく。


篝火の灯る前室に戻ると、ようやく、肩の力が抜けた。


「今日の分、ブロムさんに、届けにいくか」


カインが、皆を見回しながら言う。


「行こう」


六人の声が、揃った。


---


その足で、六人は、フォージタウンへ向かった。


「石、持ってきました」


カインが、袋を差し出す。


ブロムが、中身を確かめ、目を細めた。


「今日だけで、これだけか」


「同じ型の魔物、何体か、倒しましたから」


ダダが、答える。


「十分だ。これだけあれば、何度か、試せる」


ブロムが、頷いた。


---


「いつ頃、また、来ればいいですか」


ネリスが、聞く。


「五日、いや、六日後、と言ったろう」


ブロムが、繰り返す。


「気長に、待ってろ。急いで雑にやって、無駄にする方が、もったいない」


「わかりました」


ネリスが、頷いた。


---


工房を出ると、夕暮れの光が、通路の入り口から、静かに差し込んでいた。


「次、行くまでの間、また、潜って、石、集めるか」


カインが、皆を見回しながら言う。


「集める」


ダダが、静かに頷いた。


「六日後、どんな結果になってるか、楽しみだな」


ミラが、静かに、微笑んだ。


「楽しみにしすぎると、外れた時、辛いぞ」


ダダが、苦笑しながら言う。


「わかってる。それでも、楽しみは、楽しみ」


ミラが、譲らずに答えた。


六人は、その光に向かって、ゆっくりと、歩き出した。


いかがでしょうか?


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よろしくお願いいたします。

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