第56話「頼めるかどうか」
マランの世界、毎日投稿中です。
当面、数話を連続投稿の予定です。
お楽しみいただけましたら幸いです。
翌朝、六人は、フォージタウンへ向かった。
「魔法防御の防具、作れないか、聞いてみるか」
カインが、皆を見回しながら言う。
「ネリスの分、あればいいよな」
ダダが、頷いた。
「期待、しすぎないようにするけど」
ネリスが、少し照れたように言う。
「聞くだけ、聞いてみよう」
カインが、静かに言った。
---
工房に入ると、槌の音が、途中で止んだ。
「よう、盾の坊主。今日は、何の用だ」
ブロムが、こちらを見る。
「相談したいことがあって」
ダダが、答えた。
---
「ローブ、鑑定してもらったんだ」
カインが、経緯を説明する。
「魔法防御の効果があって、呪文使う職限定だった」
「ノリアが、使うことになったんだけど」
ダダが、続ける。
「同じような効果を、前衛向けにも作れないか、聞きたくて」
---
ブロムが、腕を組む。
「魔法防御、な」
「できますか」
カインが、身を乗り出す。
「正直に言うと、俺の専門とは、少しずれる」
ブロムが、静かに答えた。
---
「うちで打つのは、基本、物理の防具だ」
ブロムが、続ける。
「頑丈さ、重さ、粘り。そのあたりは、いくらでも、腕がある」
「魔法防御は」
ダダが、聞く。
「あれは、素材が、ものを言う分野だ」
ブロムが、答えた。
---
「普通の鉄や革じゃ、魔力を防ぐ性質は、ほとんど乗らん」
ブロムが、道具箱から、小さな金属片を取り出す。
「うちにも、多少は扱った経験がある。だが、専門の魔道具職人ほどじゃない」
「素材次第、ってことか」
カインが、確かめるように言う。
「そうだ」
---
「実は」
ネリスが、袋から、色の違う魔石を取り出す。
「こないだ、杖持ちの魔物から、こういうの、取れたんだ」
ブロムが、魔石を手に取り、光にかざす。
「これは……」
しばらく、じっと見つめた。
---
「見たことのない、色合いだな」
ブロムが、呟く。
「アルカナ系の魔力が、いつもより、濃く残ってる気がする」
「使えそうですか」
ミラが、聞く。
「試してみないと、わからん」
ブロムが、正直に答えた。
---
「これを、防具に練り込めれば、多少は、魔法防御が、乗るかもしれん」
ブロムが、続ける。
「ただ、うちのやり方でやると、上手くいく保証はない」
「時間、かかりますか」
カインが、聞く。
「かかる。まず、この石の性質を、見極めるところからだ」
---
「どれくらい、かかりそうですか」
ダダが、聞く。
「五日、いや、六日は見といてくれ」
ブロムが、答える。
「失敗も、覚悟の上でな」
「失敗しても、いいです」
ネリスが、静かに言う。
「試してもらえるだけで、ありがたい」
---
「石、もっと、あった方がいいですか」
カインが、聞く。
「あるに越したことはない」
ブロムが、頷く。
「同じ性質の石が、何個かあれば、試す回数も、増やせる」
「じゃあ、次に見つけたら、持ってきます」
カインが、答えた。
---
「頼む方も、頼まれる方も、期待しすぎない方がいい」
ブロムが、念を押すように言う。
「うちは、専門じゃない。それでも、やってみる価値はあると思ってる」
「十分です」
ネリスが、頭を下げた。
「ありがとうございます」
六人の声が、揃った。
---
「そういえば」
ミラが、ふと、聞く。
「魔法防御の専門って、他に、あるんですか」
「エンポリアムの方に、魔道具専門の職人がいる」
ブロムが、答える。
「そっちなら、もっと確実だろう。だが、順番待ちが、長いと聞く」
「順番待ち」
カインが、繰り返す。
「人気の職人でな。数ヶ月待ち、なんてこともあるそうだ」
「それなら、まず、こっちで試してもらう方が、早そうだな」
ダダが、静かに言った。
「そういうことだ」
ブロムが、頷いた。
---
「石、見つけ次第、持ってきます」
カインが、改めて言う。
「頼む」
ブロムが、短く答えた。
「試す間、坊主たちは、いつも通り、潜ってりゃいい」
「いつも通り、か」
カインが、笑った。
---
工房を出ると、日差しが、少し高くなっていた。
「返事、待つ間、どうする」
カインが、皆を見回す。
「潜るしかないだろ」
ダダが、静かに言う。
「石、もっと見つけないといけないし」
ネリスが、頷いた。
---
その足で、六人は、八層へと向かった。
分岐を進み、慣れた調子で、奥へと進んでいく。
「今日も、いつもの型、多そうだな」
カインが、周囲を見回しながら言う。
「たぶん」
ネリスが、耳を伏せた。
---
しばらく進むと、鎧のような外皮を持つ魔物の群れが、通路を塞ぐように、待ち構えていた。
「これは、いつもの、甲殻型だな」
ダダが、盾を構えながら言う。
「型、いつも通りで」
カインが、頷いた。
---
「ダダ、前へ」
「了解!」
ダダが、盾を構えて踏み込む。
「ワング、ノリア、右!」
「承知!」
ワングが、刀を振るう。
「ファイア!」
ノリアの炎が、群れの側面を、大きく飲み込んだ。
---
「ネリス、隙間、縫って!」
「任せて」
ネリスが、低い姿勢のまま、群れの隙間を、素早く駆け抜ける。
鋼の爪が、二体を、同時に切り裂いた。
「効いてる!」
慣れた連携で、群れは、さほど時間をかけずに静かになった。
---
「終わった」
ダダが、盾を下ろしながら、頷く。
「今日は、これくらいで済んだな」
カインが、額の汗を拭いながら言った。
「胸当ても、剣も、絶好調だ」
ダダが、満足そうに言う。
「装備、揃うと、余裕、違うな」
カインが、頷いた。
魔石を回収しながら、さらに奥へと進む。
---
「気配、また、変わった」
ネリスが、ふと、耳を伏せる。
「杖持ちか?」
カインが、身構える。
「たぶん、そう」
---
通路の先、開けた空間に、ローブ姿の魔物が、数体、立っていた。
「ノリア、頼む」
カインが、静かに、目配せする。
「静黙!」
ノリアの声が、先に響いた。
見えない力が、杖の先を、丸ごと包み込む。
「今日も、先手!」
---
杖を封じられた魔物に、六人の連携が、迷いなく叩き込まれていく。
「近づけば、脆いのは、知ってる!」
ネリスが、隙間を縫って、距離を詰める。
一体、また一体と、崩れていった。
---
戦いが終わり、六人は、周囲を確かめる。
「今日の石、いつもより、多く落ちてないか」
ダダが、地面を見回しながら言う。
「本当だ。数、多い」
ネリスが、拾い集めながら言った。
「ブロムさんの試し分、これで、足りるかもな」
カインが、静かに言った。
「集められるだけ、集めとこう」
ミラが、静かに、付け加える。
「賛成」
六人の声が、揃った。
---
魔石を袋に詰めながら、六人は、来た道を戻り始めた。
「返事、楽しみだな」
ネリスが、袋を、大事そうに抱えながら言う。
「気長に、待つでござる」
ワングが、静かに言った。
八層の奥から、七層、六層と、階層を登っていく。
篝火の灯る前室に戻ると、ようやく、肩の力が抜けた。
「今日の分、ブロムさんに、届けにいくか」
カインが、皆を見回しながら言う。
「行こう」
六人の声が、揃った。
---
その足で、六人は、フォージタウンへ向かった。
「石、持ってきました」
カインが、袋を差し出す。
ブロムが、中身を確かめ、目を細めた。
「今日だけで、これだけか」
「同じ型の魔物、何体か、倒しましたから」
ダダが、答える。
「十分だ。これだけあれば、何度か、試せる」
ブロムが、頷いた。
---
「いつ頃、また、来ればいいですか」
ネリスが、聞く。
「五日、いや、六日後、と言ったろう」
ブロムが、繰り返す。
「気長に、待ってろ。急いで雑にやって、無駄にする方が、もったいない」
「わかりました」
ネリスが、頷いた。
---
工房を出ると、夕暮れの光が、通路の入り口から、静かに差し込んでいた。
「次、行くまでの間、また、潜って、石、集めるか」
カインが、皆を見回しながら言う。
「集める」
ダダが、静かに頷いた。
「六日後、どんな結果になってるか、楽しみだな」
ミラが、静かに、微笑んだ。
「楽しみにしすぎると、外れた時、辛いぞ」
ダダが、苦笑しながら言う。
「わかってる。それでも、楽しみは、楽しみ」
ミラが、譲らずに答えた。
六人は、その光に向かって、ゆっくりと、歩き出した。
いかがでしょうか?
感想、フォロー 頂けましたら喜びます。
よろしくお願いいたします。




