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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第55話「効いた分だけ」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

翌朝、六人は、いつも通り、八層へと向かった。


「今日は、静黙、早めに使う練習、しような」


カインが、皆を見回しながら言う。


「うん。杖持ち、見つけたら、真っ先に」


ノリアが、頷いた。


「見つけ次第、私が、声かける」


ネリスが、耳をぴんと立てながら言う。


「頼りにしてる」


カインが、頷いた。


---


分岐を進み、奥へと進んでいく。


「気配、いつも通りの、感じ」


ネリスが、耳を伏せながら言う。


「今日は、いつもの型か」


カインが、聞く。


「たぶん」


「杖持ちも、いつ出てくるか、わからないから、油断しないでいこう」


ミラが、静かに、皆に声をかける。


「わかってる」


六人が、口々に答えた。


---


しばらく進むと、鎧のような外皮を持つ魔物の群れが、通路を塞ぐように、待ち構えていた。


「これは、いつもの、甲殻型だな」


ダダが、盾を構えながら言う。


「型、いつも通りで」


カインが、頷いた。


---


「ダダ、前へ」


「了解!」


ダダが、盾を構えて踏み込む。


「ワング、ノリア、右!」


「承知!」


ワングが、刀を振るう。


「ファイア!」


ノリアの炎が、群れの側面を、大きく飲み込んだ。


---


「ネリス、隙間、縫って!」


「任せて」


ネリスが、低い姿勢のまま、群れの隙間を、素早く駆け抜ける。


鋼の爪が、二体を、同時に切り裂いた。


「効いてる!」


慣れた連携で、群れは、さほど時間をかけずに静かになった。


「終わった」


ダダが、盾を下ろしながら、頷く。


「いつも通り、なら、これくらいで済むんだよな」


カインが、額の汗を拭いながら、静かに言った。


---


魔石を回収しながら、少し、足を止める。


「今のペースなら、まだまだ、いけそうだな」


カインが、水を口にしながら言う。


「まだ、余裕ある」


ダダが、静かに頷いた。


「新しい防具と剣、馴染んできた気がする」


カインが、剣を軽く振ってみせる。


「俺の胸当ても、今のところ、絶好調だ」


ダダが、胸を軽く叩きながら言った。


さらに奥へと進む。


「また、気配、変わった」


ネリスが、ふと、耳を伏せる。


「杖持ちか?」


カインが、身構える。


「たぶん、そう」


---


通路の先、開けた空間に、ローブ姿の魔物が、数体、立っていた。


「来たな、あれ」


ダダが、盾を握り直す。


「ノリア、頼む」


カインが、静かに、目配せした。


---


魔物が、杖を構える、その瞬間だった。


「静黙!」


ノリアの声が、先に響く。


見えない力が、杖の先を、丸ごと包み込むように、覆った。


「今度は、先手!」


---


杖の先の光が、灯りかけて、そのまま、消える。


「消えた……!」


ネリスが、目を見開いた。


「撃たせなかった!」


カインが、拳を握る。


「早めに使うと、こんなに違うのか」


ダダが、驚いたように言った。


---


「今のうちに、畳みかける!」


カインが、叫ぶ。


「了解!」


ダダが、盾を構えて踏み込む。


「承知!」


ワングが、間合いを詰め、刀を振るう。


杖を封じられた魔物は、後退することしかできなかった。


---


「近づけば、脆いのは、知ってる!」


ネリスが、隙間を縫って、距離を詰める。


鋼の爪が、魔物の胴を、深く切り裂いた。


一体、また一体と、崩れていく。


「今日は、楽だ」


ダダが、肩で息をしながら、それでも、余裕のある声で言った。


---


残る一体が、慌てたように、杖を振り上げようとする。


「もう一回、静黙!」


ノリアが、続けて、声を上げた。


だが、今度は、間に合わなかった。


杖の先に、光が灯り、放たれる。


「散れ!」


カインが、叫ぶ。


六人が、それぞれ、方向を変えて動いた。


光は、誰にも当たらず、壁を焦がして消えた。


---


「よけられた!」


ミラが、静かに言う。


「前より、余裕、あるな」


カインが、頷いた。


「ワング、決めろ!」


「承知!」


一閃が、最後の一体を、静かに沈めた。


---


「今日の、魔法使い型、楽勝だったな」


ダダが、盾を下ろしながら言う。


「静黙、先に使うだけで、こんなに変わるとは」


カインが、感心したように答えた。


「二回目、失敗しちゃったけど」


ノリアが、少し照れたように言う。


「一回でも、十分すぎる」


カインが、笑った。


「前回、あんなに苦戦したのが、嘘みたいだな」


ミラが、静かに言う。


「同じ相手でも、順番一つで、こんなに違うんだな」


ネリスが、爪の汚れを、布で拭きながら言った。


---


魔石を回収しながら、通路の先を確かめる。


小さな空間に、木箱が一つ、静かに置かれていた。


「宝箱、あったな」


カインが、目を見開く。


「罠、確かめる」


ネリスが、爪の先で、蓋の縁を、そっと叩いた。


光の線は、浮かばなかった。


「今日は、もう使えないみたいだ。手探りで確かめる」


---


慎重に確かめたあと、蓋を開ける。


中から、薄手のローブが、姿を現した。


「服、か」


ダダが、覗き込みながら言う。


「軽そうだな」


ミラが、手に取りながら言った。


裏地に、細かい紋様が、縫い込まれている。


「これも、鑑定してもらわないと、わからないな」


カインが、腕を組みながら言った。


---


今日は、その一つを収穫に、六人は、ゆっくりと戻り始めた。


八層の奥から、七層、六層と、順に階層を登り、篝火の灯る前室に戻ると、ようやく肩の力が抜けた。


「今日は、静黙の使い方、一つ、掴めた気がする」


カインが、皆を見回しながら言う。


「掴めた。先手、大事だな」


ダダが、静かに頷いた。


---


翌日、六人は、ローブを持って、アプレイザルへ向かった。


窓口に、ローブを差し出す。


鑑定士が、それを手に取り、専用の台座に置いた。


淡い光が、布地を、静かに包み込む。


---


しばらくして、光が収まる。


「結果、出ました」


鑑定士が、記録紙を、皆に見せる。


「魔法防御力、かなり高めです」


「魔法防御……」


ノリアが、思わず、声を上げた。


---


「装備条件は」


カインが、聞く。


「呪文を扱う職、限定です。アルカナ系・ノストス系、いずれでも構いません」


鑑定士が、答えた。


「ノリアと、ミラ、どっちでもいける、ってことか」


カインが、皆を見回す。


---


「これ、私、欲しい」


ノリアが、真っ先に、声を上げた。


「杖持ちに、狙われる立場だし。魔法防御、上がるなら、心強い」


「確かに、ノリアには、必須だよな」


ダダが、頷いた。


「前衛が守り切れない相手、これから、増えそうだし」


カインも、静かに同意した。


---


「私も、欲しいところだけど」


ミラが、少し考えながら言う。


「ノリアの方が、前に出る分、狙われやすい。今回は、ノリアに譲る」


「いいの?」


ノリアが、聞く。


「いい。私は、守りの聖歌で、ある程度、カバーできるし」


ミラが、静かに笑った。


---


「私も、欲しいな、こういうの」


ネリスが、ぽつりと言う。


「装備条件、呪文職限定、って言われたばかりだが」


ダダが、苦笑しながら答えた。


「わかってる。でも、近づいて戦う分、あの光、もろに浴びること、多いから」


ネリスが、少し悔しそうに言う。


「同じような効果の、前衛用の装備、探しとくか」


カインが、静かに言った。


「探しといて。期待してる」


ネリスが、笑った。


---


「今日は、ノリアの分の、防御を一つ、積み上げられたな」


カインが、皆を見回しながら言う。


「積み上げた。次は、ネリスの分も」


ダダが、静かに頷いた。


---


「装備条件、聞いてて思ったんですが」


ミラが、鑑定士に、ふと尋ねる。


「呪文職以外向けの、魔法防御の装備って、そもそも、あるものなんですか」


「ないわけでは、ありません。ただ、前衛職向けは、物理防御を優先した作りが、多いですね」


鑑定士が、答えた。


「数、少ない、ってことか」


カインが、腕を組む。


「その分、見つけたら、価値がある、ってことでもありますね」


鑑定士が、静かに、付け加えた。


---


「見つけたら、真っ先に、ネリスに回そう」


カインが、皆を見回しながら言う。


「頼む」


ネリスが、短く答えた。


「気長に、待つでござる」


ワングが、静かに言った。


---


アプレイザルを出ると、夕暮れの光が、通りを、静かに染めていた。


一つずつは小さくても、確かな積み重ねが、六人の足元を、支え始めていた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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