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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第54話「呪文を撃つもの」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

翌朝、六人は、新しい防具と剣を身につけて、八層へ向かった。


「胸当て、昨日より、馴染んでる気がする」


ダダが、肩を回しながら言う。


「剣も、悪くない」


カインが、刃を軽く振ってみせた。


---


分岐を進み、これまでと同じ調子で、奥へと進んでいく。


「今日も、気配、多め」


ネリスが、耳を伏せながら言う。


「散らばってるか、それとも」


カインが、聞く。


「今日は、固まってる。何体か」


「固まってるなら、対処しやすいな」


ダダが、盾を握り直しながら言う。


「型、いつも通りで、いけそうか」


カインが、皆に聞く。


「いつも通りで」


「大丈夫そう」


口々に、そう答えが返った。


その油断のなさが、後になって、幸いすることになる。


---


通路の先、開けた空間に、見慣れない魔物が、数体、立っていた。


甲殻でも、獣でもない。


ローブのような外皮をまとい、細い杖のようなものを、それぞれ手にしている。


「あれ、何だ」


カインが、目を細める。


「初めて見る型だな」


ダダも、盾を構えながら、警戒を強めた。


---


「ダダ、前へ」


カインの声に、ダダが頷く。


「了解!」


盾を構えて、踏み込んだ瞬間だった。


魔物の杖の先に、光が灯る。


---


「来る!」


ネリスが、鋭く叫んだ。


光の塊が、ダダの頭上を越え、後方へと飛んでいく。


「え!」


ミラが、とっさに身をかわす。


爆風が、すぐ脇の壁を、黒く焦がした。


---


「盾、意味ないのか、あれ!」


ダダが、驚いた声を上げる。


「越えてきた」


カインも、状況を飲み込めず、一瞬、動きが止まる。


「前衛、無視して、後ろ狙ってきてる!」


---


「散開!」


カインが、慌てて叫ぶ。


「ミラ、下がれ! ノリア、右!」


「はい!」


「わかった!」


二人が、それぞれ、動き出す。


だが、魔物の杖は、狙いを変えながら、次々と、光を放ち続けた。


---


「くっ!」


ノリアが、寸前で、身を伏せる。


熱の塊が、頭上を、かすめて過ぎた。


「危なかった……!」


「ノリア、大丈夫か!」


カインが、叫ぶ。


「大丈夫、だけど、狙い、正確すぎる」


---


「ワング、距離、詰められるか!」


カインが、叫ぶ。


「承知!」


ワングが、地を蹴り、一気に、魔物との間合いを詰めていく。


だが、魔物は、飛び退くように後退した。


「近づかせない、つもりでござるか」


---


杖の先に、再び、光が灯る。


今度の狙いは、ワングだった。


「捌く!」


ワングが、刀を振るい、光の塊を、真っ二つに斬り裂いた。


「斬れる、のか、あれ」


カインが、驚いたように言う。


「斬れるでござる。だが、間に合わない時もある、と見た方がいい」


---


「ミラ、無事か!」


カインが、後方に叫ぶ。


「無事。でも、動きにくい、これ」


ミラが、フレイルを構えながら、答える。


「前に、出るに出れない」


「無理に、前に出るな! 後ろで、回復に専念してくれ!」


カインが、すぐに、指示を返した。


---


「ノリア、撃てるか!」


カインが、聞く。


「撃てる。でも、狙われながらだと、集中、しづらい」


ノリアが、正直に答える。


「援護する! 一瞬でいい、隙を作る!」


カインが、剣を構え、前へ出た。


---


「ダダ、俺と一緒に、前、抑えてくれ」


「了解!」


ダダと並び、カインが、魔物の一体に、斬りかかる。


盾と剣で、圧をかけ、動きを制限する。


「今のうちに!」


---


「ファイア!」


ノリアの炎が、抑え込まれた魔物を、正面から飲み込んだ。


一体が、崩れ落ちる。


「効いた!」


「まだ、残ってる!」


ネリスが、鋭く声を上げた。


---


残る魔物が、杖を構え直し、今度は、複数の光を、同時に放ってきた。


「散れ!」


カインが、叫ぶ。


六人が、それぞれ、方向を変えて動く。


一発が、ダダの盾を、真正面から捉えた。


「重い……! でも、耐えられる、この盾!」


---


「ネリス、隙間から、狙えるか!」


カインが、叫ぶ。


「狙える」


ネリスが、低い姿勢のまま、光の合間を縫って、一気に距離を詰める。


鋼の爪が、魔物の胴を、深く切り裂いた。


「効いてる。皮、薄い」


---


「近づけば、脆いのか、これ」


カインが、状況を、素早く飲み込む。


「早く、言ってくれ、それ」


ダダが、盾を構え直しながら、苦笑する。


「今、気づいた」


ネリスが、悪びれずに答えた。


「近接、有効! ワング、もう一体、頼む!」


「承知!」


ワングが、再び、間合いを詰める。


今度は、魔物の後退が、間に合わなかった。


一閃が、魔物の姿を、静かに消し去った。


---


最後の一体が、杖を振り上げ、大きな光を、練り始める。


「あれ、まずい気配」


ネリスが、耳を伏せる。


「止める!」


カインが、叫んだ。


「静黙!」


カインの声が、響く。


見えない力が、魔物の口元を、押さえ込むように、覆った。


「効いてる、のか?」


ダダが、様子を窺う。


魔物の杖が、震えるように、光を保ったまま、止まった。


「完全には、止まってない。でも、勢い、削げてる!」


カインが、叫ぶ。


「ミラ、下がって! ダダ、盾で、みんな庇え!」


---


「守りの聖歌!」


ミラの声が、響く。


淡い光が、六人を、薄く包んだ。


直後、魔物の放った光が、爆発した。


だが、その規模は、先ほどまでより、明らかに小さかった。


---


衝撃が、六人の体を、大きく揺らす。


「くっ……!」


「大丈夫か、みんな!」


カインが、すぐに、確認する。


「無事」


「なんとか」


「拙者も、無事でござる」


---


「ミラの守り、なかったら、危なかったな」


ダダが、息を切らしながら言う。


「間に合って、良かった」


ミラが、額の汗を拭いながら、答えた。


---


弱った最後の一体を、カインの剣が、静かに仕留めた。


戦いが、ようやく、終わる。


「終わった……のか」


カインが、剣を支えに、大きく息をついた。


「終わった」


ダダが、盾を下ろしながら、頷いた。


---


「今の、何だったんだ、あれ」


カインが、荒い息のまま、周囲を見回す。


「杖持って、遠くから、狙い撃ちしてくる魔物、初めてだった」


ノリアが、額の汗を拭いながら言う。


「盾、無視されるの、地味に、応える」


ダダが、肩を落としながら言った。


---


「近づけば、脆かった」


ネリスが、爪についた汚れを、布で拭いながら言う。


「あれは、収穫だな」


カインが、頷く。


「次から、近接で、距離を詰める動き、意識した方がいい」


---


「静黙、効いたな、最後」


ダダが、思い出したように言う。


「完全には、止められなかったけど、勢い、削げた」


カインが、答える。


「もっと早く、使えば良かったかもな」


ノリアが、静かに言う。


「杖、構えた瞬間に、静黙、間に合えば、そもそも撃たせずに済むかもしれない」


「次は、それ、試してみるか」


カインが、頷いた。


「私も、静黙、使えるし、二人がかりなら、確実性、上がるはず」


ノリアが、続けた。


---


「拙者たちの動き方、少し、変える必要あるでござるな」


ワングが、刀を鞘に納めながら言う。


「前衛が、盾になれない敵、初めてだったからな」


カインが、静かに、答えた。


「遠くから、狙われる前提で、動いた方がいいかもな」


ミラが、静かに、付け加える。


「散開、早めに、指示出す。それで、だいぶ違うはず」


カインが、頷いた。


「次、見かけたら、真っ先に、距離、詰める」


ネリスが、短く言う。


「頼りにしてる」


カインが、笑った。


---


「魔石、回収するか」


ダダが、周囲を見回しながら言う。


魔物のいた場所には、これまでとは、違う色合いの魔石が、いくつか、転がっていた。


「色、違うな、いつもと」


ネリスが、拾い上げながら言う。


「これも、鑑定に、出した方が、良さそうだ」


カインが、頷いた。


---


「今日は、この辺で、切り上げるか」


カインが、皆を見回す。


「賛成。予想外の、消耗だった」


ミラが、静かに答えた。


「拙者も、賛成でござる」


ワングが、続いた。


---


来た道を、六人は、ゆっくりと戻り始めた。


「魔法を使う魔物、か」


カインが、歩きながら、呟く。


「これまでの型が、通じない相手も、いる、ってことだよな」


「いる、ってことだ」


ダダが、短く答えた。


---


八層の奥から、七層、六層と、階層を登っていく。


篝火の灯る前室に戻ると、ようやく、肩の力が抜けた。


「今日は、新しい発見と、新しい苦労、両方あったな」


カインが、皆を見回しながら言う。


「両方あった。悪くない一日だ」


ダダが、静かに笑った。


新しい壁にぶつかった日だったが、六人の足取りは、まだ、しっかりと、前を向いていた。


---


その足で、六人は、アーカイブに立ち寄った。


「新しい魔物、出たので、報告に」


カインが言うと、ティリーが、顔を上げる。


「特徴、教えてください」


「ローブ姿で、杖を持ってて、遠くから、光の塊を、飛ばしてくる。前衛を、飛び越して、後方を狙ってきた」


カインが、順を追って、説明する。


「近づけば、皮は薄い。近接なら、対処できる」


ダダが、付け加えた。


「記録しておきます」


ティリーが、淡々と、記録帳に書き記していく。


「名前とか、まだ、ついてないんですか」


ネリスが、聞く。


「今の段階では、まだ、何とも。今後、似た報告が増えれば、名前がつくかもしれません」


ティリーの答えは、いつも通り、簡潔だった。


「拾った魔石も、色が違ったので、置いていきます」


カインが、袋を差し出す。


「確認しておきます」


---


アーカイブを出ると、夕暮れの光が、通りを、静かに染めていた。


「明日は、もう少し、うまく立ち回れそうだな」


カインが、皆を見回しながら言う。


「立ち回れる」


ダダが、静かに頷いた。


六人は、その光に向かって、ゆっくりと、歩き出した。


いかがでしょうか?


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よろしくお願いいたします。

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