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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第53話「積み上げた実り」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

翌朝、六人は、防具と剣を持って、アプレイザルへ向かった。


「今日は、二つ、まとめて見てもらうか」


カインが言うと、誰も反対しなかった。


「昨日、あれだけ、粘った甲斐、あるといいけどな」


ダダが、胸当てを、大事そうに抱えながら言う。


「あるだろう。あの数、倒したんだから」


カインが、答えた。


---


窓口に、まず、胸当てを差し出す。


鑑定士が、それを手に取り、専用の台座に置いた。


淡い光が、装具を包み込む。


---


しばらくして、光が収まる。


「結果、出ました」


鑑定士が、記録紙を、皆に見せる。


「防御力、かなり高めです。特殊な効果は、付いていません」


「特殊効果、なし?」


ネリスが、少し意外そうに言う。


「はい。純粋に、防御力の高い一品、ということになります」


---


「装備条件は」


カインが、聞く。


「特にありません。誰でも、装備できます」


鑑定士が、答えた。


「そういうのも、あるんですね」


ダダが、感心したように言う。


「特殊効果がない分、素直に強い、ということかと」


「数値だけで、勝負するタイプの装備、ってことか」


カインが、納得したように言う。


「そういう理解で、間違いないかと」


---


続けて、剣を差し出す。


同じように、台座に置かれ、光に包まれる。


「こちらも、結果、出ました」


鑑定士が、記録紙を見せる。


「攻撃力、かなり高めです。こちらも、特殊効果は、付いていません」


---


「装備条件は」


カインが、聞く。


「前衛職であれば、装備できます」


鑑定士が、答える。


「斥候や、盾役でも?」


「はい。前衛職全般、対象です」


---


「どっちも、素直に強い装備、ってことか」


ダダが、腕を組みながら言う。


「派手さはないけど、堅実でいい」


カインが、頷いた。


「ありがとうございます」


「今後も、何かあれば」


鑑定士が、静かに言った。


---


アプレイザルを出て、防具と剣を、どうするか話し合う。


「防具、誰が使う」


カインが、皆を見回す。


「ダダが、いいんじゃないか」


ネリスが、提案する。


「一番、前で受ける役だし」


「俺で、いいのか」


ダダが、少し意外そうに言う。


「いい。適材適所」


カインが、頷いた。


---


「剣は」


ダダが、聞く。


「俺が、使わせてもらうか」


カインが、答える。


「今の剣も、悪くないけど、攻撃力上がるなら、ありがたい」


「異論なし」


六人の声が、揃った。


---


その場で、ダダが、早速、胸当てを身につけてみる。


「重さ、思ったよりない」


ダダが、肩を回しながら言う。


「動きにくくないか」


カインが、聞く。


「悪くない。むしろ、今までのより、馴染む気がする」


カインも、新しい剣を、軽く振ってみる。


「これも、手に馴染む。良い剣だ」


「二人とも、早速、気に入ったみたいだな」


ネリスが、笑いながら言った。


---


「せっかくだから」


ミラが、提案する。


「みんなのレベル、確認しに行きませんか」


「賛成」


ノリアが、頷いた。


---


アプレイザルの窓口で、改めて、一人ずつ鑑定具に触れていく。


まず、ダダから。


「盾役、レベル8ですね」


「8、か」


ダダが、静かに頷く。


「新しい防具、早速、試し甲斐がありそうだな」


---


次、ネリス。


「斥候、レベル8」


「8!」


ネリスが、軽く跳ねる。


「跳ねなくていい」


ダダが、すかさず釘を刺した。


---


「魔術師、ノリアさん」


「レベル7ですね」


「7、上がった」


ノリアが、静かに頷く。


「習得呪文の使用回数ですが、第三階梯以下は、それぞれ、使用回数が1回増えています」


鑑定士が、続けた。


「それと、もう一つ」


「まだ、何か」


カインが、身を乗り出す。


「アルカナ系、第四階梯に到達しています。習得呪文、雷殺」


「雷殺……」


ノリアが、思わず、自分の手を見つめる。


「本当ですか」


「本当です。使用回数は、まだ1回きりです。それと、今回、覚えたのは、この一つだけです」


「一つだけ、か」


ダダが、腕を組みながら言う。


「階梯が上がっても、いきなり色々使えるようになるわけじゃない、ってことか」


「そういうことに、なります」


鑑定士が、頷いた。


「それでも、十分すぎる」


ノリアが、静かに笑った。


その落ち着いた返し方に、以前のような焦りは、もう見えなかった。


---


「次、ミラさん」


「レベル10ですね」


「10……大台か」


ミラが、少し驚いたように言う。


「第三階梯以下は、それぞれ、使用回数が1回増えています」


鑑定士が、続ける。


「第四階梯は、使用回数が3回になっています」


「3回……増え方、大きくないですか」


ミラが、聞き返す。


「今回、新しく、二つ、覚えているためです。守りの聖歌と、神撃」


「二つも……」


ミラが、思わず、口元を押さえる。


「蘇生の祈りと、合わせて、三つ。同じ枠を、分け合う形になります」


鑑定士が、説明する。


---


「それだけでは、ありません」


鑑定士が、記録紙を、指でなぞる。


「第五階梯にも、到達しています。習得呪文、完全治癒」


「完全治癒……」


ミラの声が、小さく震えた。


「味方単体のHPを、全回復させる呪文です。使用回数は、まだ1回きりです」


「全回復……」


ミラが、自分の手を見つめる。


「今までの、癒しの波や、群癒とは、規模が違う」


カインが、驚いたように言う。


「規模も、責任も、違う気がする」


ミラが、静かに答えた。


その声には、喜びと、それだけでは片付かない、確かな重みが、同居していた。


---


「拙者も、頼む」


ワングが、台に手を乗せる。


光が、深い色で灯った。


「侍、レベル14ですね」


「14、か」


ワングが、静かに頷く。


「アルカナ系、第四階梯のまま、使用回数が、1回増えています。新しい呪文、新しい階梯は、今回は、ありません」


「次は、まだ先、でござるな」


ワングが、静かに言う。


「特殊職は、ペースが遅い、という話でしたし」


カインが、フォローするように言った。


「気長に、待つでござる」


---


「最後、カインさん」


呼ばれて、カインが台の前に立つ。


しばらくして、鑑定士が、顔を上げた。


「レベル6ですね」


「6、上がったか」


カインが、静かに頷く。


---


「それと」


鑑定士が、続ける。


「アルカナ系、第二階梯に到達しています。習得呪文、静黙」


「第二階梯……」


カインが、思わず、自分の手を見つめる。


「本当ですか」


「本当です。使用回数は、まだ1回きりです」


---


「それだけでは、ありません」


鑑定士が、記録紙を、指でなぞる。


「ノストス系も、第二階梯に到達しています。習得呪文、浄化」


「浄化まで……」


カインが、言葉を失う。


「両方、同時に上がるとは」


---


「万能士は、両系統、並行して伸びる、という特性でしたね」


ミラが、静かに言う。


「そうだった。忘れかけてた」


カインが、苦笑した。


---


「静黙は、これで、ノリアと二人で使えるようになったな」


ダダが、言う。


「二人分の枠、それぞれ独立してる、ってことだよな」


カインが、確認するように聞く。


「そうです。使用回数は、お一人ずつ、別に管理されます」


鑑定士が、答えた。


「じゃあ、静黙、二連発できるってことか」


ノリアが、少し興奮した様子で言う。


「単純計算では、そうなります。ただし、使い所は、お二人で相談されるのが良いかと」


鑑定士の言葉に、ノリアとカインが、顔を見合わせて笑った。


---


「浄化は、どんな効果でしたっけ」


ネリスが、聞く。


「毒を、解除する呪文です」


ミラが、答える。


「私も使えるけど、二人で使えるなら、心強い」


「あの蔓の魔物に、また絡まれても、対処が二通りになるな」


ダダが、当時を思い出すように言った。


「あの時は、大変だった」


ネリスが、苦笑しながら、自分の足首を、軽くさすった。


---


「今日は、大きな一日だったな」


カインが、皆を見回す。


「防具、剣、そして、レベルアップ」


「良いこと尽くしだ」


ダダが、満足そうに答える。


---


「明日から、新しい防具と剣、試してみるか」


カインが、提案する。


「試そう」


六人の声が、揃った。


---


アプレイザルを出ると、夕暮れの光が、通りを、静かに染めていた。


六人は、その光に向かって、ゆっくりと歩き出した。


新しい防具、新しい剣、そして、それぞれのレベルアップ。


一つずつは小さくても、積み重なれば、確かな厚みになっている。


積み上げてきたものが、今日、また一つ、確かな形になった一日だった。


これまでの一歩一歩が、無駄ではなかったと、六人それぞれが、静かに実感していた。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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