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『マラン、はじまりの迷宮』〜わからないことばかりの、迷宮攻略記〜  作者: 奇木 尋
閑話 その三

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第52話「積み上げた収穫」

マランの世界、毎日投稿中です。

当面、数話を連続投稿の予定です。


お楽しみいただけましたら幸いです。

朝一番で、六人はアーカイブに向かった。


「爪のこと、報告しとくか」


カインが言うと、誰も反対しなかった。


---


ティリーに、爪の効果と、三回で発動しなくなったことを、順を追って伝える。


「透視相当の効果、三回で停止。記録しておきます」


ティリーが、淡々と、記録帳に書き記していく。


「原因とか、わからないんですか」


ネリスが、聞く。


「今の段階では、何とも言えません。事実だけ、記録します」


ティリーの答えは、いつも通り、簡潔だった。


「その方が、ありがたいです」


カインが、静かに言う。


「憶測を、交えられても、困りますから」


ネリスが、静かに付け加えた。


---


「他にも、何か、ありましたか」


ティリーが、顔を上げて聞く。


「特には」


カインが、答える。


「では、また、何かあれば」


ティリーが、記録帳を閉じた。


短いやり取りだったが、それで十分だった。


---


門をくぐり、六層前室へ。


そのまま、七層、八層へと、足早に降りていく。


「今日は、時間、使えるだけ使うぞ」


カインの声に、力があった。


「行こう」


六人は、慎重に、八層の奥へと進み始めた。


---


八層の通路は、これまでよりも、入り組んでいた。


分岐が多く、地図に書き写す手間も増えている。


「気配、多いな、今日」


ネリスが、耳を伏せながら言う。


「数、多いのか」


カインが、聞く。


「多い。でも、散らばってる」


ネリスが、慎重に、周囲を確かめながら答えた。


---


しばらく進むと、鎧のような外皮を持つ魔物の群れが、通路を塞ぐように、待ち構えていた。


「前より、数、増えてる」


ダダが、盾を構えながら言う。


「型、維持しつつ、慎重に」


カインが、指示を出す。


「無理だと思ったら、すぐ言え」


「わかってる」


---


「ダダ、前へ」


「了解!」


ダダが、盾を構えて踏み込む。


複数の敵の攻撃を、一手に引き受ける形になった。


「重い! でも、まだ、いける!」


---


「ワング、ノリア、右!」


カインが、叫ぶ。


「承知!」


ワングが、素早く回り込み、刀を振るう。


「ファイア!」


ノリアの炎が、群れの側面を、大きく飲み込んだ。


---


「ネリス、隙間、縫って!」


カインが、叫ぶ。


「任せて」


ネリスが、低い姿勢のまま、群れの隙間を、素早く駆け抜ける。


鋼の爪が、二体を、同時に切り裂いた。


「効いてる!」


---


数を減らしても、次から次へと、新手が現れる。


「終わらないな、これ」


ノリアが、息を切らしながら言う。


「巣、みたいな場所なのかもな」


カインが、剣を構え直しながら答える。


---


「ミラ、大丈夫か」


カインが、後方に聞く。


「まだ、いける。でも、そろそろ、魔力、考えないと」


ミラが、フレイルを振るいながら、正直に答えた。


---


「ダダ、無理してないか」


カインが、聞く。


「無理は、してる。だが、まだ、動ける」


ダダの声に、確かな疲労が、にじんでいた。


---


長い戦いの末、ようやく、群れが静かになった。


「終わった……のか」


カインが、剣を支えに、息を整える。


「終わった」


ダダが、盾を下ろしながら、静かに頷いた。


「みんな、怪我は?」


ミラが、すぐに、確認に回る。


「かすり傷程度」


「大丈夫」


のこりの五人が、口々に答えた。


---


魔石を回収しながら、通路の先を確かめる。


小さな空間に、木箱が一つ、静かに置かれていた。


「宝箱、あったな」


カインが、目を見開く。


「少し、休むか」


ダダが、肩で息をしながら言う。


「賛成。ここで、一息つこう」


カインが、頷いた。


しばらく、水を口にしながら、皆、息を整える。


「調子、どうだ」


カインが、皆を見回しながら聞く。


「まだ、いける」


「まだ、大丈夫」


口々に、そう答えが返ってきた。


「罠、確かめる」


ネリスが、爪の先で、蓋の縁を、そっと叩いた。


光の線は、浮かばなかった。


「もう、今日は、使えないみたいだ。手探りで確かめる」


---


慎重に確かめたあと、蓋を開ける。


中から、鈍い光を放つ魔石と、見慣れない意匠の胸当てが、姿を現した。


「防具か」


ダダが、覗き込みながら言う。


「軽そうだな、これ」


ネリスが、手に取りながら言った。


薄い金属板が、幾重にも重なるような、独特の作りをしていた。


「誰向けの防具か、これも、鑑定してもらわないと、わからないな」


カインが、腕を組みながら言う。


「また、アプレイザル通いだな」


ダダが、苦笑した。


---


「今日は、まだ、行けそうか」


カインが、皆を見回す。


「まだ、いける」


ダダが、頷いた。


「無理せず、様子見ながらな」


---


さらに奥へと進む。


今度は、鋭い爪を持つ、獣型の魔物が、複数、待ち構えていた。


「また、数、多いな」


カインが、剣を構える。


「型、いつも通りで」


「ダダ、また、前へ」


「了解!」


ダダが、盾を構えて、踏み込む。


獣の爪が、盾に、いくつも、傷を刻んだ。


「引っかかれてるが、貫かれてはいない!」


---


「ワング、決めろ!」


カインが、叫ぶ。


「承知!」


ワングが、素早く踏み込み、刀を振るう。


一体、また一体と、獣の急所を、正確に捉えていく。


「拙者に、任せるでござる!」


---


「ミラ、後ろ、気をつけて!」


カインが、叫ぶ。


「はい!」


ミラが、鎖を伸ばし、後方から回り込んだ一体を、フレイルで、弾き飛ばした。


激しい応酬の末、どうにか、群れを退ける。


「今日、二回目の、大きい群れだったな」


ダダが、肩で息をしながら言う。


「二回目。さすがに、疲れてきたな」


カインが、正直に答えた。


---


奥に、また、小さな木箱が見つかった。


「また、宝箱か」


ネリスが、慎重に、周囲を確かめる。


「罠、なさそう」


---


蓋を開けると、中から、細身の剣が、姿を現した。


「剣、か」


カインが、手に取り、刃を確かめる。


「軽い。でも、しなやかな作り」


柄の部分に、見慣れない紋様が、刻まれていた。


「これも、何か、意味がありそうだな」


ダダが、覗き込みながら言う。


「使えそうか」


ダダが、聞く。


「使えそう。あとで、ちゃんと見てもらおう」


---


「今日は、もう、限界かもな」


ミラが、静かに言う。


「魔力、もう、ほとんど残ってない」


「俺も、そろそろ、腕が上がらなくなってきた」


ダダが、正直に答えた。


「拙者も、そろそろ、潮時でござる」


ワングが、刀を納めながら言う。


「無理して、事故るのが、一番まずい」


カインが、皆を見回しながら言う。


「今日は、ここまでにしよう」


「賛成」


六人の声が、揃った。


---


「よくやった、今日は」


カインが、皆を見回す。


「防具に、剣。二つも、収穫あったな」


「二つも、十分すぎる」


ネリスが、静かに笑った。


---


来た道を、六人は、ゆっくりと戻り始めた。


八層の奥から、七層、六層と、順に階層を登り、篝火の灯る前室に戻ると、ようやく肩の力が抜けた。


「今日は、かなり、粘ったな」


カインが、皆を見回す。


「粘った。無理はしたけど、後悔はない」


ダダが、静かに答えた。


---


夕暮れの光が、通路の入り口から、差し込んでいた。


六人は、その光に向かって、静かに歩き出した。


手の中の、防具と剣が、それぞれ、鈍い光を放っていた。


「これも、鑑定してもらわないとな」


ダダが、疲れた声で、それでも満足げに言う。


「明日、行くか」


「明日、行こう」


カインが、頷いた。


今日一日で積み上げた収穫は、決して、小さくなかった。


いかがでしょうか?


感想、フォロー 頂けましたら喜びます。


よろしくお願いいたします。

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